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輝きの領域   作者: Idar
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受け入れ

第2章 受け入れ

危険が抽象的なものではなく、現実として目の前に現れたとき――

人の頭の中では、何が起こるのだろうか。

最初に意識を切り裂くのは、恐怖か?

後悔か?

逃げたいという衝動か?

それとも……虚無?

そんな瞬間に、正しい選択など存在するのだろうか。

もしあるのだとしたら――それが本当に正しかったと、どうやって分かる?

俺の頭の中は、完全な混乱だった。

思考は重なり合い、岩に打ちつけられる波のように、静寂を一切許さない。

恐怖はどこにでもあった。粘つき、重く、すべてを覆い尽くす。

胸を締めつけ、呼吸を奪い、心臓を本来よりも速く打たせる。

「しっかりしろ!」

叫び声が騒音を切り裂いた。

誰の声だったのかは分からない。

耳鳴りがひどく、まるで頭の中で誰かが鐘を打ち鳴らしているようだった。

周囲の景色は揺れ、滲み、空気は濃く、狭く感じられた――まるで、皆に行き渡るほどの量が残っていないかのように。

「おい……大丈夫か?」

「怖いのは当たり前だ。俺だって、正直怖い。でも――一緒にいる限り、きっと何とかなる」

声はすぐ近くにあった。

はっきりしていて、現実的で――確かだった。

レヴァン。

俺は彼を見た。

その手は震えていた。隠そうともしていない。

だが、その目にパニックはなかった。

あるのは、張りつめた、意地のような決意だけ。

「……ああ」

俺は深く息を吸った。

「その通りだ」

一瞬だけ、正気を取り戻した気がした。

だが――世界はすぐに、再びひっくり返った。

城壁の上から叫び声が響く。

錯乱した、引き裂かれるような、恐怖に満ちた声。

「大砲が動かない!」

村人の誰かが叫んだ。

「故障してる!」

心臓が、底へ落ちた。

胸から引き抜かれ、そのまま虚無へ投げ捨てられたかのように。

盗賊たちは、すでに壁をよじ登ってきていた。

気づいた時には、戦いは始まっていた。

突然で、容赦なく、何の前触れもなく。

脚が震える。

指は、剣の柄をかろうじて握っているだけだった。

――俺は、まだ準備ができていない。


村には衝突音と叫び声、悲鳴が響き渡っていた。

カグリムの経験と郷兵たちのおかげで、戦況は持ちこたえていた――場所によっては、こちらが優勢にさえなっていた。

カグリムは、一人で十人を相手取れる戦士だ。

そして彼の部下がいれば、百人相手でも戦える。

その姿を前にすれば、山賊たちはほとんど無力に見えた。

――ほとんど、だ。

だが、それでも勝利が保証されるわけではなかった。

俺は英雄じゃない。

そして、これからも英雄になることはない。

人生のことが頭をよぎった。

何気ない日常、ささやかな幸せの記憶。

それらは恐怖の中を切り裂くように浮かび上がり、どれもが遠く、現実味のないものに感じられた。

まるで、もう二度と戻れない別の世界の出来事のように。

「立ち止まるな!」

レヴァンの鋭い叫びが、俺を硬直から引き戻した。

「前へ出ろ!」

彼はすでに戦っていた。

迷いなく、素早く、決断に満ちた動きで。

「恐怖を感じるのは普通だ!」

戦闘の轟音の中、彼は叫び続けた。

「誰にだってある! だが恐怖は頭の中にしか存在しない! 受け入れろ!

恐怖は俺たちを止めるものじゃない――前へ押し出す力だ!」

その言葉が、俺の中の何かを揺り動かした。

新たな力の息吹が身体を駆け抜け、血管を満たしていた冷たい感覚を押し流していく。

戦いは続いていた。

そしてその時、ようやく理解した。

もしカグリムの教えがなかったら。

あの苛烈な訓練がなかったら――

俺はとっくに生きてはいなかっただろう。

剣術。

弓。

身体に染みついた、反射のような動き。

カグリムの顔はいつも厳しく、まるで石のように見えた。

だがその心は、外見が許す以上に優しかった。

経験の差で、俺たちは村の中で山賊たちを押し返していた。

しかし――城壁の上では、状況はまったく違っていた。

劣勢だった。

完全に。

攻撃の最中、俺は体勢を崩した。

ほんの一瞬――だが、それで十分だった。

敵の剣が腕を切り裂く。

痛み。

鋭く。

焼けつくように。

次の一撃が、首元へと迫ってきた。

――これが、俺の最期か?

俺は、何を成し遂げた?

何を感じている?

……何もない。

俺は、それを受け入れた。

静かに。

ほとんど無感情で。

――キィン!

敵の剣が、甲高い音を立てて弾き飛ばされた。

レヴァンだ。

「立て」

彼は力強く言った。

「休んでいる暇はない。息をしているなら――まだ戦える」

「本当に……容赦ないな、お前は……」

俺は歪んだ笑みを浮かべ、荒い息を整えた。

彼に支えられ、俺は再び立ち上がる。

そして今度は――退かなかった。

心臓は激しく鼓動し、手は震え、戦場の騒音に思考がかき乱されていた。

だが、その瞬間、俺は理解した。

恐怖は消えていない。

ただ、敵であることをやめただけだ。

それは導き手となった。

俺を前へと突き動かす存在に。

世界が軋む音を感じながら、俺は戦場へ踏み出した。

「俺たちは一緒に戦う。

永遠に。

いつだって一緒だ、兄弟」

強い言葉だった。

レヴァンの言葉。

彼の魂。

揺るがぬ勇気。

――お前は、この辺境に留まる男じゃない。

そんな考えが、ふと頭をよぎる。

もっと大きな場所のために生まれてきた。

「……ああ、その通りだ」

俺は声に出して答えた。

「俺たちの物語は、ここで終わらない」

深く息を吸い込み、俺たちは前へと飛び出した。

俺たちは獣のように戦った。

腕の痛みは、もはや意味を失っていた。

感じない。

意識の中で、たった一つだけが残る。

隣にいること。

仲間の背を守ること。

――いや、兄弟の背中を。

俺が息をしている限り、何者にも止められはしない。

少なくとも、今日だけは。

背後から、聞き覚えのある声が響いた。

カグリムとニコだ。

「その調子だ!」

カグリムは、傷ついた獣のように咆哮した。

「そのクズどもを押し返せ!」

俺は自分の目を疑った。

だが――やり遂げた。

戦いは過酷だった。

血にまみれ、容赦もなかった。

多くの負傷者。

そして……死者。

「……生きてるか?」

俺はレヴァンを見つめ、かすれた声で尋ねた。

「生きてるさ」

短い沈黙の後、彼は答えた。

「その通りだ」

俺たちは、かろうじて立っていた。

疲弊し、傷だらけで……それでも、生きている。

血と恐怖の中でこそ、人は鍛えられる。

ここで、勝利への意志が生まれる。

戦場を生き延び、立っていられたこと――

それが幸運でなくて、何だというのか。

確かに、こちらにも負傷者と犠牲は出た。

だが、山賊たちの被害は、はるかに大きかった。

カグリムは生存者を集め、捕虜を厳重に縛り上げた。

逃げ道は一切与えない。

俺は、ゆっくりと周囲を見渡した。

戦いの後に残された光景は、あまりにも惨たらしかった。

地面には、息絶えた身体が横たわっている。

冷たく、動かない。

――今朝までは、笑っていた。

冗談を言い、人生の不公平さを嘆いていたはずなのに。

なぜ、人はただ静かに、互いを傷つけずに生きられないのだろうか。

復讐は、果たして救いになるのか。

それとも痛みは増す一方で、やがては――

光に満ちた思い出さえも、すべて飲み込んでしまうのか。

俺とレヴァンは城壁の上に立ち、

カグリムが捕虜たちを尋問する様子を見下ろしていた。

「……なぜ、奴らは襲ってきたんだ?」

レヴァンが静かに尋ねる。

「愚問だな……」

俺は肩をすくめた。

「楽に稼げると思っただけだろ」

彼は振り返り、じっと俺の顔を見つめた。

「なあ……お前、耳がないぞ」

「は?」

反射的に手を上げた。

「いや、ちゃんと――」

「いや……完全じゃない。

一部、欠けてる」

「あー……」

俺は鼻で笑った。

「今さら、これ以上悪くなりゃしないさ」

ため息をつき、手を振る。

「行こう。他の連中のところへ」

カグリムは、キシレクスの頭目に激しく問い詰めていた。

「この襲撃の目的は何だ」

鋼のように硬い声。

「村の守備が完全に抜けたわけじゃないと、知らなかったはずはない。

誰が手引きした?

誰が大砲を壊した?

――名を言え!」

だが、頭目はただ笑っていた。

恐怖も、後悔もない。

あるのは、剥き出しの侮蔑だけ。

「……カグリム様」

ニコが小さな声で近づいてきた。

「スタロド村長が……」

言葉は、途中で途切れた。

「……死んだ、か」

カグリムが掠れた声で続ける。

頭目は高らかに笑った。

「ハハハ!

やっぱり、あの老いぼれはくたばったか!」

その瞬間、

カグリムとニコの表情が変わった。

最初の一撃で、頭目は地面に叩き伏せられた。

二撃目で、肺の空気が吐き出される。

そして――嵐。

カグリムは殴り続けた。

まるで、この男の存在そのものを消し去ろうとするかのように。

血が頭目の顔を覆い、

彼は喘ぎ、溺れるように息をしていた。

スタロドは、カグリムにとって

ただの村長ではなかった。

彼らは友だった。

若い頃から共に戦場に立ち、

皇帝に仕えた戦友。

スタロドの妻が亡くなったとき、

最初に引退を決め、

彼の傍に残ったのもカグリムだった。

そして今――

カグリムの怒りは、底なしだった。

「カグリム様!」

ニコが止めようとする。

だが、カグリムは乱暴に彼を突き飛ばした。

俺とレヴァンは、この狂気の只中に足を踏み入れた。

誰もが止めようとしたが――無駄だった。

彼の耳には、何も届いていない。

俺は一歩、前に出た。

「……カグリム様。

何をしているんです」

彼は俺を見た。

その目には、

怒りと、

剥き出しの殺意だけがあった。

本当に、俺の声が届いていたのか――

わからない。

もし、スタロドが死んだと確信していて、

しかも、この外道がその原因だと分かっていたら……

俺自身、どうなっていたか。

それでも、俺は言った。

「捕虜は、都へ連行すべきです。

裁きは、そこで下される」

カグリムは、動きを止めた。

その視線が揺らぐ。

まるで、誰かを思い出したかのように。

彼は頭目を放し、

俺に近づくと――突然、抱きしめてきた。

「……大丈夫だ、坊主」

その言葉が、

何を意味しているのか――

その時の俺には、まだ分からなかった。

皆が、俺を見ていた。

なぜ、そんなにも哀れむような視線なのか。

なぜ、その瞳には――痛みが宿っている?

カグリムは両手で俺の頭を包み込み、無理やり自分の方を向かせた。

「……人は時に、愛する者を失う」

彼は低く、静かに言った。

「どれほど辛くても……それでも前に進まなければならない。

まだ、俺たちを想ってくれる者のためにな」

「……何の話だ?」

声が震える。

「誰を失ったって……?」

――祖父に、何かあったのか?

「ケホッ……」

血を吐きながら、頭目が嗄れた声を上げた。

「犬みたいに死んだぜ……のたうち回ってな、へへ……」

「黙れ!」

ニコが全力で蹴り飛ばす。

それでも男は笑い続け、

次の一撃で、ようやく完全に沈黙した。

「今の、どういう意味だ?!」

俺は前に飛び出した。

「祖父がどうした?! 何があったんだ?!」

カグリムを突き飛ばし、走り出す。

「カイレン!」

背後から叫び声が飛ぶ。

振り返らなかった。

「じいちゃん?!

どこだ?! どこにいる?!」

誰も答えない。

ただ、視線を伏せるだけ。

俺は必死に探した――

そして、納屋のそばで見つけた。

服。

……見覚えのある服。

その瞬間、足元から世界が消えた。

世界が、止まった。

膝から崩れ落ちる。

叫ぼうとしても、声が出ない。

喉から漏れたのは、すべてを失った獣のような、低い嗚咽だけだった。

レヴァンが俺を抱き留め、何か言っていた。

だが、何一つ耳に入らない。

祖父は、俺の世界そのものだった。

親がいたのかどうかも知らない。聞いたこともない。

彼は、いつも傍にいた。

厳しい眼差し。

昔話。

助言。

何でも話した。

もう、夕食はない。

焼きリンゴもない。

小言もない。

――祖父はいない。

なぜだ。

なぜ、俺なんだ。

憎しみが胸を裂いた。

息をするのが苦しいほどに。

復讐しなければならない。

あいつは、苦しむべきだ。

俺は立ち上がった。

レヴァンが何か叫んでいたが、どうでもよかった。

剣が目に入る。

掴み取り、頭目へと突進した。

その前に立ちはだかったのは、ニコだった。

「落ち着け」

彼は低く、しかし揺るがない声で言った。

「お前の痛みは分かる。

剣を渡せ」

「なぜ止める?!

あいつを守るつもりか?!」

「剣を渡せ。

殺し屋になるな」

背後から、カグリムが俺を掴んだ。

強く、容赦なく。

剣が手から落ちる。

「……気持ちは分かる、坊主」

彼は囁いた。

「だが、それだけは許せない」

「離せ!!」

俺は獣のように暴れた。

「殺させろ!!」

視界が暗くなる。

闇。

――そして、ほんの小さな光。

草原。

一目で分かった。

祖父と訓練した場所。

物語を聞いた場所。

「……大きくなったな、我が若者よ」

懐かしい声。

振り返ると、

祖父が立っていた。

「……さっき、死んでいるのを見た」

震える声で言う。

「夢、だよな?」

「カイレン」

祖父は微笑んだ。

「私はいつでも傍にいる。

どんな道を選ぼうと――お前の味方だ」

「……どこへ行くんだ?」

声が揺れる。

彼は、ただ微笑んだ。

「もう、時間だ」

「待って! 行くな!」

一歩、踏み出す。

――だが、彼は消えた。

目を開ける。

自分の部屋だった。

夢と現実が混ざり合い、

心臓が狂ったように鼓動している。

生きている。

それなのに――空っぽだった。

傍には、レヴァンがいた。

「目を覚ました!」

カグリムがすぐに近づく。

「大丈夫か?」

静かに問う。

「乱暴にして、すまなかった」

「……祖父は?」

掠れ声で聞いた。

沈黙。

――理解した。

完全に。

「……そうか」

俺は低く言った。

「都へ行く。

あの外道を護送する」

「駄目だ」

カグリムが即座に否定する。

「お前は残れ」

「……付いて行く」

静かに言った。

「止めるなら、俺の喉を掻き切れ」

「もっと簡単な方法がある」

冷たく言う。

「閉じ込める」

「壁なんて止めにならない!」

叫んだ。

「俺は、正義が欲しい!」

「駄目なものは、駄目だ」

「彼には、その権利がある!」

レヴァンが割って入る。

「手を貸せば、二人まとめて閉じ込める」

扉が、激しく閉まった。

「……くそっ」

俺は枕を投げつけた。

「……気持ちは分かるよ」

レヴァンが慎重に言う。

「本気で言ってるのか?!」

「……手伝ってくれるか?」

俺は遮った。

彼は、咎められた子供のように肩を震わせた。

「俺は……」

言いかけて、視線を逸らす。

重く、粘つく沈黙。

胸の奥で、黒く熱い何かが膨らんでいく。

「……多くはいらない」

俺は低く言った。

「小さな頼みだ。

武器を持ってきてくれ」

彼は俺を見た。

恐怖、迷い――

そして、かすかな決意。

「……俺……」

息を呑む。

「……やってみる」

「ありがとう」

拳を強く握りしめる。

爪が掌に食い込む。

痛みが必要だった。

まだ生きていると、思い出すために。

復讐心は、弱まらない。

それどころか――

安らぎを知らない心臓のように、脈打ちながら、俺の中で育っていた。


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