二話
ピピピ、というけして愉快ではない音と共に目を覚ます。実際に目覚まし時計の音は不快に聞こえるように作られているらしい。
そんなどうでもいいことを考えつつ、俺は体を起こす。そこで時計を見てふと思う。何故こんな時間に起きられたのだろう、と。
普段は師匠に午前3時に起こされるのに、何故8時に起きているのだろう、と。
そして、よく見ると見慣れた家ではないことにも気付く。
そこまで考えた俺は、ようやく自らの状況を理解する。そして、それと同時に青ざめる。
師匠がいないのは当たり前だ。彼女は今アメリカにいる。正確には、俺も昨日まではいた。しかし、今俺がいるのは日本だ。
なぜか?それは日本の対<エネミー>戦闘員を育てる学校、防星高校の入学試験を受けるためである。ではその試験はいつからかというと、今日の9時からである。
先ほどのアラームはどうやら何度もあの音をリピートしていたようだ。
つまり、俺の現状は----
「寝坊した」
の一言に尽きる。そこで停止しかけていた脳をフル回転させて、俺はまず今からでて間に合うかを確認するために電車の時刻表を広げる。
見ると、今からちょうど五分後に電車が出るようだ。俺はそれに乗れなければ、ゲームオーバーである。
こうして、俺の1人徒競走が始まった。




