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勇者だけど大魔王城で執事やってます。え、チートってもらえるものなの?  作者: 黒丸オコジョ
第一章:大魔王の姫と勇者な執事?みたいな?
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30話:積もり積もった石でもなんでも高く積みあがったモノって頭から突っ込みたくなるよね?

 オウカと言う字は桜の花と言う字を当てるのだと母はなんだかうれしそうに小さいころの私に教えてくれました。


 だからニックネームはサクラちゃんね?とニコニコしながら笑っていた。


 うん、お母さま?それならサクラって名前でいいんじゃないのかなって言ったら、好きな人だけに読んでもらいたい名前がニックネームだからそれでいいのよとの事。


 あの頃は良くわからなかったけど、今ならよくわかります。


 私は彼にそう呼んでもらいたい。


 そんな彼に出会ってしまったのですから。今なら良くわかる。本名を(オウカ姫と)名乗らなかったのだけど、今はそれで良かったのだと思っています。


 私は、彼ともっとそばに居たい。話がしたい。ほほ笑んで傍にいて欲しい。ただ、それだけでいいんです。


 なんてことの無い数日が私には夢のようで、幸せで、とても楽しかったのですから。


 だから想いを伝えました。


 私の目を綺麗だと可愛いと言ってくれたあの彼に。


 私を怖がらず、抱きしめてくれた彼に。


 苦笑いがちょっと可愛くて、妹の話になっちゃうと多弁になる彼に。


 けれどもそれは叶わない。叶うはずもありません。私の目が効かなくても彼はただの使用人。悪鬼羅刹の魔王達の妻となる私とはいる場所も立場も種族さえも違う。


 それをわかっている彼も覚悟が足りないのだ、そう言っていました。


 そんな答えは私も最初からわかっています。でも伝えておきたかった。私のわがままな(好きだって)想いを伝えておきたかった。きっと何も言わずにいなくなってしまえば彼も心配してしまうでしょうから。


 ――そう、私は今日誰か(魔王)の妻になります。


 きっとその姿を彼も見てしまうのだろう。見なければならないのでしょう。ああ、それは嫌だな。見ないで欲しい。彼の傍にいられない悲しみで、彼が迎えに来てくれないとわかっている悲しみで、彼が悲しむと思う悲しみで。きっと、私は泣いてしまいますから。


 けれども私は覚悟をして足を進める。なぜなら私は大魔王グリムの娘、オウカ・L・アビスニアなのですから。




 荘厳に彩られた謁見の間には多くのテーブルと色とりどりの料理が並び、綺麗に着飾った魔人や獣人に鬼人の目が、赤い絨毯の上をゆっくりと進む私を見る。

 ある者は興味の目で、ある者は恐怖の目で、ある者は見定めるような目で、ある者は美味しそうなごちそうを見るような濁った目で。


 ()を見ようとしてくれる目は一つたりともありません。


 大魔王の娘で支配の魔眼を持つ者、勇者と大魔王の子、そして形だけの聖剣(母の形見)の保持者、そんな肩書で私は見られていました。

 

 これまでも、これからも、これが私の普通で、日常で、当たり前なのです。だからもう、あんな夢のような日々は送れない。送れる筈も無い。


 私は玉座の隣に設けられた席に座る。ここはすべての席を見晴らせる場所。それでいて見られる場所。さながら私はかごの中をじっと眺められれる鳥のようでした。


 普段は着ないような豪華で煌びやかなドレスと装飾品に身を包み、いまだ使いこなせる見通しすら立っていない魔眼はお父様(大魔王)にグルグルと魔力と呪言葉と魔法陣の編込められた布で包まれ、縫止められ、硬い金具で装飾されたそれはお父様の計らいで外の様子だけは見えるようになっているその特別製。私が誰かの妻になれば一生付けて過ごすことになるモノ。それを通して会場を見回す。


 ……彼はいない、いなかった。


 胸の中がぐるぐるとぐつぐつと何かが駆け巡り、思わず嗚咽を漏らしてしまいました。横に控えてくださっていたアリス姉さまは心配そうに背中をさすってくれましたが大魔王(お父様)はニヤニヤとしながら会場を眺めています。はぁ、こんな時くらい父親らしいところを見せてくれたら嬉しいのに……。


 だからもう一度会場を見てしまいました。


 いるわけがないのに。いなくてよかった筈なのに。私は――



「な、なんだ、お前は!」


 会場に警備の人の声が響く。


「いやいや、これはタイミングなんだよ?ほら、こいつは誰だったんだ!ってわかる瞬間?盛り上がるよね?盛り上がっちゃうよね?んもーライガーもわかっていってるなら人が悪いなー?というかほら、オレオレ?」

「ええい、馴れ馴れしい!っていうか、お前か!なんでそんな格好してるんだ!仮面もいつもと違うし、なんでマントでタキシードなんだ!?てか、厨房のおっちゃんが死ぬぞ!死んじゃうよ!?」

「いけるいける!できるできる諦めたらそこで試合終了なんだよ?たぶん?うん、下ごしらえだけは全部して投げて来たからきっと行ける!うん!」


 聞いたことのある声、聞きたかった声、聞けるはずのない声がした。ありえない、ダメですよ。来ちゃダメなのに……。


「さぁ、迎えに来たよ?」

「貴方は……?」


「そうさな……君だけのサンタクロースさ!プレゼントは俺?みたいな?」


 私の大好きな彼がそこにいました。




 あ、警備の人に頭叩かれました!な、仲がいいんでしょうか……?

並んだドミノに体からダイブするような気分?てきな?

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