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無能と呼ばれた俺、4つの力を得る  作者: 松村道彦
第1章:無能とは
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第24話:ヒストリア

 

「ずっと天気が悪くて見えなかったけど……」


「久しぶりに近くで見ました。流石は"ニーベルグの壁"ですね」


 到着した途端空は晴れ渡り、雄大なラピス山脈が目の前に広がっていた。

 山頂付近は雪に彩られ、山肌は青と灰色の中間色をしている。

 連なる山々はそのどれもが標高5000メートルを超え、それが左右どちらも地平線まで続いていた。


 と言っても山々の間には馬車が通れる道があり、そこを通れば山を越える必要はない。

 その為盗賊がよく出没するのだが、まぁ俺達なら大丈夫だろう。


「あ、ロード様、あれですかね?」


「ん? あーあれだな。ワイバーン討伐の依頼が出たヒストリアは」


 ラピス山脈の麓にある町ヒストリア。

 今回俺達は寄らなかったが、首都ニーベルグに次ぐ大都市でフォッケンという町がある。

 ヒストリアはその中間にある町で、行商人がよくそこで1泊し、それから双方の町に向かう、所謂いわゆる中間拠点的な役割を担っていた。

 その為物流の中心となっており、宿屋はもちろん、商業でも発展した大きな町となっている。


 だからだろう、今回のワイバーン討伐は一刻も早く依頼をこなす様にと各支部に通達が来たらしい。

 ヒストリアがワイバーンに襲われれば、ニーベルグの物流が滞り、国全体の機能が著しく低下してしまう恐れがある。


 俺がこなせばガガンさんの株も上がるし、俺の名前も売れる。

 更にはバルムンクも満足するという一石三鳥の展開になる訳だ。

 もちろん俺達以外の冒険者も討伐依頼を受けているだろうし、もう到着しているパーティもいるかもしれない。


 馬車を走らせながら、俺達は事前に話し合っていた

ことを確認する。

 俺の魔法についてあることを決めていた。


「レヴィ、生命魔法ではなく召喚魔法で通すからそのつもりでな」


「承知致しました。まぁ、あらぬ疑いは避けた方が利口ですからね。ロード様が無能と呼ばれていたことを知る人間はあの町にいた人達のみですし」


「まぁ俺の町から旅立った冒険者もいるからゼロじゃないけどな」


 俺の同世代の連中は既に旅立ったらしい。

 町を出たの1ヶ月ほど前なので、あの町にはいないと思うが一応警戒しておこう。

 彼ら以外にも旅立った冒険者はいる。

 まぁ、魔法を見せて納得してもらうしかない。


「召喚魔法なら名が通っておりますし、問題ないかと」


「だな。職業も召喚騎士にして正解だった訳だ」


 今の時代に生命魔法という概念はない。

 説明しようにも、毎度それでは流石に辟易してしまう為、見た目が近い召喚魔法にすることにした。


 召喚魔法は自分が創り上げた使い魔を魔力で作り出し、それを使役する魔法なので、傍目から見ればあまり区別がつかない。

 召喚魔法使いからすれば"何故武器を媒介にしているんだ?"となりかねないが、まぁそこは上手くやればいい。


「レヴィは俺以外の生命魔法使いを見たことあるんだよね? どんな人だったんだ?」


「いや……実は見たのは一度だけで、その方とは話したこともないんです。見たというのも"鑑定した"という意味で、その力を見たのはロード様が初めてです。私の時代では、生命魔法という存在は知られていましたが、所謂いわゆる伝説の魔法だと言われていました。以前にも言いましたが、神のそれに近い奇跡の魔法ですからね」


「なるほどな……因みにその人はどこで見たんだ?」


「それが思い出せないんです。何しろ数千年前のことですから。戦場ではなかったと思うのですが……」


「確かにそれじゃ難しいな……」


「生命魔法を鑑定した時に見た説明があまりに素晴らしい力だったので、その記憶だけは残っていたのですが……申し訳ありません」


「いや、気にしないでくれ。ちょっと気になっただけだからさ」


 その生命魔法使いはどんな人で、どんな風に戦っていたのか興味はあった。

 この先成長することで得られる力はレヴィの鑑定魔法でも分からない。

 レベルが100になった時、俺はどんな力を得るんだろうか。


「もう間も無くですね。ヴァンデミオン、あと少し……頑張ってね」


「ブルルッ!」


 ヴァンデミオンはレヴィの言うことが分かるのか、彼女の声掛けにいつも必ず応える。

 レヴィの敬語以外の言葉が聞けるのはヴァンデミオンに話し掛ける時だけだ。

 俺にもいつか敬語以外で話し掛けてくれたら嬉しいんだが。

 レヴィは嫌がるだろうけど。



 ―――――――――――――――――――



 ヒストリアに到着し、ヴァンデミオンと馬車をうまやに預けた。

 町の中に入れるのは行商人の使う馬車か、貴族や王族のみと決められている。

 冒険者や他の国民は、町の外にあるうまやに預けるのが一般的だ。

 餌やりから馬車の清掃までしてくれるので多少割高にはなるが、安心して預けられるのだからそれは仕方のないことだろう。


 俺達は町の中に入り、冒険者ギルドを目指す。

 今回の依頼はこのヒストリアから出されており、特別推薦依頼書を提出して正式に依頼を受けなければならない。

 共有依頼が出された場合は、依頼があった大元の支部にも顔を出す決まりがあるらしい。

 それによりギルド側はこの依頼に対しどの程度冒険者が動いているか、また冒険者達のランクなどの情報を把握することが出来る訳だ。


「なんか前に来た時より立派な建物が増えてるな」


「あ、来たことがあったのですか?」


「神殿が首都にあるからね。ここにも寄ったんだ。まぁ、馬車の中ではずっと寝てたから、道は全く覚えてないけど」


「なるほどそういうことでしたか。確かに私が以前来た頃よりも大きくなってますね」


 石やレンガで造られた大通りの両側にある建物は、どれをとってもイストより立派なものばかりだ。

 綺麗に整備された石畳は均一に削られており、隙間なくびっしりとはめ込まれている。

 これならつまずくこともないだろう。


 さっきから道の真ん中を馬車が何台も走っている。

 歩行者は道の両端を歩くように決められているらしい。

 その多くの通行人の中には、俺達のような冒険者の姿もちらほら見える。

 向こうからしたら同業には見えないかもしれないが……。


 この大通りに防具屋や武器屋、雑貨屋に食材屋と、全ての店が集中しているようだ。

 どの店も賑わっており、それだけ多くの人がいることが分かる。


「あ、魔石屋だ」


「ああ、イストにはありませんでしたね」


「行きたいけど……依頼が終わったらにしようか」


「そうですね。ゆっくり見たいですし、報酬も出るでしょうから」


「そういえば今いくらあるんだ?」


「色々買いましたし……あ、それでも10万ゴールドはありますね」


「それだけあればしばらくは大丈夫か。けど、買い物をするとなるとちょっと心許ないな。他にも買いたい物があるんだよね」


「む、何を買われたいんですか?」


 俺は腰に差してある鉄の剣を指差す。

 親方が作り出した鉄の剣には鞘が無く、持ち手はむき出しの鉄のままだ。


「彼の鞘とかをね。一応布を巻いてるけど、ちゃんと作ってあげたいんだ」


「なるほど。それはいいかもしれませんね」


「まぁ、今は先を急ごう。寄り道してたらバルムンクに怒られそうだ」


 活気溢れる大通りをしばらく歩くと、大きな噴水がある広場に出た。

 大通りから見て中央に大きな町役場があり、その隣に同じくらい大きな冒険者ギルドが建っていた。

 物流の中心は当然冒険者の活動においても同じことで、人が多い場所には多くの依頼がある。

 ギルド運営もタダじゃないからな。


「でかいなー……イストの5倍はあるか?」


「レンガ造りの4階建て……立派な建物ですね。では、参りましょうかロード様」


「ああ、行こう」


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30.3.25より、書籍第2巻が発売中です。 宜しくお願い致しますm(_ _)m
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