コスプレ始めます!
「ごめん、別れよう」
「え...?」
「ちょっと待って、なんでよ?」
「だってお前...」
「ヲタクなんだろ?」
「そ、そうだけど、だからってなんで...。」
「正直...。」
「気持ち悪い」
「...っっっ!!」
寝ていた体をガバッと起こす。
「また、。」
ヲタバレが原因で彼氏からフラれ1週間、毎朝同じ夢を見て起きる。
「ほんと、くだらない。」
そう笑って言いながらも涙をポツリポツリと落とす。
「あー、月曜日か、憂鬱だなぁ。」
涙をふいて、背伸びをし、ベッドから出る。
「ま、頑張りますか!」
一軒家の2階の部屋から出て、下のリビングに向かうと、母と父がいた。
「あ、起きたー?」
「朝ごはん食べちゃいなー」
母はそう言って視線を食卓から自身の手元へと戻す。
父は無言でテレビの天気予報をみていた。
「お父さん、おはよう。」
「...あぁ。」
「今日は雨が降るそうだ、傘を忘れずに持って行きなさい」
父はテレビをみながらそう言った。
「わかった、ありがと。」
「ねぇ、あんた、まだ落ち込んでるの?」
母は呆れたように聞いてくる。
「もー、うるさいなぁ、別にいいでしょ、それだけあいつが好きだったんだから。」
「だからって、落ち込んだってしょうがないでしょう、さっさと忘れなさいよ。」
「はいはい、じゃ、行ってきまーす!」
私はそう言い、玄関へ向かう。
「あぁ、そうだ、あんた、今日もバイト?」
「うん」
「そう、頑張んなさい。せっかくいいところで働いているんだから。」
「うん。じゃ。」
玄関の鍵をガチャりと閉める。
自転車通学のため、ガレージにある自転車に乗り、自分の家の表札の前を、スっと通る。
表札に書いてある文字は『海川』。私の苗字だ、ちなみに下の名前は桜。
家から学校までは自転車で10分程で着く。
今日もそのぐらいで着いた。
「あ、桜、おはよー!」
教室へ入ると友達数人に声をかけられた。
「ねぇ、桜、昨日の『推しドラ』みた!?」
「みたみた、ルネーノ様マジ強かったよね!」
「それな!」
「私敵キャラだけどルネーノ様マジ好き!ちゃんとルイン達と戦う理由があって、何よりビジュが良い!」
「ほんとほんと!!いやー、桜はやっぱりガチ勢だねぇ。それを勉強に生かせれば...。」
「いやいや、アニメと勉強は関係ないでしょー。」
「そんなことないよ、アニメから学べる事だってあるんだから。」
「体術とか?」
「なわけあるかいっ!」
『推しドラ』とは、『推しのドラゴンが可愛すぎる』というアニメ名の略だ。
主人公ルインはドラゴンをその身に宿していて、人型ではありながらも、ウロコ、ツノ、しっぽ、そしてピンク色の戦闘服を着ている。ルインの中に入っているドラゴンは、ルルルという、かわいいチビドラゴンだ。だがその力は絶大で、その力を狙ってやってくるのは、私の推し、ルネーノ様。手下を使ってルルルを奪いに来るが、ルインとその仲間達により毎回撤退させられている。
ルネーノ様がルルルを狙うのは、ルルルの能力である、蘇らせる魔法だ。
ルネーノ様はかつて自分の妹を病気で亡くしており、その妹を蘇らせたいという、儚い思いがあるのだ。
だがその能力を使うには、生贄が1人必要だった。
そこでルネーノ様は一般人を毎回生贄に使おうとする。
ルイン達は「そんなの間違ってる!」と言って毎回戦うのだ。
「私あの、ルネーノ様の、紫色のワンピースが好き!特にイヤリングに付いている、マゼンダ色の宝石!」
「あんた、ほんとルネーノ様のガチ勢じゃん。」
「え?当たり前なんだけど?」
私は真顔で言う。
「ガチじゃん。」
「あーあ、あんな服、私も着てみたいなぁ。」
「作ればいいじゃん。」
「え?」
「だから、作ればいいんだよ、コ、ス、プ、レ、すれば?」
「コスプレ、コスプレかぁ。」
私は机に突っ伏して言った。
「なに?嫌なの?」
友達は不思議そうな顔をする。
「だって、アイツが...。」
「まだ、気にしてんのか、あんなやつはやく忘れなよ!」
「それができたらいいのにね。」
「あーっ!!もうっ!いい?桜、こっちむいて!」
私は顔を上げ、友達を見る。
「好きな物を愛せるのは、自分だけだよ!他のやつなんか眼中に入れるな!好きな物に一直線でいろ!」
びっくりして、「う、うん。わかった。」
「よし、それでいい!」
ー放課後ー
私はバイト先に行く道中で、コスプレの本を買った。
「そうだよね、私の好きな物に、他のやつなんか眼中に入れなくていい!むしろ私をフッたあいつに後悔させてやる!よし、やるぞ!私は私の道を行く!コスプレ、始めるぞ!!」




