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その婚約破棄は困ります  作者: 葵


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アンリエッタの憂鬱

久しぶりの投稿です。

よろしくお願いいたします。


うららかな午後のエゼルキナ侯爵邸に、王宮からの使者が到着した。

エゼルキナ侯爵は宰相の役にあり、王宮からの便り自体は珍しいものではない。


「王宮より、アンリエッタお嬢様にお手紙が届いてございます」


執事が持ってきたのは王子ロドニーからの手紙だった。

王宮からアンリエッタに手紙を出してくる主は大概決まっている。



王子とは幼馴染で、アンリエッタが幼い頃から宰相の父について王城に行くこともよくあった。

そこで年齢の近い王子と遊ぶことがよくあった。

活発な王子と面倒見のいいアンリエッタはすぐに遊び友達としてすぐに仲良くなり、対等な立場の友人がなかなかできない王子にとってはアンリエッタは安心して交流できる相手になった。


決して恋愛的な関係ではなく、一緒に居て楽しい遊び友達の域を出ない関係だった。

だからこそ社交界デビューを果たして婚約者を選出する時期には、アンリエッタもロドニーもそれぞれに婚約者が決められた。


アンリエッタはバスティアン公爵家の嫡男、エルネストと婚約を結んだ。

バスティアン公爵家は外交を担っている。

宰相家の娘として外国語をしっかり教育されたアンリエッタは公爵家の嫡男には理想の伴侶と考えられた。

それ以上にエルネストはアンリエッタを気に入り、アンリエッタも洗練されて包容力のあるエルネストに惹かれた。


このところ、頻繁にロドニーからの手紙が届く。

封を切る前にアンリエッタは溜息を溢した。


子供の頃の感覚でいるのか、早い話が「あ~そ~ぼ~」という類の誘いの手紙がしょっちゅう届く。

ただ、最近はその頻度も増して、手紙の内容も婚約者の愚痴が多い。


ロドニー王子の婚約者はアンデル公爵家のメルローサ様。

才色兼備と噂の令嬢だ。

彼女ならばとどの貴族家からも反対が出ない程のご令嬢。


正直なところ、「あの」ロドニー王子には勿体ないくらいの方なのに、何の不満があるというのか。

それになんでそんなことをわざわざアンリエッタに言ってくるのか。

ただでさえ登城する貴族達には、宰相家の娘が第一王子と仲が良いことは以前から知られている。

お互いに婚約者がいる身なのに、こう頻繁に王子の方から連絡を寄越してくるのはあらぬ疑いを持たれやすい。


「ロドニー殿下も悪い人ではないのよね。私とも友達だったわけだし」


ただ、面倒見のいいアンリエッタにとっては、ロドニーは危なっかしい弟のように感じることは多々あった。

だからこうして泣き言を言ってくるのは単なる甘えたがりの為せる業だと薄々思っている。


午後には婚約者のエルネストが侯爵家にやってくる。

毎週交流の為に開かれるお茶会にやってくるのだ。


楽しい時間が待っているというのに、招かざる便りのせいで少しアンリエッタの心が冷えてしまった。

その心をエルネストに温めてもらいたいと、午後に思いを馳せた。



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