22話:猫の肉球って太陽の香りがするらしいけどそれって汗のにおいだよね?
「遅かったですね。逢引きですか?」
「合いびき肉はハンバーグにあうけど明日の晩御飯はハンバーグじゃあないよ?というかなんで部屋にいるのかなロベリアちゃん?」
部屋に帰ったらロベリアちゃんがいたよ?おかしいなちゃんと鍵かけてたよね?
「私はメイドですから。合鍵位貰ってます」
「そっかー。メイドさんだからしかたないねー」
おかしいなー?メイドさんらしいことしてもらったことない気がするよ?あ、お仕置きはしちゃってたけど!あ、顔真っ赤になってジトだ!ありがとうございます!!
「あれ、なんで灯りが……ランプさん!?魔導式ランプさんじゃないか!」
「あ、私のなので壊さないでくださいね?触るのもダメです」
こ、こんなところに俺の夢が……!うん、輝いてるよ!流星じゃないけど!
「で、なんで遅かったんです?なんか酷い顔ですよ?」
ジト目のままでロベリアちゃんが言う。うん、大丈夫。こういう事も慣れっこだから。俺にはあの子はもったいなさすぎる。きっと俺なんかよりもいい人がいるに決まっているんだ。
「なるほど、失恋するまえに諦めてるんですね。格好悪いです」
「ん、知ってる。でもなー。あの金髪イケメンとか見ちゃうとねー」
今日ちらりと見た金髪イケメン魔王は本当にイケメンだった。他のメイドさんの評判も良く、強さも他を寄せ付けないほどの別格だとのこと。アレだよ?一番すごい奴は下から押さえていくんだよ?かの将軍様も女中の人気で将軍になってたりするんだからね?
「なるほど、自分の身の丈に合わない恋しちゃったからあきらめようと頑張ってるところな訳ですか」
「そうなるかな。そうなるな?」
「バカみたいです。うじうじしてらしくないですよ?」
「らしくない?あーうんかもしれない」
色々とあり過ぎて心も体もガタガタのぼろぼろの侃侃諤諤?頭がまともに動いてない気もする。
「仕方ない。今日はもう休むとしよう。ちょうどいい抱き枕もあることだし」
「え?抱き枕なんてどこに……。ん?あれ?なんで私だだだ抱きしめられているんです?その、あ、あし絡められたら動けないです!あ、顔、ちか――」
顔を真っ赤にしてプルプルしてる。うん、可愛いな?でもごめんね?今日だけはこうさせておいて欲しいなって。……あれ?なに?なんで唇突き出してるの?して欲しいの?ちゅー?しちゃうよ?いや、しないからね!?頭はなでるけど!
体を動かしてもまるで頭がついてこない。こんなことはいつ以来だろうか?自分の手足が誰かの手足と入れ替えられているかのように感じるんだよ?
「そう言いながらボクらをボコるのはやめてくれないかな?じ、自信が、なくなるっ!」
「大丈夫、大丈夫。ライガーたちは強いよ?ただ集団の強みを生かしきれてないんだよ。ほら、囲むようにとびかかるでしょ?そうじゃなくて逃げ道をあえて作って逃げた所に攻撃をするんだよ。逃げるという事は逃げざるを得ないと言う事だから隙ができるからね?ほら、簡単でしょ?」
「「それをやっても分身するのはどこの馬鹿だ!」」
あれれ~怒られちゃったよ?うん、でもしかたないよね?できるならやらないとダメダメだし?そう言った敵がいないとも限らないんだから訓練ならやられてボコで正解なんだよ!うん、俺は悪くない!
「まぁ、かねがねこのピーターの言う通りだな。ボコられるんならボコられる方が悪い。さて、そういうわけで次は吾輩とだな……?」
「いい汗をかいたのでこれで失礼します!あー忙しいなー!!」
「あ、これ逃げるな!最近大魔王様とばかり戦ってずるいぞ!吾輩とも戦え!!」
うん、ずるいって言われても知らないよ?美少女に奪い合われるのならやぶさかでも無くは無いけどおっさんに奪われあうのはのーせんきゅーなんだよ!というかそれならライおっさんと大魔王でやればいいじゃない!
「お前くらいがちょうどいいんだ!あ奴は加減を知らぬから全部吹っ飛ばすからの」
わかってるぅー!しかもヒッサーツ!とか言い出すからね!あの大魔王?フルスロットルかな?フルスロットルだったよ!!!
ガシガシトントンサクサクぱっぱと朝ごはんを積み上げていく。というかいつもより多いな?多くない?多いよ!!
「仕方ないだろ?他国の魔王たちの使用人の飯もこっちで賄うんだ。ある程度は向こうが準備するにしても武闘会が終わるまでは大体こんな感じだよ」
「地獄かな?地獄だな!というかそれならそうと事前に行ってほしかったな!」
厨房は地獄だった!龍のおっさんに文句を垂れるのも仕方ないんだよ!なんで朝から五百食とか作ってるのかな?バカかな?死んじゃうよぉおおお!
「人生は戦いだ。いいか、真人。これは戦争なんだ」
おっちゃん、そんなこと言うなら手を止めないで!この厨房の最大戦力なんだから止めちゃダメなんだよ!ロベリアちゃんも配膳手伝ってるんだからおっちゃんが手を止めちゃダメだよ?ダメダメダメなんだよ!!ああああ終わりが見えないみえないよおお!!
仕方ないから分身する。そうじゃないと時間が足りない!人も足りない!手が足りない!猫の手をくださいにゃ!
「にゃ?呼んだかにゃ?」
いた。猫耳メイドさんがいた。沢山いた。犬耳さんとうさ耳さんもいるよ!
「な、こ、これは……!」
「ああ、四天王のライオネル様の奥方のメイドだよ、手が足りないから手伝ってもらっているんだ。新人を最近沢山雇い入れているがそれでも足りないからな。そういうわけで猫の手だ!とっとと終わらすぞ!」
天国かな?ここは天国かな?もふもふふもふもプニプニカーニバルな天国さんだよね?
「そういうわけでお仕事の前に肉球を触らせてください!」
「え?」
きょとんとしている黒猫さんに頭を下げる。え?お仕事?分身に全部投げたよ?ロベリアちゃんとおっちゃんと厨房のみんなからジトだったけど後悔は無い。うん、でも反省はしているよ?ぷにぷにスベスベだー!……てへぺろ?
ひじ先から先からもじゃで肉球が指の先にある感じ?プニプニだな!