罰
第6章 罰
盤上のすべての駒が配置された。
変化の時が来た。
一手ごとが判決。
たった一度の失敗が命取り。
試みは一度きり。
二度目のチャンスはない。
道はひとつ――最後まで進むのみ。
アルヴェンダル――ヴァルミーリアの心臓。
伝説が生まれ、希望が砕ける街。
暖かい街路は安らぎの幻想を与える。
だが、その裏側には、暗く冷たい、誰もを壊す力が潜んでいる。
旅路は長かった。
メイラはカイレンを首都まで伴った。
アルヴェンダルまでは一時間足らず。
彼らは「ガルンドヴィーズ」に乗っていた――囚人を運ぶ鋼鉄の輸送機。
快適さのためではなく、従順を目的に作られた機械。
錬金術の燃料が内部で鈍く唸る。
この道には戻りはない。
カイレンは黙っていた。
街で何が待っているか、知らない。
ましてや、何かを期待すべきかどうかなど、なおさら。
――なに、黙って。怖いのか?――
メイラは隣に座り、片足を組んで、まるで普通の旅のように振る舞った。首都への護送だというのに。
内部は狭く、まるで金属の棺のよう。
冷たい壁が服の上から背中に押し付ける。
床がかすかに振動する。
ガルンドヴィーズは滑らかに進む。
だが、その滑らかさには安心感はない――ただ避けられぬ運命の感覚だけ。
どこか奥で歯車が軋む音。
鈍く、重く。
金属そのものが圧力に呻いているかのよう。
カイレンはゆっくりとメイラに視線を向けた。
――なに?――彼はかすれた声で言った。――怖がることなんてあるのか?
――えっと……――メイラは軽く肩をすくめ、指を首に滑らせた。――例えば、首を刎ねられるかもしれないってこと。
カイレンはかすかに笑った。喜びのない笑み。
――肝心なのは――速く、痛みなく――
メイラは鼻で笑った。
――やっぱりね、あなたは頭に問題があるって。
冗談で言ったつもりだった。
だが視線は少し長く、彼に留まった。
カイレンは答えなかった。
気にしていないのか、あるいは信じたいだけなのか。
――せめて笑ってみて――メイラは肩を軽く押した。
彼は唇をわずかに動かすだけ。笑顔は浮かばなかった。
――できない――静かに言った。――リヴァンと共に経験したことの後では……
沈黙。
視線は動かず、ほとんど虚ろ。
リヴァンが座っていた方向を見つめる。
――ねえ――メイラが身を乗り出した。――そんな顔しないで。まだ気が狂ってると思われちゃうよ。
半分は冗談。半分は真実。
――気にするな。あの女を見ろ――彼女には情けがない――リヴァンが低く言った。
カイレンは瞬きした。
まるで自分の思考の深みから戻ったかのように。
――アルヴェンダルに到着――護衛の一人がメイラに告げた。
彼女は頷き、再びカイレンを見た。
――心配しないで――小声で言った。――私たちは皆、間違うものよ。そばにいるから。
――感謝します……僕とリヴァンは――カイレンはかすかに答えた。
メイラは彼に視線を留める。
その目には痛みと、本当に助けたいという想いが混ざっていた――完全に救えなくても、決して手を放さない眼差し。
ガルンドヴィーズの機構が減速する。
ハッチが開くと、轟音が車内に飛び込む。
アルヴェンダルはざわめいていた。
生きている。落ち着かず。人で溢れ――巣箱のように、誰もが自分の運命を追い、他人の悲劇に気付かない。
街にとっては日常。
カイレンにとっては逃れられぬ始まり。
石の五の間。
コンカラヴが誰が正しいかを決める場所。
まだ正義を信じようとする場所。
…だが、ここに正義は存在したのか?
もう分からなかった。
広間を進む。
高く冷たい柱が影に消えてそびえる。
石は重く――身体ではなく、思考を圧す。
頭の中は空虚。
恐れも、希望もない。
リヴァン……どこに消えた?なぜ今?
――こっちだ――メイラが静かに肩に触れ、前を指した。
返事はせず、ただ一歩を踏み出す。
そして中へ。
中には彼らが座っていた。
コンカラヴの裁判官たち。
席は半円を描き、まるで脱出不能の罠のように広間を囲む。
一人一人は個別だが、揃えば一つ。
光は顔を隠し――輪郭と冷たい目だけを浮かび上がらせる。
暗い衣服は影に溶け込む。
まるで人間ではなく、広間そのものの一部。
――これが、私の運命を決める者たち――
…でも、どうでもいい。
終わらせよう。
たとえ死であろうとも、受け入れる。
――名誉あるコンカラヴ――メイラが前に進み、声を震わせながらも毅然と告げる。――事件1.417、シヴォヴェルフ村。この少年は逃亡首領の現場で発見されました。証拠の大半は彼の関与を示していますが、ある状況下では――
――十分だ――誰かが遮る。
メイラは黙り、続けたくても続けられない。
――私たちが判断する――冷たい声が影から響く。
――しかし――名誉ある――
――この事件に決定は一つ――別の声。――少年は罰を受ける。
微かに笑った。
もちろんだ。
他にありえない。
――彼の罰は浄化となる――さらに別の声。――彼は「不可逆の魂斬り」を経験する。
広間は静寂に包まれる。
空気さえ止まった。
――できません!――メイラが強く前に出る。――これはあまりにも過酷な罰です!不可逆は――
――魂を――遮られる。――決定は既に下った。
闇を見つめる。
瞬きせず、何も感じない。
不可逆の魂斬り…
こうして全ては終わるのか。
メイラが振り返る。
その瞳に痛みと――何かが。
救いたいという想い。
手遅れでも。
言葉は出ず。
すべては定められているように思えた。
冷たく無慈悲なコンカラヴの決定は揺るがない。
誰も、何も、変えられない。
彼は儀式の場へ連れて行かれた。
無限に続く暗黒の底へと降りるような場所。
一歩ごとに骨の奥まで冷気が貫く。
深く、ささやきが聞こえる。
すでに不可逆の魂斬りを体験した者たちの声。
――中央へ!――命令が響いた。
カイレンは丸いプラットフォームの上に立つ。
周囲は暗黒の断崖。
プラットフォームは空虚の上に浮かんでいる。
空気さえ重く、恐怖に満ちているようだった。
メイラは傍らに立つ。沈黙。
指先は武器を握る。
人差し指が引き金にかすかに触れる。
彼女には見ることしかできない。
――始めろ…不可逆の魂斬り。ハジャールを放て。
コンカラヴの声は冷たく、無慈悲。
カイレンの前で、鉄の扉が轟音とともに開く。
呪われたように唸る。
その奥――暗闇。
冷気。
死。
カイレンは動かず立つ。
胸の中は静寂。
頭の中には記憶だけ。
リヴァン。
祖父。
喪失。痛み。
恐怖が細胞の隅々まで入り込む。
…それでも心は空っぽだった。
まるで、自分自身が死を待っているかのよう。
プラットフォームは静止。
空気は濃密。
まるで死そのものが胸に手を置いたかのよう。
暗闇から現れたのは怪物――ハジャール。
巨大でねじれた存在。
体は膨れ上がったカエルのよう。
背にはコウモリのような膜状の翼。
皮膚はぬめりで光る。
口からは黒い液体が垂れる。
目は丸く、異常に大きい。
知性の光はない――
…あるいはあまりにも鋭い知性か。
彼はじっと見つめる。
冷気が背を走る。
《…死にたくないな…》
久しぶりに、心臓が鈍く胸を打った。
死にたくない。
くそ…リヴァン…お前はどこだ?
…だが、何ができたというのか?
鋭い音――鞭のように空気を裂く。
ハジャールが襲いかかる。
巨大な前脚が異常な速さで振り下ろされる。
カイレンはかろうじてかわす。
衝撃は肩をかすめ、プラットフォームの端へ押しやられる。
――避けるな!――裁判官の声が響く。――罰を受けろ!
カイレンは頭を上げる。
その目はもはや虚ろではない。
――なに…?――かすれた声で笑う。――まだ抱きしめるか?お前たちの裁きも、腐っているのはお前らと同じだ。
広間は轟音に包まれる。
だがカイレンはもはや聞いていなかった。
《考えろ。考えろ、くそ!》
ハジャールは体を回転させる。
胸を膨らませ、翼を広げる。
勝てるか?
本気か?
いや、不可能だ。
なら――死ぬのか?
視線は再び虚無に落ちる。
――俺は…死にたくない…
その思いは恐怖よりも強く胸を打つ。
心を締め付け、肋骨を内側から引き裂く。
全細胞に浸透する。
ハジャールが体をこわばらせる。
メイラは銃を握る。
指先は震える。
あと一瞬――命令を破り、コンカラヴに逆らう。
――カイレン…――彼女が囁く。
そして怪物はその場から飛び出した。
口を大きく開く。
濃い暗緑色の塵が吹き出す。
毒霧がプラットフォームを覆う。
空気は粘り、重く、濁る。
シルエットは緑の靄の中に消えた。
観衆は息を呑む。
メイラは一歩踏み出し、止まる。
カイレンがまだ立っているか、誰もわからない。
《倒れるな…今じゃない…》
心臓は激しく打つ。
血がこめかみに響く。
体は逃げ出したがる。
ハジャールは動く。
その一歩一歩が終わりを告げる。
これが判決。
避けられぬ、恐ろしい。
カイレンは立ち続ける。
一人。
それでも…倒れない。
体は硬直。
目は暗く沈む。
内なる声が叫ぶ:
《諦めるな…》




