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かいちょう!  作者: へろ
8/9

八話

「あの、本当に大丈夫なんですか?」


「ん?ああ、もう全然平気、ほら。」


登校中に現れたモブキャラを倒し再び学校へ向かう僕に、心配そうに声をかける美少女。

美少女を悲しませるのは僕の主義に反する。

大げさな包帯やギブスを全部取り払い平気なことをアピールする。


「もちろんまだ肩を貸してくれるって言うならそれは全然ウエルカムなんだけど。」


「それはお断りします。」


にっこりと微笑む杏ちゃん。

べぇ、と舌を出して駆けて行ってしまった。


            ◇


「あー、かいちょー、おはよー」


「おはよう、林檎」


教室に入ると、元気に挨拶してくる美幼女。


「幼女じゃないよ、高二だよ!」


「ああ、そうだったな、ほら、チョコレートあげよう」


「わぁい!」


うーん、かわいいなぁ。やはり今度の政策は打倒アグネス法案でロリを合法に…


「おはよう。」


「おはよう委員長。」


次に挨拶して来たのはこのクラスの委員長にして美少女の千歳。

長い黒髪に巨乳。


「…」


「どうした?」


挨拶するや僕の下へやってきて体のあちこちを見つめてくる。


「四階から落ちたから心配してたんだけど、平気だった見たいね。よかったわ」


うふふ、と微笑む。


「人事みたいに言うな、君が窓から僕を投げ捨てたんだ」


僕じゃなかったら間違いなく死んでたぞ。


「あなただから投げ飛ばしたのよ。でもまさか昨日の今日で怪我が完治してるなんてすごいわね、さすが主人公。」


キーンコーンカーンコーンと予鈴が鳴る。


「ほら、もう席に着きなさい、会長さん」


うふふ、とステキすぎる微笑みを残して委員長はとっとと自分の席についてしまった。

しかたない、僕も席に着くとするか。


「あれ?」


みなれた自分の席。

その上に見慣れない物体が突き刺さっている。

机の表面はナイフの傷だらけだ。

死ねとかロリコンとか書かれている。


「…ナイフ?」


おいおい、なんのいじめだよ、これ!机の上にナイフつきたてるなんてわけがわからねえよ!

第一僕はロリコンじゃねえよ!


「あ、そうだ、さっき知らない子がきてかいちょうのつきえに差して行ってたよ。」


そんな大事すぐいえよ!なに日常茶飯事みたいな風にいってるんだよ!


「えー。だってにちじょうちゃはんめしじゃない」


…それもそうか。

生徒会長という役職上、僕を狙う敵は後を立たないからな。

前生徒会長は最初の一月ほどで敵対者が現れなくなったそうだけど、僕のほうはいつまでも敵対者がいなくならない。

いったいなぜなんだか。


「あははー、だってかいちょー支持率ひくいし」


前の生徒会長の支持率99.9%ってのが異常だっただけだよ!あんな完璧超人と一緒にするな。


「ところで、これ差していったやつは美少女?それ以外?」


机の上のナイフを指差す。

それ以外だったらただでおかないところだ。


「うーんとね、林檎チョコたべちゃったの」


えへへ、とはにかむ林檎。


「はいはい、あめちゃんあげましょうね。」


こいつ、お菓子をねだる方法をみにつけやがったな。


「わぁい、ありがとう、かいちょー。いただきます、ぱくん♪」


かわい~~~!


「えへへ、おいしかった、じゃあ林檎席に戻るね」


「ちょっとまて、まだ話し聞いてないぞ」


「あ、そうだったね~。えーっとね、美少女だったよ。全身真っ黒けの」


「美少女か。ふうん」


僕は机に刺さったナイフを抜き取る。


「あ~、かいちょ~なんか楽しそう」


「そうかい?」


そして、僕は机にナイフでつけられた傷をみる。

死ねとかロリコン以外に、かかれた文字。


『天にもっとも近い場所で待つ』


「こんなに積極的にデートのお誘いだぜ、そりゃ楽しくもなるさ」


      ◇


天に最も近い場所。

この学校でもっとも天。つまり高い場所、それは校舎の横にたつ、巨大な時計塔だろう。

その高さは4階建ての校舎よりさらに上で、階数でいうなら六階くらいはあるだろう。

10年位前の生徒会長が、とあるギャルゲーにはまって建てたらしい。

よくしらないがなんでも卒業式の日に鐘の音が鳴り響く中で告白されたら永遠に幸せになるとか。

ちなみに僕は八重さん派である。


「よ、またせたね。」


時計台の最上階、通常生徒が立ち入ることを許されていない、鐘の設置された部屋。

窓ガラスなどは設置されておらず、さわやかな風が吹き抜けている。

ここから見える景色はすばらしい。

はるか遠くまで見渡せる、この眺望。そして、


「《シルフィード》が言っているわ…」


そこに、巨大な鎌を構えた、長髪の黒い服装の少女。うーん絵になるな。

それにしても髪の毛長いな、委員長よりもさらに長い。床につきそうだ。


「あなたはここで死ぬ。と」


そして、僕に向かって鎌を突き出す。

少女の制服、たしか近くにある私立中学の制服だな。ミッション系のお嬢様学校だったと記憶している。

中学生なら僕の生徒会長の座をねらってのことではないんだろうけれど。


「うーん、僕としては君みたいな美少女に狙われるいわれはないんだけどな。どこかであったっけ?」


「私の名前は。黒き死神。《黙示録の女神アポカリプスカリス》ハツカ。」


「ず、ずいぶんと長い名前だね。」


あぽかりぷすかりす?


「…ぽ」


はずかしいのかよ!


「…ハツカちゃんでいい」


意外とポリシーねえな。しかもちゃんつけで呼ぶことを要求してくるとは。


「おーけーわかった、ハツネちゃん。君みたいな女の子がそんな鎌を振り回すのは危ない、とりあえずそれをおいて話をしようじゃないか。」


「…兄の仇、とらせてもらう。」


「兄?」


うーん、まったく覚えが無い。


「…忘れたとは言わせない。」


今朝のモブキャラの妹だったり?いや、遺伝子的ににてないしな。


「VIPハイスクール《死天王デススクウェア》が一人、《日記帳の錦織ダイヤリーニッキー》が私の兄。」


ああ、たこ焼きのときにちらっとでてきた雑魚キャラか。

あいつこんな可愛い妹がいたのか、もう少し優しくしてやればよかった。


「でもあいつのほうから喧嘩売ってきたんだ、いわば正当防衛だぜ」


「嘘。兄はそんな人じゃない。」


そんなこといわれてもなあ


「兄は、私のためにたこ焼きを買いに行って。そして帰ってこなかった。」


「いや別に殺してねえし!」


おもいっきりぶん殴りはしたけどさ。

てかあいつ妹にパシらされてたこ焼き買いに来てたのか。


「出血多量で病院に運ばれたの。」


「はあ?」


「女の子とすごい可愛い幼女がタコで触手プレイ、とうわごとのように行っていたわ。」


ああ、あれか。僕も興奮しすぎてほかのお客さんの眼があることをすっかり忘れてたけど。

うーん、あれはエロかった!

多分単行本化されたら挿絵が挿入されるのは間違いないね。


「たこ焼きの恨み。死んでもらう」


兄の仇じゃなかったっけ。


「問答無用!」


ハツカちゃんが手にした巨大な鎌を振り下ろす。


「うわ、あぶね!」


「よくかわしたわね。でも次はそうは行かない。」


そういうと、彼女は鎌を目の前に構え、なにやらつぶやき始める。


「汚れし魂よ、肉体の楔を解き放ち、永劫のときを巡りし地獄へ落ちろ!《螺旋地獄スパイラルヘル》!」


鎌を目の前で振り回し。それをおもいっきり振り下ろす。

それを身をよじってかわす。

振り切ったハツカちゃんは隙だらけ。

とりあえず鎌をとりあげるか。


「って、うわぁっ」


背中を向けた彼女の髪の毛に手が触れた瞬間、血が噴出した。

髪の毛の中にかみそりしこんでるのかよ。

そして、髪の毛が通り過ぎると再び彼女の鎌が襲う。

なるほど螺旋地獄スパイラルヘル、か。

鎌と髪の毛を振り回しながら回転することで隙をなくしてるのか。

てか危ないな、自分の体切ったらどうするんだ。

徐々に部屋の隅に追い詰められる。

逃げ場が無い。


「…これで終わり」


彼女の鎌が迫る。


「うわぁ!…なんてね」


「え?」


部屋の隅においつめられたのはねらってのことさ。

この隅に収まれば、横回転する鎌は当然のごとく。

壁に阻まれる!


「さて、どうしてやろうか…って!?」


あれ?


彼女の鎌は、壁をまったくものともせず、僕に襲い掛かってきた。

かろうじて地面に伏せかわす。


「私の鎌は特別製。地獄の炎で鍛えられたの。壁なんか簡単に切り裂くわ。」


まじかよ。地獄とかすげえな。


「ぽ」


恥ずかしいのかよ。

まあ、そろそろお遊びはオワリにしようかな。


「え?」


鎌の次に襲い掛かってくる髪の毛。それを回避する方法は簡単。


「きゃぁぁ」


背中を向ける前に、彼女に密着する!

あ、意外とおっぱいでかい。

最近の中学生はすげえな。

密着して回転を止めたら鎌を奪うのも楽々。


「そ、そんな」


女子中学生に暴力を振るったりしたらアグネスに怒られるからな。

怪我させないように無力化するのは大変だったぜ。

ちなみに抱きしめてるみたいな格好になったのは彼女を止める為で、けしてやましい感情はないことを補足しておこう。


「…」


「たこ焼きについては悪かったね、今度おごるから許してよ。なんなら今日の放課後いくかい?」


「…」


ん?なんか様子が変だぞ


「きゃあああああああああああああああああ」


すさまじい絶叫。


「な、なんだ!?」


「お、男が触った!あああ!穢れる!汚される!」


男に免疫あんまりないのかな。兄貴がいるってのに。


「と、とりあえず落ち着こうか」


「いやああああ!妊娠する!やめてえええ!」


さわったくらいでするか!どんなけ免疫無いんだ!


「妊娠ってのは男と女がだな…」


「会長?!いったいなにが…」


説明しようとしたとき、扉を開いて委員長が飛び込んできた。


「セックスを…あ、委員長、いいところに。」


僕を心配してきてくれたのか。


「いやああ、妊娠いやあああ!」


「…大体事情はわかったわ♪」


「え?」


まさか。

ちょっとまて、今日にかぎっては本当に何もしてない!


「よいしょ」


委員長の可愛い掛け声とともに、僕は再び投げ飛ばされた。時計台の外に。


「この高さは!さすがにまずいいいいいいいい」


その瞬間、僕は風になった。









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