表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
その初恋は何を殺すのか  作者: 田中菜優


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1/8

プロローグ『貴方は知らない私から』

「フィリシアレ……貴女は自由です。好きなように……。幸せな人生を生きてください。」

 公爵邸のベッドに横たわり、今にも消えそうな息を切らしながら、ルッツェリヒは続けた。

「貴女にとっては居心地の悪い場所だったかもしれませんが、私は……。貴女と婚約し、共に過ごせたことを幸せに思っています……」

 彼の手を握りながら、私は(あふ)れ出る涙を止められなかった。


 1年……たった1年しか共に過ごしていない婚約者、ルッツェリヒ。

 小国の第3王女として生まれた私は、同盟のために大国ディゾーネの王子ルッツェリヒと婚約をした。ディゾーネ王国に移り住んだ婚約期間中、望まぬ婚約に落ち込み、何事にも無関心に過ごしていた。そんな私にルッツェリヒは根気強く向き合い、尊重し続けてくれた。人生の中で、こんなにも私を見ていてくれた人はおらず、彼を好きにならないわけがなかった。いつのまにか、彼の笑顔に、私の手をそっと取ってくれる大きな手に安心していたのだ。


 意地を張っていた私も、少しずつ素直になり始めた矢先、ルッツェリヒは襲撃を受けて怪我を負った。大した怪我ではなかったはずだった。にも関わらず、みるみるルッツェリヒの状態は悪くなり……。

 私に『幸せな人生を生きてください』と言い遺してから2日後、ルッツェリヒは息を引き取った。

 

 王子の死は国の一大事となり、王族をはじめ、様々な貴族やルッツェリヒを慕う領民など、多くの人が葬式に参列していた。


 「ルッツェリヒ様もお可哀想に。あんな愚鈍な姫と婚約しなければ、王位はルッツェリヒ様のものだったというのに。」

 「あんな引きこもりの姫、王妃の器じゃないからって、婚約破棄の話も出ていたのに、ルッツェリヒ様は断ったらしいわよ。」

 「お優しい方だから、他国の姫である婚約者に気を遣ったのよ。」

 「こんなにお若くして亡くなったのも、心労が祟ったせいだ。」


 口々に聞こえてくるのは、ルッツェリヒが私のせいであまりに多くのものを失っていたという事実。彼が払った犠牲を、葬式でやっと知るなんて。

 私は本当に愚鈍ね。彼のおかげで私の人生は豊かになったというのに、私は彼の人生を台無しにした……。世界は、なぜ私を代わりに殺してくれなかったのだろう。


こんな世界は、認められない。こんな私は、許されてはいけない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ