一話
「先輩、私のパンツを見てくれませんか?」
それは突然の出来事だった。
早朝、学校へ向かう途中の僕の前に現れた少女から発せられた一言。
「え、もっかいいって?」
「あの、先輩、私のパンツを見てくれませんか?」
「よくきこえなかった、もっかい。」
聞き間違いだったら失礼だもんな。
「あの、先輩、私のパンツ…」
「もっかい!」
「あの、先輩、私のパンツ…」
ふう、可愛い少女から発せられるパンツという言葉、しっかり堪能した。
「さてと。あいにく、そんな色仕掛けにひっかかる僕じゃないぜ」
「こいつ腐れ外道だ!」
「ん、何か言った?」
「いえ、何にも。多分()と「」を使い間違えただけです」
「器用なことする子だな。で、用件は何だっけ」
「またそこからなの!?あの、よかったら私のパンツを…」
甘い、甘すぎるぜ。白昼堂々、そんな夢みたいなことを言ってくる少女がいるだろうか。否。ありえない。
「一体何が目的だ!?」
最大限にかっこいい顔を作りそう発言した…。
はずだった。
だが実際発せられた言葉は。
「え、本当に?まじで?見せて見せてw」
だった。
健全な男子高校生に理性を保てなんていうのは酷だろう。
「それじゃあ、しっかり焼き付けてくださいね、私のパンツ。」
そういい、少女はスカートをつかみ。
「このドスケベ野郎!」
僕の顔面にハイキックをお見舞いした。
「ば、ばかな!?」
「ばかはあんただ!こんな見え見えの策にひっかかるなんt」
「スパッツだと!?てめえ!純情な僕をだましたな!」
「そこなの!?」
「いいぜ、久しぶりにキレちまったよ。表に出ろ!」
「いえ、ここ道路ですから。表ですから!」
冒頭からありえない展開だと読者の人は思うだろう。だが、僕の人生においてこんなのは日常茶飯事だ。
「とりあえずスパッツをぬげ!」
「やめてよ変態!」
僕の通う高校は、武道偏重の偏った学校で。
「ひひひ、捕まえたぞ!さあ脱げ!」
「いやああん、ママぁぁぁ」
武力。ようは腕っ節が全てを決めるという、漫画かラノベの中にしか存在しないような。
それでいて漫画やらラノベの中ならごくごくありふれた設定の、学校なのだ。
「あーっと、間違ってパンツまでつかんじまった!」
「いやー!いやー!おねがい、パンツだけはー!!」
その学校の最高権力者である、生徒会長。全校生徒の中でトップ。
それを決めるのは選挙ではなく、戦闘。実力のある者が、その座につくことが許される。
ありとあらゆる物事の決定権を有する圧倒的な存在。
「ほーらお尻が丸出し…ぐは!ちょ、暴れるな!落ち着け!てかマジで痛い!顔は蹴るな!」
「キャーキャーキャーーー」
そしてその最高権力者、生徒会長に戦いを挑むものは後を絶たない。
「わかった、話をしよう、とりあえずスパッツ、な、スパッツだけぬごう。そうしたらパンツは脱がさない、オーケー?」
「ゼェゼェ…。ほんとう?」
「生徒会長はうそなんかつかないよ、ね?」
第114代生徒会長。それが僕の肩書きだ。
「は、恥ずかしい…」
スカートの中に手を突っ込みスパッツをぬぐ少女。
「よし、ゆっくりそれを投げろ。」
「…」
少女は無言でそれを僕に投げつける。
「よし、確かにうけとった。」
「こ、これで許してくれるんですか?」
少女は目に涙を浮かべる。
「じゃあ次はスカートをゆっくりもちあげるんだ」
「やばいこいつ本気で腐れ外道だ」
「君みたいな実力で。よくもまあ僕に戦いを挑んできたもんだね。そんなに生徒会長になりたかったのかい。」
少女がスカートをまくりあげやすいように僕は話題を振ってやった。
「あ、あなたが今打ち出してる政策!それを阻止したかったの!あんな酷い政策許せるわけないわ!」
「なんだっけ?」
普段からまじめに生徒会長としての職務を果たしている僕である。
僕が進めている政策は数え切れないほどあるのだ。
「とぼけないで!全女子生徒は体育の時間ブルマ着用法のことよ!」
「何を言ってるんだ、あの政策は普段はまとまりのない我が高の生徒も50%が賛成してくれたんだぞ」
「それって全部男子生徒じゃない!」
我が校の男女比率、5対5.
「ところで、スカートはまだめくれないのかい」
「くっ!わかったわよ…」
ついに観念してスカートをめくろうとする少女。
「あの、恥ずかしいから、もっと顔を近づけてもらえますか?」
「おお、いいとも」
僕が少女のスカートに顔を近づけたそのとき。
「死ねえ、腐れ外道!」
彼女のハイキックが再び僕の顔面を捉えた。
「な、なにぃ!」
「なんども同じ手にひっかりやがって!このドスケベ会長!」
「ば、ばかなっ!ブルマだと!?」
こいつスパッツの下にブルマを履いていやがった。
「やっぱりそこなの!?」
「そんなに重ね着したら蒸れるぞ!」
スカートの下のブルマはわりとアリなんだけどね。
「そこなんだ!?」
「すぐ脱げ!君の体が心配だ!」
「キャーーー」
今日もいつもと同じ、平凡な日常が始まった。