↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
無能と呼ばれた俺、4つの力を得る  作者: 松村道彦
第6章:木漏れ日の時

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

443/563

第435話:恩為

 

「見ろロード……装甲が開いたまんまだ」


 ロバートの焦燥を表すように、巨神が後退りしながら頭を抱える。

 そしてバーンが言った通り、"神の咆哮(ゴッドビーム)"を撃つ為に開かれた装甲はそのままになっていた。


「ひょっとして、ゲイボルグの攻撃で閉まらなく……あっ!?」


「どうした?」


「み、見えます……中の人の生命が!」


「マジか! じゃあ、あれは外側を覆っていただけってことか」


「そうみたいですね。ただ……」


 開かれた装甲から覗く生命の反応。

 それが見えるようになったまではいい。

 だが、問題はそこからだった。


「ただ、なんだ?」


「全身に……至る所に人が埋め込まれています。あれを避けて攻撃するのは難しそうですね……」


 彼の目に映る生命は、少なくとも100を優に超えていた。

 更に、装甲が開いているとはいえ、核とされた者達は全て深い位置に埋め込まれており、それらを戦いながら全て救い出すというのは不可能に近かった。


「となると、一点突破だな……ロード、王がいる場所は分かるか?」


「…………恐らく胸の中心、一番深いところにいると思います。ただ、その周りにもたくさんの人が……」


 他とは違う反応。

 それが、埋め込まれた人間に守られるように、そこにあった。


「そうか……だったら、まずは胸の装甲を剥がすしかねぇな。ロード、俺にはどこに人がいるかが見えねぇ。だから俺はお前の指示に従う。誘導してくれ」


「分かりました……やってみます」


「頼む。んじゃ時間もねぇし……さっさとやるかッ!」


「はいッ!」


『ひっ!?』


 ロードとバーンの魔力を感じ、頭を抱えてうずくまっていたロバートは前を見る。

 そして、迫る2人が目に入った瞬間――――


『い、いやぁぁぁぁあぁぁぁぁあッ!!!』


「「ッ!?」」


 巨神に備わっていたある機能を、発動させていた。


「な、なんだこのッ……!」


「近付けなッ……あっつ!?」


 突如として2人を襲ったのは、凄まじい熱風であった。

 それは立っているのがやっとという程で、じりじりと2人の身体が後退していく。

 そして――――


「ッ!? おいまさかッ……!」


「う、浮いてる!?」


 その熱風の発生源。

 それは、巨神の背中にあった。


『僕に……僕にッ! ぼぐにぢがよるなあぁぁぁぁぁあッ!』


 巨神の身体がゆっくりと浮き上がると、徐々に上昇する速度が上がっていく。


「あ、あの図体で飛べんのかよ!? とにかくここから出す訳には行かねぇ……止めるぞロード!」


「は、はいッ!」


 ロードが応じるや否や、バーンは時空魔法を発動させて巨神の上へと移動した……その時だった。


「ッ!? バーンさん上ッ!」


「なんッ……うおッ!?」


 突如上から降ってきた肉の塊が、バーンへ強烈な一撃を見舞っていた。

 ロードの声に反応し、からくもそれを大剣で受け止めたバーンだったが、男はその剣を掴んで身体を密着させる。

 そして2人は身体を密着させたまま、凄まじい勢いで地面へと向かって行った。


「お、お前はッ!」


「ボッグス……!」


 ゲイボルグに全身を貫かれて尚、ボッグスは戦うことをやめなかった。

 全ては王の為、最後の最期まで、命を燃やして動き続ける。


「はぁぁッ!」


 バーンから離れないボッグスに、ロードは空を駆け抜けブリューナクの一撃を見舞う。

 しかし、雷神の槍が深々と突き刺さっても尚、ボッグスは折れることなく拳を振るう。


「ぐッ! このぉッ!」


 それを魔銀の義手で受け止め、ロードはボッグスの顔面に蹴りをたたき込む。

 その時、衝撃でロードの腰に下がっていた茶色のポーチがこぼれ落ちた。


「おらぁッ!」


「!!!」


 ロードの攻撃に合わせ、バーン渾身の拳がボッグスの腹部に突き刺さると、これまでの戦いの中で初めて、その顔が苦痛に歪む。

 バーンはその瞬間を逃さなかった。


「ぬんッ!」


 バーンは剣を掴んでいたボッグスの腕を振り払い、その身体を蹴って引き離すと、空中で態勢を立て直して地面に降り立った。

 引き離されたボッグスは、そのまま勢いよく地面に叩きつけられるも、すぐに起き上がって2人を睨みつける。


「ふぅ、なんて野郎だ。ロード無事か?」


「ええ……くそっ」


 バーンの隣に着地したロードが見上げた先、既に巨神の姿はそこになく、あるのはそれが開けた大きな穴のみであった。


「……やられたな」


「はい……とにかくまずはッ……あっ……!」


「どうし……ッ!? こいつ……」


 それに気付いた2人は、同時に構えを解いていた。

 というより、もう構えをとる必要はなかった。

 彼らの前に立ち塞がったボッグスは、立ったまま、もう動くことをやめていたのだから。


「……敵ながらあっぱれって言葉は、こういう時に使うんだろうな」


「そう……ですね」


 王の為に、文字通り命を懸けて戦った男、ボッグス。

 彼は最期まで王を信じ、その命を散らした。

 果たして、エミーナとどちらが幸せだったのかは分からない。

 ただ、やはりロードには、その結末が酷く虚しく思えたのだった。


「さて、と……まぁやべぇな」


「……ですね」


 バーンの言葉で思考を切り替え、ロードは周りを見回した。

 上空からは瓦礫が降り注ぎ、張り巡らされたパイプからは爆音とともに火の手が上がる。

 更に、絶えず続く地響きが、この地下空間が崩落する寸前であることを2人に教えていた。


「俺らだけ脱出するのは簡単だが……そういう訳にはいかねぇな」


「はい……なんとかしないと」


 ロードの目に、動かなくなった大量の人造魔石機兵(ハイゴーレム)達が映っていた。

 その中には、王の命によって核にされたなんの罪もない人々がいる。


「少しずつ逃してはいたんですが……数が多過ぎました。それに、今まで通ってきた場所にも人造魔石機兵(ハイゴーレム)になった人がいます……もう、時間がない」


 ロードはロバートが操る巨神と戦いながら、生命魔法で人造魔石機兵(ハイゴーレム)を操り、少しずつ戦場から彼らを遠ざけていた。

 しかし、彼が一度に与えられる生命は、最大で4つまで。

 ティア達を逃す為に生命を与えたプリトウェンと、ボッグスと戦っていたゲイボルグを差し引き、その時生命を与えられる対象は2つしかなかった。

 全てを逃すには、時間が全く足らなかったのである。


「しゃあない……あれをやるか」


 バーンは地に伏せる人造魔石機兵(ハイゴーレム)達と、崩落が加速していく頭上の様子を眺めた後、ため息混じりにそう呟いた。


「え、あれ……ですか?」


「この状況を打ち壊す策はある。だが、まだ条件がな……ロード、上にいる奴らに連絡出来るか?」


「あ、はい。通信魔石……あれっ? どっかに落とし……ッ!?」


 腰のポーチを探ろうとしたロードの手が空を切る。

 そして、慌てて周りを見回したロードの視界に、その少女が映り込んだ。


「き、君は……!」


「……目が覚めたのか」


 その少女……リナリアは、ロードのポーチを右手に持ち、静かに上を見つめていた。


「……行ったのだな……陛下は……」


「ああ。お前らを見捨ててな」


「フッ……知っているよそんなことは。エミーナの首を見ればな」


 そう言いながら、リナリアは振り返り、地面に横たわる彼女を見つめた。


「あの切断面……幾度なく見たものだ。エミーナの魔法で消えた……馬鹿な奴だ。自死など……そんなことをするくらいなら、陛下の玉避けになればよいものを……」


 リナリアは2人に向き直り、ポーチをロードへと放り投げた。


「わっ……と……!」


「これは返してもらったぞ」


 そう言った彼女の右手には、赤い魔石が握られていた。


「あ、それは……!」


「そう……これで人造魔石機兵(ハイゴーレム)を操ることが可能だ。今地面に伏せている者どもも、私が魔力を込めれば即座に動き出す……貴様らを殺す為にな」


「くッ……!? バ、バーンさん?」


 身構えるロードを、バーンが手で制す。

 その光景を見て、リナリアは目を閉じて微かに笑った。


「……はっきり言っておく。今から私がすることは、決して貴様らの為に行う訳ではない。勘違いするな」


 そう言うと、リナリアは再び自身の左手の人差し指を……耳に突き刺した。


「なッ!?」


「ぐッ……う……こ、これは全て……陛下の恩為ッ!」


 直後、赤い魔石が光り輝く。

 それと同時に、動かなくなっていた人造魔石機兵(ハイゴーレム)達が起き上がり、片足のものは器用に飛び跳ね、足がないものは手だけで這いずり、まるで避難するように端の方へと移動を開始した。


「こ、これは……」


「きょ、強化ッ……強化された……わたッ……私の今の力ならぁッ! はぁッ……はぁッ……ち、地下にいるすべ……全ての人造魔石機兵(ハイゴーレム)を操るこッ……とが可能ッ! 何をするのかは知らんがッ……端に寄せれば邪魔になるまいッ!?」


「……ああ、それでいい」


「フッ……フフッ……決して貴様らの為にッ……ではない! こ、この戦いに勝利した陛下のッ……覇道にはぁッ! 駒が必要だからなぁッ! す、少しでも人造魔石機兵(ハイゴーレム)をッ……!」


「分かってる。ロード、上の連中に連絡しろ……城からなるべく離れろ、とな」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。