閑話
――声。
――声が聞こえる。
『なんで見殺しにしたの?』
――それは助ければ俺が死んでいたから。救えば俺が死んでいた。
『なんで私たちを巻き込んだの?』
――俺が巻き込んだわけじゃない。……俺は巻き込みたくなかった。
『なんで俺を殺した?』
――それはお前が俺を殺そうとしたから。あの子を殺そうとしたから。
『なんでお前はあそこにいた?』
――それは俺は生きていなければいけなかったから。
『お前さえいなければ。死ななかった』
――そうなのかもしれない。
『お前さえいなければ。殺されなかった』
――そうなのだろう。
『お前がいたからあの子は死んだんだ』
――そうだ。
『お前が』
――けれど。
『全部お前のせいだ』
――だとしても。
俺は生きていなければならなかった。あの子を護ると約束したのだから。……誓ったのだから。
後悔も反省もしている。それでも俺は――……。
<応えよ――>
澄んだ声が頭の中に響く。
<応えよ――護るべきものを失って汝はを求める?>
求める、もの?
ああ、そんなものは、決まっている……。
――力。力だ。力が欲しい。何物もをも寄せ付けぬ何者をも圧倒する力が欲しい。
<何故力を求める?汝には既に護るべきものは無い>
だとしても。
<何故だ?>
あれば護れる。
<何を?>
そんなのは決まっている。
――今まで見捨ててしまった誰かを。
――今まで巻き込んでしまった誰かを。
――今まで殺してしまった誰かを。
――目の前の救いたい誰かを俺は護りたい。救いたい。手を、伸ばしたい。
もう目の前で誰かが泣くのを見るのは嫌だ。
もう目の前で誰かが殺されるのはごめんだ。
もう目の前で大切な誰かを救えないのはまっぴらだ。
それが俺の答えだ。
俺は、力が、欲しい。
――目の前の護りたい誰かを護るだけの力を
<ならば、我が名を呼ぶがいい。我が名は――>
目がつぶれそうなほどの光が溢れる中、俺は手を伸ばす。
ああ、そうだ、助けるのだ。救うのだ。もう、二度と、後悔などしないように――。