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異世界兵站(ロジスティクス)株式会社  作者: 門松一里
第3章 火の上級魔術師と二刀流の剣聖
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20.賭場(R)

20.賭場


 小娘が一人百枚だすと言うと、男たちが顔を見合わせた。


 リーダーらしき禿頭髭面のオヤジとその相棒がCクラスで、他はDクラスが二名、Fクラスの若者が一名の計五名の「Cクラスパーティ」だった。Cクラスは一つ上のランクのBクラスの依頼を受けることもできる。


「私は二刀流のリムリス。Bクラス。ここに半金おく」


 バックパックのサイドポケットから銀貨が飛び出して、二五〇枚キッチリきれいに並べられた。


 雑なリムリスにはちょうどいいアイテムだった。


「何が目的だ?」


 他の三名が並べられる銀貨に視線を奪われたが、バックパックの魔法を見知っていたリーダーは目的を聞いた。クラスと実力は正比例するが、例外もある。相棒は用心深かった。


(このお嬢ちゃんは俺より上だが、あまちゃんだ。勝てねえ訳はねえ)


 そう考えているのも見越してリムリスが口を開いた。


「片目のユックリリナが今夜、私を消しに来る。盾になって欲しい」


 骨付き肉を口にした。頬が緩む。美味いらしいが、コカトリスではないだろう。


「片目のユックリリナとは穏やかじゃあねえな」


「ビビッたんなら視界から消えなさいよ」


 Dクラスの弓使いの軽口に、そう言うリムリスは目を閉じたままだ。コカトリスを討つまで毒は消えないのだろう。


「Bクラスのアンタなら、一人で戦えばイイ」


 Fクラスの坊やだ。


「それにどうしてギルドに依頼しないんです?」


「カランドリス」


 名前を言われたカランドリスがリーダーの顔を見て口を閉じた。


「アンタがリムリスってんなら話は通じる。先代(アンタの母親)がアイツを片目にしてくれた日にゃ拍手喝采したもんだ。だからってえ、それでアンタを助ける理由にはならねえ」


「子供の教育かしら?」


 食べた骨をガラ入れ――通称「骨壷」にいれた。


 カランドリスがリーダーの顔色を見た。


「コカトリスを討てなくても、一度は経験させるのが筋だものね」


 初心者の時に石化されれば、一生用心する。意識はあるのに動けないのだ。


 助けられるまで、眼球をアリかじられ続けたリムリスが笑った。


「コカトリス?」


 聞かされていなかったらしい。


「親父……」


だあってろ!」


CDカランドリス、チクリがいるってことです」


 リーダーの相棒=副官だ。冷静な魔術師なのだろう。


「え?」


 ギルド内部に内通者がいるのだ。でなければ、リムリスの行動を的確に予測できない。


「誰なんです?」


「ぶっは!」


 これには酒場の全員が笑った。


 カランドリスは純粋に聞いたのだが、笑われて当然だと理解した瞬間に真っ赤になった。


「アンタ何様なんだ!」


 八つ当たりである。


「リムリス様だ。カド坊」


 名前の略称は侮蔑に他ならない。


 カランドリスが剣の柄を握って立ち上がろうとしたが、さっき投げられた銀貨をリーダーが転がしはじいた。カランドリスの膝にあたり、不様に肉のスープ皿に顔を埋めた。


「うっ!」


 まだ熱いらしい。


 副官が銀貨を手にした。


 交渉成立だった。


   *


 カランドリスは不平不満タラタラだった。同い年くらいの女の子に軽くあしらわれてしまったのだから、副官のクルンテルミスも理解できなくはない。


 ただ、片目のユックリリナが関係しているとなると厄介だった。


 親分リーダーは宿に帰るとさっさと寝てしまった。


 その隣で、クルンテルミスがテーブルに赤黒コウシ柄のクロスを敷いた。


 賭場色のクロスは販売されていないが、非公式に個人が日銭を賭けるのなら、賭博は許されている。


 クルンテルミスが参加賭け金を銀貨五十枚に設定して「賭場」を開いた。魔術なので、視覚がなくても手で金を確認できる。


 邪悪だが、冒険者には必須のアイテムだった。


 内容は、三枚のペアを四種類計十二枚、それに前飾りにペア二枚。合計十四枚を揃えるゲームで、まあ麻雀である。


 四人ゲームなので、一人あまるがカランドリスは父に似てそれを嫌っていた。


 逆に、クルンテルミスはコレにはまっていた。というか、それで貴族から平民落ちした人物だった。


 とはいえ、勝てない御仁もいる。


 結果、リムリスは銀貨百枚ほど回収した。


「さてはて」


 襲撃を期待したリムリスだったが、夜は静かで朝まで卓を囲んでいた。



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