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異世界兵站(ロジスティクス)株式会社  作者: 門松一里
第4章 神聖リヴャンテリ王国
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33.神聖リヴャンテリ王国(7)/〈宮廷魔術師七名〉(R)

33.神聖リヴャンテリ王国(7)/〈宮廷魔術師七名〉


 一礼した昔鳥カササギがヴィヴを従えると、風の上級魔術師フィルダティルダが風を使ってドアを開けた。


 ドアの前でもう一度礼をすると、光の魔術師キロルテロルもそれに続いた。


 フィルダティルダがドアを閉めると、足音が消えるまで誰も話す者はいなかった。


「困ったことになったのお」


 他人事のように白髪の空間の上級魔術師カサマタサマが口にした。どこかしら嬉しそうでもある。不謹慎に微笑んだ。


「不用意に怒らせるから……」


 ドアから向き直ると、赤い髪が顔にかかった火の上級魔術師デュパイロパイが手でいて耳にかけた。妙に色っぽい。


最強魔術師ストロンゲストウィザードと風の上級魔術師エアーアークウィザードが離脱とは……」


 水の上級魔術師ウオルコオルが口をつぐんだ。


「公爵の名誉にかけて必ずやあの者に正義の鉄槌を――うっ!」


 土の上級魔術師カクマリクマの胸に九本で形成されたドーマン印が浮かび上がり、横五本のうち一本が矢のように心臓に突き刺さった。倒れる。


「痛い! 痛い! 治癒を!」


 カクマリクマ自身を含め他の四名も治癒魔術をかけるが、いっさい効果がなかった。


 涙顔のカクマリクマが心臓に刺さった矢を引き抜こうとするが、より深く心臓を締めつけた。


「カササギ! 許さんぞ! 必ずや殺――げっ!」


 次に縦四本のうちの一本が刺さった。


「助けて……」


 公爵の威厳ですべてを仕切ってきたカクマリクマの神秘性は失われ、苦痛に顔を歪めた老女がいるだけだった。


「……公爵の命でカササギの命――ぐっ!」


 ここまでくると滑稽でしかなかった。


 都合三本の矢が心臓に刺さっているのが、誰の目にも明らかだった。


「伯母上。もはやあなたは公爵ではありません」


 微笑む闇のカクナロクナが断言した。


「何? ……何を言っているカクナロクナ」


「伯母上がいけないのですよ。〝名前を消された元王女〟なんてものを作るから」


「あの女隷がどうしたというのだ?」


「実の父であれ平民を看病するのは貴族として認められていませんが、奴隷落ちさせるほどのことはありませんでした」


「禁制品を使ったのだぞ!」


「麻薬は苦痛をやわらげる治療薬でもあります。父の病状をかんがみ、そうせざるをえなかったのだろうと聖女も証言しています」


「あの女の言うことなど聞く耳を持たんわ!」


「禁制品の利用を罰したために、呪いもそれに含まれるようになりました」


「カクナロクナ……何を言っている。カクナロクナ? ……何を言っている」


「その呪われた姿で、大公閣下に拝謁するのですか?」


 心臓に三本の矢がしっかりと刺さっていた。


「これは魔術マジックアートではない」


「異世界の魔法マジックローでしょうね。カササギさんだけが使える。勇者も使えるかもしれませんが……あまりに強いと制御できませんが……」


「お前、どうする気だ?」


「病気療養という形で引退はどうでしょう?」


「私は絶対に公爵を辞めんぞ!」


「どうでしょう皆さん」


「決をるな! デュパイロパイ……才のないお前を引き上げたのは私だぞ?」


「悪事に加担させましたよね……証拠隠滅も……」


 デュパイロパイが顔をそむけ、カクナロクナの手を振り払った。


「ウオルコオル……行き遅れの娘を辺境伯に嫁がせてやったではないか!」


「子を産める身体ではなかったのに無理矢理……娘も孫も死んでしまった……」


 ウオルコオルの目から涙がこぼれ落ちた。


「カサマタサマ……お主なら、我が盟友なら分かってくれるだろう?」


「お前さん、うちの息子を暗殺したろう?」


 カサマタサマが凝視した。


「何のことだ? 私がそんなことをする訳がないじゃあないか」


「リュドンカリョです。騎士の」


 デュパイロパイが名前を告げた。


「誰だ? 誰なんだ?」


 十年以上も前に落馬で首の骨を折って亡くなったカサマタサマの庶子だ。騎士が落馬とは当時笑われたものだ。


「カサマタサマさん……本人忘れていますよ?」


「いったいなんのことだ? えっ?」


「時間はたっぷりあります。伯母上」


「裏切るのか! カクナロクナ!」


「裏切るも何も、母を……自分の妹を手にかけたでしょう? それも忘れましたか?」


「そんなバカなことをする訳がないじゃあないか!」


「これって……」


 デュパイロパイが思い至った。


「キロルテロルが記憶を消したんでしょうね」


 ウオルコオルが回答した。


「だから言ったろう。〝忘れている〟と」


 カサマタサマが老獪ろうかいの笑みを浮かべた。


 採決された。


 土の上級魔術師カクマリクマは病状悪化により業務遂行が不可能と診断され、宮廷魔術師の勇退が決定した。


 同日、秘密裏に公爵位を失った。


   *


〈宮廷魔術師七名〉火・風・水・土・光・闇・空間

火の上級魔術師デュパイロパイ/静観者

 赤い長髪で、胸と腹の違いが分からないほど太っている。

 無口なのは、他の魔術師のほうが賢いと知っているから。


(辞職)風の上級魔術師フィルダティルダ/裏切者

 目の細いやわらか髪の風の人。胸が小さいのが悩み。

 昔鳥につくことで、宮廷魔術師を辞職した。


水の上級魔術師ウオルコオル/調整役

 髪が薄く悩み症で、ストレスから食べ過ぎて太ってしまった。

 召喚には反対だったが裏切れなかった。


(引退)土の上級魔術師カクマリクマ/臣民公爵/策略家

 子熊のような愛らしい見た目だが策略家。昔鳥にバレてしまい、引退した。

 勇者を召喚した張本人。昔鳥に復讐を誓っている。


(除籍)光の魔術師キロルテロル/アーダァ伯爵第四子/拷問官

 若いが光の魔術の代表で最強魔術師。巨乳美女で加虐性欲者サディストの拷問官。

 記憶を操作できるが、昔鳥の反撃で従者となった。


闇のカクナロクナ/カクマリクマの甥/議長

 口髭くちひげでロマンスグレイ。

 見識があり有能な官僚だが、伯母の独断を許してしまった。


空間の上級魔術師カサマタサマ/数奇者すきもの

 白髪の老人。好奇心旺盛で、昔鳥の話を興味深く聞いている。



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