41.勇者チーム訓練計画(3)(R)
41.勇者チーム訓練計画(3)
昔鳥が書かれたものを見て「違う」と言った。
勇者上月としては、ちゃんと箇条書きしたはずだった。
「違うと言われても分からないから分からないんですよ? カササギさん」
「ああ、そういう意味じゃあないよ。箇条書きになっていないという意味。ぜんぶで何件あるの?」
「えっと、いちにーさんしー」
「声に出さなくていいよ。その中黒のところに数字を書いて」
「うん……」
「最初から書いておけば、数えなくていい。これが箇条書き。次から箇条書きするときは、まず『123』だけ先に書いておく。どうして三つかというと、少なくとも三方向から考えないと間違ってしまうから」
「あー……」
(経験から理解するタイプですか……)
「……他にもいろいろあるんですよね?」
「そういうこと。まず、一般教養が必要になるなあ……」
「俺がバカってことですか?」
「そうじゃあない。ぜんぜん違うよ。ぼくはそう思っていない。生き残るのに、一般教養が必要だと言っているだけ」
「どう違うんです?」
上月が目を細めた。
「剣道部だったよね?」
「補欠でしたけどね」
(主将じゃあ……?)
「相手がどう動くか、あるていどまでは予測できるよね?」
「まあね……」
「でも、それ以上になると『この時にはこうすればいい』なんてハウツーは学べないよね」
「ぜんぶのケースを予想なんてできないですよ」
「そう。だから、前もって情報が必要になる」
「うん」
「まず、証拠資料を集めないといけない。次に、その資料が正しいか、検証しないといけない。でも、まずは自分でも考えてみる。関係ない資料や間違った資料も多いから。ただ、集めるときには全部集めること。集めている途中で思考しないこと」
「どうしてです? 絶対に間違っているものなんて意味がないでしょ?」
「敵がそうした情報戦をしていると考えるべきだよ」
「でも、絶対に間違っているんだから、意味がないじゃあないですか」
「現場で判断するのは危険だよ」
「でも現場で判断しないと前に動けませんよ?」
「その前の前の前くらいに調べないといけない」
「準備ってことですか?」
「そう。現地で調達できないなら前もって持っていく必要がある」
「敵のを奪えば?」
「焦土作戦ってあるんだよ。焦土――すべてを破壊してしまう。たとえば、井戸に毒を入れる」
「げっ! ……次に復興するときどうするんです?」
「後回し。本当だよ。まず敵の兵站――軍隊の用語だけど、ロジスティクスのことね。後方支援を含むこれらを破壊する」
「どうして?」
「ほとんどの物資は水や食料で、それらがないと前に進めない。無理に進むと、補給が届かなくなって、弾がなくなる。弾がなければ、大砲は撃てない」
「ぜんぶ持っていけば?」
「撃たれる。弾薬庫から先に」
「……」
「だから、戦略の前に兵站がある。兵站が土台となって、その上に戦略があって戦術があって、最後が戦闘。できるだけ戦闘を避けるために戦術を考えて、その戦術のために戦略を考える。それらすべての基礎が兵站にある」
「分かったような分からないような」
「たとえば、勇者一人で魔王と戦ったら勝つかもしれないけれど、そのたった一人の勇者が魔王城まで行くのに何万何千という敵を撃破する必要がある」
「うん」
「でも、何かして、魔王が先に降伏したら?」
「どうやって?」
「それを考える」
「今?」
「今ではないけれど、できるだけ戦闘は回避して」
「戦って前に進むんじゃあダメなんですか?」
「疲弊する。敵地で疲れたらそれは戦死を意味する。勝ったらそこに前線を構築する。休養を取って、また戦う」
「そんなチンタラしていたら国民が死んじゃいますよ?」
「不眠不休で努力するより、楽に勝てばいいだけの話」
「そんなウマイ話がある訳がない」
「それを考える」
「……」
「そもそも戦争をしている時点で、外交は失敗している。この国の政治家はどうにかしている」
「聞かれますよ?」
「魔法をかけているから大丈夫。あなたが告げ口をするは考えにくい」
「まあ、どう考えてもカササギさんのほうが賢いですけどね」
「じゃあ、続き。証拠資料の集め方から……」
「長くなります?」
「視点の問題だよ。ぜんぶ教えるから自分で考えてみて」




