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東の魔王 2
「大丈夫っすか~プリンス!」
「ああ……力が出なくて飛べないだけだ」
「それ大丈夫じゃないですわ! ……でもダーリンに怪我がなくて良かったですのよ!」
あの小娘が報いを受けるのはまちがいない。この世界は正義があり悪があるのではなく、悪がありて成り立つ正義だ。
「えへっ!」
人族官僚の娘は魔王の息子を瀕死に追い込んだ。大好きな家族に褒められるとわくわくして帰宅した。
まっさきに両親へ、隙をついて魔王の息子をボロボロにしたと報告する。
「なんてことをしたのだ!」どうしてだろう? 大人達は誰も彼女を褒めてくれないのだ。
◇◇
「なんで? 私は良いことをしたのに皆しねばいいのに!」
近頃の人間は教育やら教養が最低レベル、彼女も例のごとく精神衛生がよくないらしい。
「とりあえず逃げましょうぜ」
「逃げるなど魔王の息子たる僕が……」
「今の状態、漫画ならラスボス戦前でボロボロの主人公が……」
「いきなり何いってんだお前は……わかったよ」