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異世界兵站(ロジスティクス)株式会社  作者: 門松一里
第5章 勇者チーム訓練計画
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42.勇者チーム訓練計画(4)/(1)資料の拡大解釈(R)

42.勇者チーム訓練計画(4)/(1)資料の拡大解釈


 昔鳥カササギが「原典にあたること」と言った。


 インターネット全盛期の現代でも研究家はまず原典を調べている。


「インターネットがあればなあ……」


 勇者上月(コウヅキ)が上を見た。天井に蜘蛛が巣を作っていた。


「多ければ多いというものでもないよ。上月こうづきくん。まず先に考えて、その思考で集めていくと、おかしい点があればその方面も広げて調べていく」


「限度がないですね……」


「まあね。人類の文化というものは、そうした過去の偉人たちが積み上げたものだから。ぼくたちが思考しているのだって、ソクラテスやプラトンが起源となっていることも多い。デカルトの思考が大きいかしら……」


「デカルト?」


「ルネ・デカルト。フランスの哲学者だよ。『我思う、ゆえに我あり』くらいは知っているでしょ?」


「ええまあ……」


「すべてを疑ったとしても、考えている自分を否定することはできないという意味になっているけれど、厳密には正確じゃあない」


「えっ?」


「説明すると長くなるので、割愛するね」


「もったいぶらずに教えてくださいよ」


「論理学から話す必要があるので、今は飛ばします」


「ちぇっ」


「まずは、原典にあたること。書かれているなら、その原本を。書き写し間違えている可能性もあるから。誰かの言葉なら、本人に聞いてみること」


「――死人に口なし?」


「そういうこと。『裏をとる』のはもちろんだけれど、『逆をとる』ことも大切」


「『逆をとる』?」


「全員がAだと言っている場合は、その逆のBの資料を集める。誰かがBだという事実を隠したがっているのかもしれない」


「疑い深いですね……」


「疑うのが知性だから」


「人間が悪くなりそう……」


「そもそも知の起源は悪だよ」


「えっ?」


「知恵の樹の実を食べたアダムとイヴの話。楽園を追い出されちゃった」


「ああ……蛇がそそのかすんですよね」


「全知全能の神がどうしてそんなことをしたのかは分からないけれどね」


「ブラックだなあ……」


「誰もが自分に都合のいいことしか言わないよ。これをポジショントークと言います」


「ポジショントーク……」


「もとは株式投資用語で、自分の立場ポジションでの意見のこと。宮廷魔術師は、宮廷魔術師にとってイイことしか言わない」


「あの人たち……」


「次に、根拠を調べる。結論ありきじゃあなくてね。ポジショントークはどうしても結論ありきの話になってしまうから、その根拠を調べる。で、例外も調べる」


「けっきょく全部じゃあないですか!」


「最初からそう言っているよ。知りえることをぜんぶ知っておかないと判断できない」


「そんなあ……」


「たとえば、ある人が病気になったとする。ある病院ではすぐに『手術しよう』と言われて、恐くなって別の病院に行くと『薬でも治療できます』と言われる。三番目の病院で『薬でも治療できますが、手術が必要になるかもしれません』と医師に言われたら、誰を選ぶ」


「三番目に決まっています。――あっ!」


「でも、実はその薬は効かなくて、病気を長引かせているだけだったりもする」


「誰を信用するんです?」


「だから、調べるの」


「けっきょくそこか……」


「あとは、集めた資料の反論だね」


「反論?」


「正しいかチェックする必要がある」


「まあそれはそうですが、どうするんです?」


瀧本哲史たきもとてつふみ先生によると四種類ある」


 (1)資料の拡大解釈→(1)それ言い過ぎ

 (2)想定状況のズレ→(2)それは違うでしょ

 (3)出典の不備――→(3)元から違うでしょ

 (4)無根拠な資料―→(4)真っ赤な嘘


「誰です?」


「京都大学の客員准教授だった人だよ」


「ふーん」


「一つ目は資料の拡大解釈。小さなa限定なのに、大きなAまで説明しようとしているパターン。世の中には例外があるからね。――几帳面じゃあない日本人もいるよ」


「俺だ……」


「ジョークであるんだ。料理の上手なイギリス人。キスの下手なフランス人。ユーモアのわかるドイツ人。口説けないイタリア人。忍耐強いオーストリア人。賢いポーランド人。謙虚なスペイン人。素面のアイルランド人。ただし、気前の良いオランダ人だけは存在しない」


「どこが面白いんです?」


「ジョークの解説は品がないなあ……」


「そう言わずに」


「イギリスの料理はマズイ。フレンチキッス。ドイツ人はあんまり笑わない。イタリア人はチャラくてすぐに口説く。オーストリア人はすぐに投げ出す。アメリカンジョークではポーランド人は常におバカだよ。スペイン人は高慢こうまんだし、アイルランド人はいつも酔っている。アイリッシュパブとか聞いたことがあるでしょ? 最後、オランダ人は絶対に割り勘にする。『ゴーダッチ』(オランダ人っぽくしようぜ)は割り勘ということ」


「そうなんだ……」


「でも、逆を考えてごらん?」


「逆? まあ……日本人は几帳面な人が多い。でもイギリスの料理はマズイでしょ」


「ローストビーフ」


「ああ……肉食いてー」


「ロンドンにも三つ星レストランはあるよ」


「でしょうね……」


「ちなみに、ミシュランガイドのミシュランはタイヤの会社だよ」


「ん?」


「遠くまで行くと、タイヤは?」


「はあ……」


「ギネスはビールの会社だよ」


「ふう……」



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