元騎士団は妹大好き 一話
「はあ、休みたい」
貧しい村から城の騎士団長となって数年、一度も帰郷していない。
母が病で死んだときもまだ下っぱで帰郷なんてできなかった。
そろそろ里帰りをしたいと思っていると、部下から王がお呼びだとつげられる。
「騎士団長カレイド=レウニールセン」
国が国だけに暗殺者を危惧するアラビンの王は騎士団長であっても近衛兵でなければ顔など滅多に拝めない相手。
「はは」
「騎士団に入り約10年か、その間に休暇もなかったらしいな」
ついさっき誰かがから聞いて知ったようなニュアンスだ。
「はい」
「近頃は情勢も落ち着いている。しばらく休息せよ」
■
「久々に来たな」
自宅のある近辺は相変わらず貧困がひどい。
父は物心ついたときには足を悪くしていて、母の看病をしながら町の薬師をしていた。
自家栽培している草ということで、子供はタダで診ていた。
他所から薬を買っているよりはマシだが、儲けも少なく体が弱い母も内職をしていた。
騎士団に入る前は貧しい生活が嫌でしかたなかった。
自分の人生を物語りにしたらヨウコクあたりで儲けられるんじゃないかなんてゲスなことも考えてていた。
「ただいま」
ボロいドアをノックし、開けると鍵があいていた。
なにかぐちゃりと変な音がしている。
蝋燭すらない真っ暗な部屋、父と誰か別のやつがいる。
「カレイド……暗殺者だ!!」
負傷した父が叫び、迫る敵のナイフを剣で受け止めた。




