罰
云壇の社、本殿。
つゆと弟・尊は正座をし云壇は正面に立ち
「ちょっと気が遠くなるかもしれないけど、心配いらないからね。」と言った。
尊「ね、ちょっとこれ…」
つゆ「大丈夫よ、云壇様もこう見えて神様だから」
云壇「そうそう、僕は連続殺人犯じゃないよ。そうみえたのはショックだけど。」
つゆ「なんか薄ら気味悪いかったからさ…ごめんなさい。」というが反省はしていない。
そうすると、2人のおでこに手のひらを翳し、しばらく。
2人は少しだけ気が遠くなり、気付いた時には古い社の中にいて、
目の前に大きな猪顔をした神様がいた。
尊「うわああああああ」
つゆ「天護様、ただいまです。」
天護「おかえり…」
尊「えっと…こんにちは?」
天護「こんにちは、君は誰だ。」
つゆ「私の弟です、なんか家に来てまして。連絡つかない私を心配したみたい。」
天護「どうりで叫び声が似てると思った…そうか、家にいた人影というのは君だったのか。」
つゆ「ってわけでもないんですよ…」
ほっとしたのも束の間、何かありそうなつゆの告白に
「なんじゃと。」と真剣な声になり、反応する天護。
つゆ「私もよくわからないけど、何かが…家にいて、弟がぎりぎりで部屋のドアを抑えてて…」
云壇も到着し「あれはしょっぼい生霊、つゆちゃんに嫉妬して出てきたつまらない者の残りカス。」
天護「生霊だと?誰のだ。おまん、連れてこいといったろ、どこにある。」
云壇「蒼君か橙君がもってるよ、もうすぐ帰ってくるんじゃない。」
尊「姉ちゃん…この大きな猪さんが…彼氏かい。」
つゆ「そうだよ、彼は天護さま。この神社の猪神様。」
とんでもなく軽くいうから尊も「お、おう…」しか言えない。
天護「怪我はないか」
云壇「大丈夫、心配ありがとう♪」
天護「おまんに聞いてないわ。」
つゆ「弟も私も大丈夫です、ありがとう。」
天護は「ほうか、よかった…」というと社から外に出て、橙と蒼の到着を待っている。
一同も天護を追って外に出た、もう日が暮れかけているがまだ暗くはない。
ふと一角に目をやると竹と注連縄で囲まれた一角の中心に木が積まれていた。
つゆ「それは何です?」
天護「おまんらが行ってる間に準備しとった。」
どうやらお焚き上げの準備らしい。
云壇「ちょっと過剰じゃない?僕の瓢箪に入れてれるから川にでも流せば?」
天護「いや、徹底的にやる。」
云壇「ただの生霊だよ?そこまでしなくても。」
天護「儂の護る土地の村人を襲うなんて許せん、反省してもらう。」
云壇「つゆちゃんだからでしょう、もう素直じゃないんだから♪」
しばらくして橙と蒼が2人で到着。
橙「お待たせしました。」
蒼「こちらです、つゆ殿の家にいました。」
天護「ご苦労さんだったな。」大きな手でその生霊の入った小さな瓢箪を受け取る。
云壇「覚えてる?ここの山の木々を切り倒そうとした連中の…」
天護「覚えてるとも、山神様の怒りを買って退却した…あいつらまだこの土地に固執してたのか。」
云壇「いや…もう興味は他に移ってるけど、思い通りに出来なかった事で念を残してたんでしょう。」
天護「どうしようもないな…橙、火だ。」
云壇「やっぱやるんだ。無事ですまないかもよ、その人達。」
天護「…天罰だ。」
橙が篝火から松明を持ち、それで組まれた木に点火する。
天護は黙ってその火が大きくなるのを待ち、その中に瓢箪を投げ込む。
男たちの悲鳴が聞こえた気がしたが、木が燃え尽きる音だったのかもしれない。
尊「今なんか…」
天護「気の所為だ。さ、みんなご苦労さんだった。茶でも飲もう。」
天護の本殿の奥にある居住区の庭に集まり、一同は橙の淹れたお茶で憩う。
云壇「なんか今日はバタバタだったね。山神様も来てたんでしょう?朝早くに。」
つゆ「はい、6時頃に…絹月様も。」
云壇「大変だったねぇ、でもつゆちゃんが来てからこの山はなんか元気になってきたかもね。」
天護「…よお頑張ったな」
云壇「ありがとう♪」
天護「おまんに言ってないわ、だらが。」
云壇「代わりに人里に降りてる僕に対してもうちょっと感謝してもよくない?ねえ?」
尊「…」
つゆ「へへ(笑)では…改めて、これは私の弟、尊です。」
尊「こんにちは…。」
尊の目の前に進んでいき、腕組をほどき、咳払いをして話し出す猪の顔を持つ男神…。
その岩のような体からは想像できないくらい小さい声で…
天護「儂は…つゆの…おまんの姉の…その…」
云壇「恋人だって、なんで言えないの。照れるような事かね?!」
天護「おまんは黙っとれ!…尊君。姉君の家をよく守りきったな。」
尊「うっす…俺、力だけは強いんで。」
つゆ「ありがとうね。でね、ここは電波がなくて。だから電話通じなかったんよ。」
尊「そう…まあ姉ちゃんが無事でよかった…でもあの家、ちゃんと住む前にお祓いした方がいいんじゃない?」
云壇「それは僕に任せて。」
尊「ええっと…きつねの神様?でしたよね?」
云壇「そうだよ、僕は云壇。君の姉君とこのぶさいくの猪をくっつけたのは僕!この神ブサイクだし、でかいし、猪顔だからこの山を出られないんだ。だから僕と橙と蒼のイケメントリオでお祓いするよ。」
つゆ「…ちょ!ブサイクじゃない!天護様だってイケメンですよ。」
天護「フォローせんでもいい…悲しくなる。」
そうしているうちに外はすっかり暗くなってしまった。
尊「俺、そろそろ大阪戻るわ…高速乗っても…だいぶかかるし。」
つゆ「ここでの事は誰にも言わないで、無事だっていうことだけで。お願い。」
尊「いうても誰も信じてくれないやろ。まあ言わんけど。」
天護「尊君…これ持っとれ。お清めした塩や。これ持ってたら大丈夫。」
尊「ありがとうございます。」
そしてまた云壇の社に飛ばされるつゆと尊、そして今回は橙と蒼も。
弟はつゆの家の前に停めてあった車で大阪まで帰る。
つゆ「運転、気をつけるんやで」
尊「姉ちゃんも…また来るわ。」
つゆ「来る時は電話して。」
尊「したって繋がらなんやん…(笑)」
つゆ「そうやった…繋がらん時は多分だいたいあそこの神社におるから。」
尊はつゆの家の裏山の中腹にある鳥居を見上げて…
「俺、あんな所まで登れんて…シティボーイやで。」という。
云壇「あ、名刺渡しとくね。僕、不動産屋の“明智”だから。この事務所に来てくれたらこっちの神社から飛ばしてあげる。」
尊「うっす…ありがとうございます…。」
ーーーーー
云壇「念の為お祓い終わるまで天ちゃんとこにいるんでしょう?」
つゆ「はい、天護様もそのほうがいいって。」
橙「お荷物は私達で運びますので、つゆ殿は天護様の元へお戻りください。」
ーーーーー
こうして突然、つゆと天護の同棲生活が始まる事になった。
次章 猪神様と鈴の音。【第二章】ー冬山編 ーを掲載予定。
R18要素を含むのでなろう本編では公開できません。




