小学6年男子サトシ
将来の夢について
サトシは小学校6年になり宿題として作文の提出がある。秋田県由利市に住むサトシは、父親が会社員、母親が看護師パートをしており、2つ下に、妹の沙都子がいる。秋田県由利市は人口10万人に満たない街であり、高校を卒業すると進学、就職で大半の若者が街から出てしまう。
サトシの父親、母親も一度は進学の為、上京し進学した。東京で共に働いていた父親と母親は出会う。同郷との事で意気投合し交際に発展し結婚にいたる。サトシ、沙都子が誕生し、育児ノイローゼになった母親は助けを求め実家に帰った。その後間もなく、母親の父(祖父)が地元で営む建材屋へ父親を招き転職する。
サトシは自分の家族について、時系列に覚えており、現在に至る家族の歴史は理解していた。
サトシは成績は良く、ほとんどのテストを満点である。勉強は好きで、自宅学習で教科書をどんどん先に進んでいる。
将来は大学にいき、上京し会社員になる事が夢である。
と(あのひと)に会うまではそう思っていた。
(あのひと)に出会い、サトシは自分の将来について明確に「こうでありたい」になったのである。
(あのひと)とは同じクラスの北村渚さんである。
北村渚は、6年になり始めて席が隣になり存在の大きさに気付いた。肌は白く、髪は肩まであり、前髪は眉にかかってメガネをしている。失礼ながら目立ったひとではなかった。もちろん話したこともない。眉が見えず表情がなく感情がわからない。周囲の友達とも距離を置いているようで、存在を明らかに消している。
北村渚については情報がないが、周囲の友人に聞く事もできる。しかし、そういう行動が失礼になる気がする。
サトシは北村渚について、どういう人なのか表現はできない。3カ月間隣の席になり、気持ち悪く思われないように観察した。
天井から頭のてっぺんを引かれてるように、姿勢はいい。
話し方は、ゆっくり滑舌もいい。国語の授業で教科書を読むときは、聞きやすく心地よい。
成績については、先生が結果を公表しないため不明だが、いい方だと思う。
昼休みについては、皆が仲間とすごすなか、北村渚は読書をしている。
何を読んでるか?
知りたかった。
しかし、探るだけで嫌な思いをされてしまうだろう。
本の内容を知る事で、少しでも北村渚を知れる。
透き通る白い手でページをめくる。
表情は分かりづらいが、本に集中している。
「あのー北村さん」
思わず、呼んでしまった。
ゆっくり北村渚はこちらを見て
少し口元に笑みを含み
「どうしたの?」
「あのー北村さん」
「今、読んでる本てなんという本?」震える声で
「あまり、小学生が読む内容ではないよ。
経営についての本、ドラッガーについての説明本だよ、内容難しくて」とタメ息をつく
「あ、ありがとう」精一杯の声でお礼する。
はじめて話し緊張した。
しかし、大きな収穫を得た。
サトシにとっては、今までで生きた中で一番に緊張し、その結果大変満足した。
家に帰り、パソコンで「ドラッガー」について調べる
事にする。
北村渚について、意識をし、興味を持ち、なんらかの感情を抱いた。そして、北村渚が今読んでいる本を知り、同じ価値観になろうとしている。
「ドラッガー」を調べると、有名な経営学者である事が分かった。北村渚がなぜ「ドラッガー」に興味が湧いたか、知りたいと思いはじめた。
しかし、すぐには理解出来ないし、理解するには何十年もかかると直感で感じた。
そして、将来の夢について
ぼくはの将来の夢は、経営者になる事です。
祖父が小さい会社を経営してます。それを小さい頃から見ていて尊敬していました。3人の人を雇い、取引先との関係を良くし、長く会社を経営しています。
祖父は毎日、様々な問題を解決してると言っています。しかし、そんなに裕福ではありません。
ぼくは祖父の会社を大きくするため、今後は勉強をがんばり、いい大学に入り、経営学を学びたいです。
以上
(あのひと)に出会い、ぼくの将来が動き出した。