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肯定された愛しの怪物 ①


『わたしジュウトが大好き』

『俺も―――』

『大きくなったらジュウトのお嫁さんにしてね』


女の子は泣きながらバラバラに崩れて闇に消えていく。

ああ、彼女はその後に死んだんだった。


「おきろクソアニキ!!」

「あと5分、いや15分だけ」

「もー早くおきなさーい!」


妹にたたき起こされ、眠たい目をパチパチ、あくびをする。


「どうしたんだ、寝坊なんてらしくない」


食事をすませ、妹とともに外へ出ると幼馴染で近所の兄ちゃんザイジョウ・バントが現れた。


「ああ、バント兄ちゃん、なんか悪夢を見たから」

「そのわりには嬉しそうだな」

「あーなんかガキの頃に結婚してほしいって言われたんだけど、久々に夢で見たからさ」

「なら悪夢じゃなくないか」

「アニキなんかにコクるなんてその女ないわー」

「うっせー」


――なんか騒がしいな。悲鳴のようなものが聞こえてくるし、沢山の人がこちらへ走ってくる。


「あははは!」


いきなり少女が手当たり次第に銃を乱射し、周囲は大騒ぎになっていた。

都会に引っ越してきて早々、とんでもない現場に遭遇した。


「ちっ……トチ来るってるのか!?」

「向こうさんヴァンパイアじゃないみたいですね、どーします~?」

「ヴァンパイアでなくとも、ヤバイ奴を倒すのが仕事だろ」


なにやら仲間同士で言い争いをしているようだ。


「最近こういう事件がよくあるんだよ」

「へー」

「てか冷静に見てる場合じゃないよ!」


逃げようとしている最中、少女がこちらに気がついたらしい。


「あぶない!!」


俺は二人を突き飛ばして、銃を受けた。


「アニキ!」

「十斗!」

「バント兄ちゃん、俺の事はいいからミツを……!」

「行こう……」

「うう……」


ああ、俺の人生ってなんだったんだろ。

妹がクソみたいな性格でも、いるってだけで人生勝ち組だと思ってたのにな。

幸いにも少女は追撃してこなかった。

向こうの特殊部隊みたいな奴等のほうに行った。


「死にたくねええええ!!」


まるでドラマチックなラストのように叫んだ。

それだけで案外悪くないラストかもしれないんじゃないかと思えてくる。


「あたしを呼んだ?」

「……誰だよ?」


なんだか見覚えのある薄い紫色の髪の女だが、ぼやけてわからない。


「ジュウトなんだよね?」

「まさか……」


そこで俺の意識は途切れた。


「目が覚めたか?」

「……はい?」


気がつくと彼女ではなく、特殊部隊の男がいた。


「私はヴァンパイア駆逐部隊の第一部隊隊長メリストレルだ」

「俺は……」

「グラビ・ジュウト、魔法学園の普通科ですよね~?」


飄々とした男は、たしかさっきこの隊長と話していたような?


「君はまともに話せないのかハンプニューイソス」

「まともに喋ったら死んじゃうんですよ~」

「まあいい、グラビくんだな」

「あ、はい」

「君はなにがあったか覚えているか?」


そりゃもう鮮明に覚えている。


「朝学園へ行こうとしていたら変な少女の銃弾から妹を庇って、昔どっかで会った気がする変な女に話しかけられて奇跡的に生きていた。というとこまでです」

「おい……ちゃんと記憶消去したのか、効いてないぞ!?」


隊長がハンプニューイソスの襟首を締め上げた。


「君、ヴァンパイア駆逐部隊に入っちゃいなよ~」

「え」

「というか記憶消去が効かない場合は強制入隊か機密保持のために抹殺なんだが」

「いや、ただあぶない奴に巻き込まれただけなのになんで死なないといけないんですか?」

「だから部隊に入ればいい」

「学園があるのに」

「魔法学園は全国民が生まれもった魔力を暴発させない訓練で通う義務があるけど、それは駆逐部隊でできるから」


いきなり仲間の女が現れた。


「メイシス、久しぶりだな」

「本日帰還しました隊長!」

「あのな、今日は暇か?」

「いえ、友達とショッピングなので」


メイシスという部下は去った。


「きいてくださいグラビくん、隊長ってメイシスちゃんのこと好きなんですよ~」

「へー」

「貴様!」


女子が断る際に使う友達とショッピングは、大抵がカレピとのデートだと前に妹から聞いたな。


「まあご愁傷さまです」

「なにがだ。君がそうなるところだったという話か?」

「まあ、ところであの、薄紫髪の女の子を知りませんか」

「よんだ?」


いきなり背後に抱きつかれた。


「うわああああ」

「あたしを呼んだでしょマイスイートハニー」


やはり夢に出てきたのは、幼い頃に結婚の約束をしたのはこの子だ。


「こらこら、チユちゃん怪我人なんだからはなれなさ~い」

「邪魔しないでよ~飄々ソス!」

「あらやだ口悪い。てかそれ言いづら~」

「で、非常に聞きづらいが入るのか?」

「入ります」



「ねー彼、若いよね逆ナンしようかな」

「新しく入ったんだって、ちなみに彼女持ちみたい」

「えー彼女ってどうせブスなクラスメイトっしょ」

「ほら、あのナオリ・チユよ」

「えーあいつかよ、顔だけ女じゃんムカつく!!」


めっちゃ悪口言われてるが、彼女はなぜ注意にいかないんだろう。


「ああいうやつらムカつかないの?」

「そりゃムカつくし、あたしのほうが権力あるけどさ、そういうの振りかざすのって悪役のやることじゃない?」


――ギャルっぽい髪してるのにまともな事いってる。

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