21.策略(R)
21.策略
せっかく人を集めたというのに、まったく人気がなかった。影さえ見せない。
翌朝、残金をクルンテルミスに払うと、リムリスはギルドの酒場に行った。
夜とは違い青物関係が多い。
肉のスープは煮込まれていい香りがした。
穀物米でリゾットにしてもらった。彩りに香草を。
言われた銅貨分をバックパックが並べた。
北壁を背に、スプーンで食べる。
美味。南国の香辛料が聞いていた。
「〝冷めてから食べる〟そうだ」
カランドリスが向かいに座ると、父からの伝言を伝えた。
「これって――」
「――そういう意味。感想は言わないほうがいい」
リムリスが笑った。
片目のユックリリナの話は昨日ここでしている。
情報があればカランドリスの父に売りに来る。
何をどれだけ買ったかは、リーダー次第でリムリスは知らない。
一晩中走り回った奴もいるだろう。
情報屋にそれを売り、情報屋から買って精査したカランドリスの父が息子に伝えたということだ。
何も守るのは腕だけではない。
「いや……何をやっているのか分からなかっだだけだ」
正直に話した。
リムリスの口元についた米粒をカランドリスが取って口にした。
「向いていない。でも他に生きようがないんだ」
リムリスが礼を言うと事実を口にした。
「私の知ったことじゃあない」
カランドリスは、ユタリナの〝黒い森〟でコカトリスを倒したら地元に帰って、冒険者をするのだろう。これまでと同じように。
「そうですね」
「じゃあね」
半分ほど残して席を立った。
見送ったカランドリスが皿を傾けると、残りを啜って食べた。
*
〝冷めてから食べる〟とは、今は時期ではないが忘れたころに確実に復讐するという意味だ。
もちろん隙があれば次の瞬間にやるだろうが、今はその時ではないらしい。
(何か企んでいる?)
復讐者がそれをしないのは、他に何かしているからだ。その何かまでは分からなかった。
組合長や、クルンテルミスの耳にも入っていない。
ただ、思い至るのことが一つあった。
勇者召喚だ。
魔王討伐のための。
停戦派は召喚に反対していた。
組合は国王の意志に従う。
組合長も同じく。
勇者が召喚されれば、優秀な「使い捨てできる人材」がチームに選ばれる。その人材は「日常では使いようがない人物」でもある。
組合長の孫娘が選ばれることは決まっていた。
勇者の愛を受ける美しい女剣士。
そしてそれは、魔王を倒した暁に勇者は王女と婚姻することも意味している。
妊娠、出産。
勇者は幸せの絶頂期に愛人の女剣士宅で亡くなる。
腹上死だが、本当の死因は毒殺。
そのあと女剣士は名を変え、顔を変え生きるだけのことだった。
そのため停戦派の聖女との邂逅は阻止しなければならない。一目惚れは自然な魅了だ。
その話を昨夜、パリチチスがファーウにしているはずだった。
もちろん、勇者暗殺の話まではしていない。けれど、聡いカナイルナイが気づかないはずがない。
ファイア侯爵はそのために愛娘を送ったのだから。




