普通 一話 覚醒前日
「皆さん夏休み前に明日テストがありますよ」
「えー」
もうすぐ夏休みだ。
特にやることはないが夏の間に可愛い彼女を作りたいと思う。
「波路馬くん!居眠りしない!」
大変だ担任の先生に居眠りがバレてしまった。
先生はただの公立高校にいる筈がないほど、つまるところグラビアアイドル並みの美人だ。
しかし先生のような美女を彼女にしたいわけではない。
作るなら年下がいい。
危うく教室内でニヤケそうになるのをこらえながら
「今日もつまらない一日だったな」
窓を眺めてクールな一匹狼キャラを気取った。
「そんなことより明日のテストどうすんだよ~」
飽きれながら声をかけるのはシュウ、友人の久遠嵩のである。
こいつは友人というより悪友のような存在。
「夏休みは彼女を作るチャンスだな!」
自称顔は普通なのにモテない系らしい。
「はっ」
「どうせお前もオレと同じこと考えてたろ先生美人だなーとか」
「俺は年上趣味はないんだよ」
「じゃあ夏休みに彼女を作ろうと企んだのは認めるんだな」
「ちっ…認めるしかないようだな」
「早く家に帰らないのか~明日のテストで赤点とったら夏休みは補修で消えるぞ~」
「お前こそ勉強大丈夫かよ?」
「俺はどうもしないよ?お前のほうがバカっぽいし赤点心配だな~」
「赤点は一度もとってねえぞ!」
「明日とるかもな」
「小学生に戻りてぇよテストより校長先生の長話のほうがマシだよ」
「それもどうかとおもうが」
「ねえ二人とも帰宅部なんだよね?アタシ今日部活休みなんだ~ひさしぶりに一緒に帰らない?」
こいつは幼馴染みのカズネだ。
「部活って何部だ?」
「弓道部だよ言わなかった?」
「悪い。撞球部と勘違いしてた」
「ドウキュウ、キュウドウ…たしかに似てるな!」
「無理して笑わなくてもいいんだぜ?」
気を使わなそうな奴に気を使われて倍恥ずかしくなった。
「ねえあれ」
カズネが指を指す方向には何もない。
「なんだ?」
「これ使って」
双眼鏡を借りてみると小さく動く人が見える。
「空の上をビュンビュン飛んでバトル…少年漫画で見た場面だな」
「待てよ…俺達は普通の高校生の筈だ」
「そっそうだね!」
「Help me!」
薄めの金髪で白いワンピースの少女は必死に俺にかけよる。
鳩尾に頭が直撃して苦しい。
「なのになぜ目の前にラノベにありがちな美少女がいるんだ?」
「芦夜、よかったな美少女が助けてだってさ?」
「あー美少女ってか幼女?」
「少女じゃねえか?小学生くらいだし」
「俺は芦夜波路馬キミの名前は?」
「ティティ…」
フランス人形のような大きな青い目をした少女はおそるおそる名乗る。
「ガチの外人だな交番に届けたほうがいい」
会話さえできれば外国人の彼女でも問題ないだろう。
「くそ…英語習っとくんだった」
「小学生を彼女にする気か?いくらなんでも…」
「お前が未亡人の婆さん連れて町を出歩いてたときの俺の気持ちわかるか?」
「いやー金髪美少女を彼女に出来るなんてうらやましーなー」
「ところでさっきのやつどこ行ったんだ?」
「カズネもいねえな」
「一人で先に帰ったんじゃねえの」
「あ、幼馴染み属性特有の焼きもちだろ」
「ないな」