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勇者だけど大魔王城で執事やってます。え、チートってもらえるものなの?  作者: 黒丸オコジョ
第一章:大魔王の姫と勇者な執事?みたいな?
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1話:見慣れない天井って旅行先でも見れるよね?

 白く、白く、染め上がった世界。



 ああ、自分は死んでしまったのだ。



 何も成せず、何も守れず、何も残すこともできずに――。



 大切に思っていた妹すら気づかぬ自分勝手さのせいで巻き込んでしまった。



 あの時、もっと話せていれば。



 あの時、もっと早く決断すれば。



 もっと俺が強かったならば――……。



――嗚呼、己の人生は悔いばかり。



 もし――



 そう、もしも()があるのなら後悔のない生き方をしよう。



 誰かを傷つけるだけの俺ではなく、目の前の救いたい目の前の誰かを守れる俺であれるように――











――とか、そんなことを考えていた所で眼を開けてみると知らない場所にいた。


 無駄に荘厳で天井が見えない謎空間。石畳に金の刺繍が施された赤い絨毯(じゅうたん)がひかれ、まるでゲームによくあるような神殿のようだった。


 え、何これ聞いてない。死んだら神様に食べられちゃうんじゃなかったのかな?いや、別に性的な意味でと言う訳じゃあなくて、こう物理的に「オレサマ、オマエ、マルカジリ!」ってのを覚悟していたのだけれど、どうやらそうはならなかったらしい。



「――よく来たな、勇者よ」


 赤い絨毯の先、これまた無駄に荘厳な玉座に座っていたのは頭から角を生やした派手な格好をした壮年のおっちゃんだった。なんだかニヤニヤとと笑いながら誰の事を勇者と言っている。誰の事かな?とくるりとあたりを見回してみる。が、俺の他に誰もいない。……ああ、俺の事か!


「いやいや、勇者だなんてありえないかなって。だって、俺ってばそんな大したことないただの人間ですよ?水無瀬真人(みなせまなと)って言います。うん、初めまして?というかそもそも勇者なんてゲームじゃあるまいし、いるわけないじゃないですか!」

「いや、お前だろう?」


 玉座の男が呆れ顔でこちらを指さしながらはてな?と首をかしげている。


 ……あれ?ううん?そういえばこのおっちゃん偉そうだけど王様かな?でも王様って角生えてたっけ?ああ、夢だからか!だから角が生えてるんだ!うんうんきっとそうだ!そうに違いない!


「何をうんうんとしてるかわからんが、ただの人間がここに来れるわけがあるまいて」


 無駄な荘厳な椅子から立ち上がった王様らしきおっちゃんが、勢いよく腕を振るうと黒炎が巻き上がり、その炎の中から剣が現れた。んん?奇術かな?マジックかなー?どちらにせよすごいな!


「え、ええと、ここがどこかもさっぱりハテナな感じなんですけど……。王様?なんで剣を楽しそうに素振りしてるんです?割と風圧すごいですよ?」


 王様が一振り振るごとに大地が震え、暴風が巻き起こる。尋常ではない。いや、マジでヤバいな!


「何を言う、ここまで来れる勇者であればこのくらいはできるであろう?」


 あーその設定生きてたかー。だから勇者じゃないって王様ー。……王様だよね?


「ああ、そうだ。吾は王だ。だがその前に、大と言う字と魔と言う字がつくがな」



――この王様、自分が大魔王様なのだという。



 ふーん、なるほどなー!なんかこう、ゴブリン的なアレとか小中なボスとか魔王とかすっ飛ばして大魔王かー!


「なにこのクソゲー?開発者出てこい!」


 俺は頭を抱え、思わず天を仰いだ。だってこんなの無理無茶じゃあないか!いやいや、あり得なくないかな!神はいないのか!!


「アイツら出てこないから困るんだなぁ、これが。余も真面目に一発ぶん殴ってやりたいんだがね!あの神たち!」


 大魔王なおっちゃんはため息をつきながらやれやれと首をふる。

 なるほどなー大魔王も苦労してるんだー。うんうん大変ですね。そういうわけで失礼しますねー!お疲れ様でした!!と、くるりと方向転換。出口のありそうな方を見やる。


 あれれ~?出口さんが見当たらないよ~?おかしいな!ねぇ、立て付け失敗してないかな!


「くく、どこへ行こうというのだ。勇者なら――いや、()()()()()()()()()()であれば知っているであろう?」


 ニヤリと王は楽し気に笑ってこう言った。


「大 魔 王 か ら は 逃 げ ら れ な い と」


 瞬間、巨躯の大魔王が目の前に現れる。


 握りし剣は黒の炎の剣――中二っぽいな!


 暴風ともいえる風圧と共に爆熱が鼻先を掠め、その刃が振り下ろされる。


 常人であれば切り裂かれたという感覚すらもなく魂ごとその剣に焼き尽くされる威力だろう。事実、自分のいた場所は見事焼き抉られていた。うん、石の地面が溶けて抉れてるよ!んひゃほい、躱して大正解だったよぉ!!


「ほう、よけたか。貴様、今何をした?」


 何故か嬉しそうな顔で大魔王は二撃目を放つ。


「やめてくださいよ。争いは何も生まないってほら、誰だっけ、なんか偉い人が言ってましたよ。そう、ガンジス川さん?」


 三回、四回と音速を超えた超スピードで放たれる斬撃は掠ることはない、いや避けてるからね?掠っただけで致命傷だし!全力回避だよ?おっとあと三歩下がらないと真っ黒こげになりそうだ!


「予知――いや、予測か?吾の攻撃を予測しているのか?はは、なんて馬鹿げたことを!ならば!」


 剣を成していた炎が揺らめき、轟轟と煌きながら黒黒と輝く。黒いのに輝くってすごいな!


「黒炎爆龍剣!」


 いたた、あいたたた!漢字は駄目だよ!格好いいけど!黒い炎が龍になって俺のいた所が下十メートルくらい蒸発したけど!いや、危ないな!危ないよ!?死ぬから!!


「巫術!そうか貴様、水の精霊を操ったのか?」


 いやいや操るだなんてとんでもない。神でもあるまいしそんなことができるわけないでしょうに。やだなー単に水さん力貸してちょ、とやっただけだよ?と、燃え尽きた呪符をはらはらと捨てる。ううん、水のない場所でも使える由緒あるとっておきのお札だったんだけどな……。書いたの俺だけど!!


「くふふ、おもしろい!面白いぞ勇者!まだ何か隠しているな!見せろ!もっとだ!」


 んー、俺おっさんに好かれる趣味とかないです!せめてこう、美少女になって出直して欲しいなって?


 大魔王が手に待つ魔剣から放つ黒い炎の玉を避けて、躱して、ステップ踏んで、くるりくるりと走り回る。当たれば死ぬ。かすっても死にそうだ!いやマジクソゲー過ぎないかな!


「ふははは!それはいい!余に掠り傷でもつけることができたらば娘の婚約者候補にしてやろう!」

「候補かー。それならせめてメイドさんくらい欲しいな!とってもかわいい子でおなしゃす!」


 軽口を叩きながらも足を巡らせ、壁を、柱を蹴って躱して避けて逃げる!止まったら死ぬ!というか、魂まで焼き尽くされる気がする!


「はは!我がままな勇者め!いいだろう、ならば――この一撃を(しの)いで見せろ!」


 大魔王の目がギラリと光り、呪文を唱え始める。放たれていた漆黒の炎が一塊に集まり出し、天空に黒い太陽が生み出されていく。その熱量は膨大。離れた位置であるのに、その異質な熱量を感じ取ることができた。うん、アレマジでやばい奴だよ!


 恐らくは大魔王最大にて最強の一撃。この空間をも焼き尽くす、必殺の大魔法なのだろう。



 ……でも、なんで棒立ちなんだろうか?


 どこからどう見ても隙だらけ過ぎて罠にしか見えないんだけど、ここでやらない手は無いよね!

 素早くダッシュで間を詰めて、大魔王のひらひらの服を掴んで足をかけ、クルリと回して地面に叩きつける。


「は?」


 唖然とする大魔王。うん、大外刈りだよ?


 けれども流石は大魔王!受け身は完璧、ダメージ無し!素早く起き上がろうとするので横四方固めで動きを封じて――と関節を固めたところで異変に気付く。



 ……あ、あれ?なんだかチリチリ熱いな?ヤバいくらいに熱くないかな!?


 ふと、見上げると大魔王が作った黒い太陽が目の前にあった。


「ちょ、やめ、やめよう!争いは何も生まない!って、一緒に死ぬよこれ!」

「はは、すまんな。コレだしたら止まらんのよ。すまんな!」


 何でてへぺろ顔なのかな大魔王!!


 じりじりと燃え盛る黒い炎がついぞ髪の毛に燃え移る。


……あーこれ無理かなー。……無理なやつだな!


 ジュワッという感覚と共に落ちてきた黒い太陽に大魔王ごと全身が包まれて、俺の意識は瞬く間に潰えたのだった。あつぅい!

見切り発車で徒然なるままに書いていければいいなと思っております。

主人公は良く死にます。応援してあげて欲しいかなって。



2020/12/11修正を加えております。内容は特に変わってないでs( ˘ω˘)スヤァ

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