異世界転移したけどノリと勢いだけで魔王倒したら恥かいた!
「エンドレス•レクイエム!!」
殺伐とした雰囲気の中に響き渡るダサい技名。
瞬間、四方八方から繰り出される斬撃は魔王の肉体をバラバラに切り裂いた。
――終わった……終わったんだ。
長きに渡る戦いに終止符を打ち、しばしの沈黙が続く。魔王を倒した達成感、充実感、満足感、様々な感情で胸がバクバクだ。それでも、なんとか言葉を捻り出した。
「魔王討伐完了!」
いきなり異世界に転移した時は焦ったが、今は心強い仲間と旅をして、ついには魔王討伐まで漕ぎ着けた。
「本当によくやったな! お前じゃなきゃ魔王討伐は果たせなかった」
コイツは旅仲間の武闘家ちゃん、俺と一緒に前線で体を張ってくれる頼れる奴だ。コイツといると男女の友情は存在すると感じさせてくれる。
「えぇ、魔王を討伐できる日が来るなんて夢のようです。これで世界は平和になりますね」
この人は旅仲間の神官さん、仲間のサポート、回復、メンタルケアまでなんでもござれの万能神官。健康チェックによるボディタッチが多いもんだから勘違いしそうになる。
「まったくだぞ。ただの冒険者集団が魔王討伐なんて、おとぎ話だぞ」
この方は旅仲間兼命の恩人の魔法使いさん、攻撃魔法など様々な搦手で相手の弱点を見抜き、パーティを勝利に導く司令塔。異世界に来たばかりでなにも知らない俺を助けてくれたいい人で、俺を実の弟のように接してくれている。
――っと、俺のパーティは女性だらけで気の落ち着かない毎日を送っている。
すると、辺り一面が神秘的な光に包まれ――気がつくと目の前には、翼が生えた綺麗な女性が。
「まさか……あなたが俺を異世界に連れて来た女神様ですか?」
「そのとおりです。……すみません、なんの説明もせずに異世界に飛ばしてしまって……」
「いえいえ、結果的になんとかなりましたし」
「そう言っていただけると助かります。無事に魔王を討伐していただき、ありがとうございます。……そこで、あなたの願いを一つだけ叶えたいと思います」
「願いを一つ? なんでもいいんですか?」
「はい、なんでも――」
「付き合ってください!」
光の速さで答えた返事は女神様の顔を真っ赤に染め上げた。
「な、な、な、なんですかーーーっ!? いきなり!」
「あっ、言い間違いました」
「よ、よかったぁ――」
「結婚してください!! 一目惚れです!!」
「「「「えぇぇええぇぇぇえーー!」」」」
「え?」
振り向くとそこには仲間の姿が……えっ! なんで! てっきり俺一人だけの精神的空間……みたいなものだと……。
「どういうことだよ! ……一目惚れって!」
武闘家ちゃん! 今はコイツに頼るしかない、男女の友情でこの危機を凌ぎ切ってみせる!
「……頼む武闘家ちゃん、なんとか誤魔化してくれないか、俺達の仲だろ――」
「俺の方が先に好きだったのに……」
……おっーーと、思わぬ伏兵だ。
やっぱり、男女の友情は成立しないのか? 幻想なのか?
「一目惚れですか……」
……まて、諦めるにはまだ早い。
頼りになる人、こんな時いつも助けてくれたのは、神官さん、君しかいない!
「――神官さん!」
「私の方が先に好きだったのに……」
……おっーーと、それは予想できなかった。
もしかすると過剰なボディタッチも彼女なりの距離を詰める方法だったのかもしれない。
……ふっ、まだだ、まだ終わらんよ。
最終兵器、魔法使いさ――。
「私の方が先に好きだったぞ」
……おっーーと、三コンボ。
実の弟のように接してくれていたのは、姉御肌をみせて俺を惚れさせるためだったのか? そうなのか!?
……落ち着け俺、冷静になれ。
よく考えれば、言い訳をしなくてもいいじゃないか! 俺は女神様が好きになった、それは変わらない事実! 素直に話せばわかってくれるさ!
「みんな聞いてくれ! 俺はもう誤魔化さない……女神様に一目惚れだったんだ! ……だからごめん! みんなの気持ちには答えられない……」
「――しゅ、修羅場だ! 初めて見ました……わ、わたしのせいで……あわわ」
頼むこれでなんとかなってくれーー。
……ん? な、なんだ、集まってコソコソ話しだした? ……あっ、こっちに来る。
「お、お前の技名ダサいんだよ! このすかぽんたん!」
「……?」
い、いきなりなんだ? 悪口言い出した。
一体なんの目的で?
「ほ、本当ですね、エンドレス•レクイエムなんて、よく恥ずかしげもなく言えますね!」
「――っぐ!?」
や、やめてくれ! 自分でもわかってるんだ。
――でも、言わなきゃ必殺技打てない系の異世界なんだから仕方ないだろ! エンドレス•レクイエム、これが一番火力高いんだから!
「ち、中二病卒業したら! お前もう子供じゃないんだぞ!」
「――――ぐっはぁ!!」
や、やめてくれ!
この旅でやっと回復してきた自尊心がボロボロに崩れていくーーっ!!
◆◇◆◇
――もうお家に帰りたい……。
あれから、ずっと悪口言われまくって自尊心のカケラも残っていない……。
ここから抜け出す方法…………あっ!
……でも、う〜んそうだなぁ。
――よし、決めた!
「ぺちゃくちゃぺちゃくちゃ!」
「俺を元の世界に帰してくれ! これが俺の願いだ! 早く戻してください! お願いします女神様ぁーーー!! 俺の心はボロボロなんですぅーーー!!」
「わ、わかりました! えい!」
俺は光に包まれその場から姿を消した。
「――あっ、逃げられちゃった」
「逃げられちゃいましたね」
「まんまとひっかかったぞ!」
「女神様、私達も一緒に魔王を倒したんだ! 私達のお願いも聞いてもらうぞ!」
「……は、はい、一つくらいなら」
「なら―――――」
「え!」
◆◇◆◇
俺は無事、悪口地獄から抜け出し元の世界に戻ってきていた。
「はぁ、魔王まで倒したのに元の世界に戻ってこれただけって……損した気分だ。――でも、異世界での旅の道のりで揺るがない勇気を身につけた! なんとかなるさ!」
「見つけた!」
「逃がさないですよ!」
「許さないぞ!」
「!?」




