表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界兵站(ロジスティクス)株式会社  作者: 門松一里
第4章 神聖リヴャンテリ王国
38/66

37.神聖リヴャンテリ王国(11)(R)

37.神聖リヴャンテリ王国(11)


 白亜の楼閣は天空までそびえていた。


(スーパーロボットかよ)


 光の魔術なのだろう。バベルの塔を築けるだけの技術があるとは考えられない。


 それだけ光の伯爵の地位が高いということなのだろう。


 そしてそれは風の侯爵が娘の地位を「次席(第二夫人)でも依存なかろう」と言うまでに。


(違うな……何か違和感がある)


 昔鳥カササギ何気なにげに正門のほうを見ると、噴水庭園がある丘の遥か向こうの裾に正門があった。


(ひょっとして……ルダティ邸からロルテ邸までの距離より、正門からここまでのほうが長いのかもしれない)


 もちろんそんなことはないのだが、それだけ広かった。


 王宮がある丘より少し低いくらいだが、三番目に高い丘に巨大な邸宅があった。


 二番目は公爵クマリ邸だ。


(どうしてみんな高いところに住みたいのだろう)


 水害がある海岸沿いや河川の近く、もちろん活断層の上も遠慮したい昔鳥カササギだが、それほど居住に興味はなかった。


 兼六園のような庭が好きだが、住むとなると話は違う。


 陶磁器が好きでも自宅で楽しむことはしなかった。


(割るのがオチだ……)


 ペルシア模様を思わせる絨毯に乗ると、ふわりと浮き上がり右周りで回廊を移動した。


(空飛ぶ絨毯か……『千夜一夜物語』にあったな……いや、違うか)


 あとから追加された物語で、ペルシアの原本にはない。同じように「アラジン」も「シンドバッド」も「アリババ」も『千夜一夜物語』には登場しない。


 そもそも『千夜一夜物語』は一〇〇一話もない。八百万やおよろずの神といっしょで「たくさん」の意味しかない。奇数は縁起がいいだけにすぎない。


(子供のころ読んで楽しんだな……)


 夜の話なので、本来「R18+」だ。


(夜の話か……〝Nessun dorma! Nessun dorma!〟)


「何の歌ですか?」


 隣のエアー侯爵ルダティ家第一子レディ・フィルダティルダが聞いた。


 微妙に漏れていたらしい。


「昔の歌だよ。遠い異国の歌だ」


 歌っていたのはジャコモ・プッチーニの歌劇オペラ『トゥーランドット』のアリア『誰も寝てはならぬ』だった。『トゥーランドット』は『千夜一夜物語』ではなく『千一日物語』が原作なので、昔鳥は連想したのだろう。


 なお『トゥーランドット』の舞台は中国なので、さほど遠くはない。


「王女が求婚者に三つの謎かけをする。解けないとあやめられる。王女に恋した異国の王子は――という話だよ」


「どうなるの?」


「忘れた……」


「あなた嘘つきね」


「二人でいるときに教えてあげる」


「そう……着いたわ」


 回廊で屋敷を半周した。


 反動もなく、静かに絨毯が止まった。


 ドアが静かに開かれた。


 ベージュの床に、白を基調とした調度品が並んでいた。天井はグレイで、壁が遠く感じる。


 美しい女性が出迎えた。三十代にしか見えない。


「カササギさま、こちらが光の盟主です」


 リヒト子爵ルロルテロルが母のアーダァ伯爵を紹介した。


「光の盟主、こちらがカササギさまです」


「ようこそいらっしゃいました。カササギさま。私がアーダァ伯爵テ・ロル=テ・ロルである」


 キロルテロルに似た見た目で、ボリュームは二割増しのアーダァ卿が先に挨拶した。


昔鳥カササギと申します。お招き感謝いたします。アーダァ卿」


「どうぞ、楽にしてください。カササギさん。さん付けでよろしかったのでしょう?」


「はい、アーダァ卿」


「私もテロルと」


 前半分の名称は、恋人か愛人が口にする名だ。


「――あなたもこちらに、フィルダティルダ」


「はい。光の盟主」


 親しい間柄らしい。


「……ではテロルさん。まずお嬢さまの件をお詫びいたします」


 フィルダティルダを横に、アーダァ卿とリヒト卿を前に、昔鳥が謝罪した。


「聞きましょう」


(〝激情のお方〟では?)


「礼儀知らずな宮廷魔術師カクマリクマが、ぼくを暗殺しようとしました。お嬢さまの手を使って」


「あら、そう。――お酒はいける口?」


「ほどほどに」


「私はいつもので」


「私が……」


「いや君は今日は客人だ」


 使用人がいなかった。気配を消しているのではなく、はべってもいなかった。


 リヒト卿が手際よく氷を入れると、四杯つくった。


 昔鳥、フィルダティルダ、それにアーダァ卿の順番に置き、リヒト卿がソファーに戻った。


「そうね。カササギさんの前途を祝して乾杯しましょう」


「テロルさんの健康を祝して」


「それは光栄」


「ではその二つで」


「カササギさんの前途を祝し、光の盟主の健康を祝して、乾杯」


 テ・ロル=テ・ロルが視線をやると、フィルダティルダの音頭で、乾杯した。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ