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無能と呼ばれた俺、4つの力を得る  作者: 松村道彦
第5章:それぞれの戦場で

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第169話:恋人

 

 フリードリッヒ様は俺の目をじっと見ていた。

 伝えるべきことは伝えたし、後はもう信じてもらうしかない。

 そう祈っていたその時、不意にフリードリッヒ様がニッと笑った。


「よし、信じよう」


「……へ?」


「フ、フリードリッヒ様!?」


 ジルさんも驚いていた。

 こ、こんな簡単に?

 これはいったいどういう……。


「いや、すまんな……少々試させてもらったのだ」


 た、試す……?


「悪かったなロードよ。先刻の台詞は本意ではない……どうか忘れて欲しい」


「テ、テーベさん……?」


「ぶはぁっ! もう喋ってよいのかしらぁ? やぁねぇ……睨み続けるって結構疲れちゃう!」


 えっ……え!?

 ス、スパルタクスさん!?

 どっ……どういう……えっ!?


「ん? おいニア。もうよいぞ」


 フリードリッヒ様がそう声を掛けるが、ニアさんは未だに俺を睨んでいる。

 ど、どうなって……頭が追い付かない……。


「ニアッ!」


「はっ!? …………すいません寝てました」


 目を開けたまま!?


「まったく……まぁ、ニアはその方がよかったかもしれん。話し出すとボロが出るからな」


「ウェッヘッヘッ……すんませんねぇバカで……」


「お、お前達……フリードリッヒ様も……私まで騙していたのですか!?」


「すまないジル……まぁ許せ。ジルはロードと近しいからな。本当のことを言う訳にはいかなかったのだ。そしてロード、レヴィも……試したことをどうか許して欲しい」


 そう言ってフリードリッヒ様が立ち上がると、他の3人も立ち上がり同時に頭を下げた。


「あ、いや……どっ……もう大丈夫ですんで!」


 俺の隣では、レヴィが腹を押さえながら椅子に沈み込んでいた。


「はぁ……よ、よかったです……胃がキリキリしましたよ……」


「ごめんなさいねぇ……フリードリッヒ様がどうしてもっていうから。ロードちゃんを睨むのは辛かったわぁ……こんな可愛い子を……あーやだやだ」


 緊張感から解放されたからか、なんだか俺も腹が痛くなってきた……あとスパルタクスさんが……嘘だろ……。


「フハハ! あ、いや、本当にすまない。実は……これも申し訳ないとは思ったのだが、ロードに監視を付けさせてもらっていたのだ」


「えっ!?そ、そうだったんですか!?」


「僕が後ろにいたの気付かなかったっしょ。ま、それが僕の魔法だからねん」


「ニアの魔法は透明化魔法。その力を使い、外出時は常に見張らせてもらっていたのだが、怪しい点は何1つなかった。今日の昼間もニアが近くで全てを聞いていたのだよ。その時点で君がスパイではないと確信していたのだが……どうしても直接反応が見たくてな」


 全然気付かなかった。

 町の中だから生命の反応は沢山あったし、つけられているとは夢にも……。


「じゃ、じゃあ最初から……」


「ああ、そうだ。全てを知ったうえで君がどういう人間なのかを見たかった。無礼は百も承知……だが、全てが嘘だった訳ではない。信用に足る人物か否かは見極めねばならん。特に……今の世界ではな」


 確かに……。

 読心魔法の使い手でもない限り、人の心は誰にも分からない。

 俺がいくらギリシアを守りたいと思っていても、周りの人がそれをどう受け止めるかは別の話だ。


「父上……いや、陛下は寛容なお方だ。無論、人を見る目はあるが……この状況で万が一は許されん。どうか分かって欲しい」


「そうでしたか……いえ、当然のことかと思います」


「ありがとう……さて、それでは竜族について聞かせてもらえるかな? 我々も策は講じているつもりだが、是非伝説の武具達の意見を伺いたい」


「ん、やっと喋れるわね。色々言っちゃうけどいいかしら?」


「無論だ。忌憚ない意見を頼む」


「おっけー。んじゃまずは……」



 ――――――――――――――――――――――



「適当にカゴを使ってくれ。我ら4人以外は来ないようにしておいたから」


 軍議を終えた私達は部屋を後にし、ジル様に連れられて大浴場へとやってきていた。

 因みにロード様はスパルタクス様に連れさら……声を掛けられ、私達とは別行動をとっている。

 ……何もなければよいのですが。


「すまなかったなレヴィ。まさか私まで騙されているとは思わなかった……」


 鎧を外して服を脱ぎながら、ジル様はそう言って眉尻を下げる。

 ジル様は性格上、堂々と嘘をつけるタイプではないですからね。

 フリードリッヒ様の判断は間違っていないでしょう。


「お気になさらないでください。フリードリッヒ様のお言葉はもっともですし、むしろこれで憂いもなくなりましたから」


「そう言ってもらえると助かる……バルムンク達もありがとう。おかげで色々と改善することが出来そうだ」


 バルムンク様とアスカロン様も既に服を脱がれ、初めて入るお風呂に興味津々のようだった。


「礼なんていいわよ別に。それに、お風呂入ってみたかったしね。ってかアスカロンあんた……無駄にデカくない?」


「あ、これですか?」


 アスカロン様はご自分のお胸を両手で持ち上げる。

 着痩せするタイプの方でしたか……。


「女である以上大きい方がいいかと思いまして。それに、あなたに言われたくはありませんが?」


「……私とあんたじゃ意味合いが違うのよ」


 バルムンク様もアスカロン様もよいものをお持ちですね……ジル様もですが。


「ま、私もあんたもレビィには敵わないけどね」


「そのようですね。さすがはレヴィ様……ご立派です」


「えっ……いや、ちょっ……!」


「確かに……道理でロードが骨抜きになる訳だ」


 3人とも私をジロジロと見つめてくる。


「そ、そんなに見ないでくださいっ!」


 恥ずかしい……。


「いーじゃないの減るもんじゃなし。うりうりー」


「やっ!? ちょっ……!」


 いつの間に後ろっ……!?


「なーんかレビィを見てるといじめたくなるのよねぇ……ほれほれ」


「バ、バルムンク様っ! おやめくださいぃ……!」


 背後から胸を鷲掴みにっ……!

 なんとかそれを振りほどき、バルムンク様から距離を取る。

 ……この方は危険です!


「はっはっはっ! 後で私にもやらせてくれ」


「ジ、ジル様!」


「冗談だ。さ、風邪を引く前に入ろうではないか」


「もうっ……」


「レヴィ様、私も……」


「ダメですっ!」



 ――――――――――――――――――――――



 身体を洗った後、4人で湯船に浸かる。

 全てが白い石で作られた美しい浴場は、私達だけでは勿体無いくらいに広い。

 それにしても……。


「生き返りますねぇ……」


「ああ……風呂はいい」


「最高ねこれぇ……人間はずるいわぁ……」


「同感です……」


 常に無表情のアスカロン様まで顔が緩んでいる。

 やっぱりお風呂はいい。

 心も身体も癒されますね……。


「なぁレヴィ……1つ聞きたいことがあるのだが……」


「なんでしょうかぁ……」


「……普段ロードとはどんな感じなんだ?」


「ふぇっ!?」


 い、いきなり何を……。


「いや、その……分からんのだ。今までそんな気持ちを持ったことがなかったから……グ、グラウディとどう接すればよいのか……」


 あ、ああ……そういうことですか……。


「わ、私達も……似たようなものですよ」


「え? お前達は恋人同士なのだろう?」


「ん……ええ……多分……」


「多分って……どういう……」


「た、確かにその……一緒に寝たり、キ……キ、キスっ……くらいはしますけどっ……」


 あの時……魔王の城が崩壊していく中で、ロード様は私を好きだと言ってくれた。

 確かにあれ以来、私達の距離はすごく縮まったと思う。

 ただ、まだ一線は超えていない……いや、超えられていない。

 自分では結構頑張っているつもりなんだけど……なんだかんだはぐらかされているというかなんというか……。


「よく分からんが……い、いいのかそれで?」


「どう……なんでしょうね……なんか怖くて……」


 ロード様が照れ屋なのは知っている。

 だから私も深くは聞かないし、考えないようにしていた。

 それに私自身……ティアとアスナのことが気になっているのもある。

 だから今のままでいいと……そう考えてはいた。


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