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異世界兵站(ロジスティクス)株式会社  作者: 門松一里
第3章 火の上級魔術師と二刀流の剣聖
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16.ナイル家の至宝(R)

16.ナイル家の至宝


 ファイア侯爵ナイル家の当主が、上級魔術師アークウィザードの娘に贈ったのは紫檀したん製の細長い箱だった。


なんじあるじにあらざればあたわざるなりなおほっほのおわざわいあらん』


 封印があるらしく、持ち主でないものにはほのおの禍があるらしい。


 火の魔術師(ファイアウィザード)の第一であるお宝に冒険者だけでなく、組合ギルドの職員も興味津々らしい。人だかりになる。


 カナイルナイが手をかざすと、針のように細い炎が親指の腹を刺した。


 痛みはない。一滴だけ血を残し、傷はすぐに再生されいやされた。


 金属音がして、箱が開いた。


 青い色眼鏡(ブルーサングラス)だった。


「きれい……あっ!」


 アダリリスが思わず声に出してしまう。口に手を当てた。


「えっ? 箱は?」


 目が良いリムリスが行方を探した。


「収納魔法ですね。開くと収納されます」


 冷静になったアダリリスが解説した。


「青いレンズの眼鏡……。赤いのなら見たことがあるけれど……」


 リムリスがじっくり見た。


「鑑定して」


 リムリスが銀貨を投げた。


 二本指でアダリリスが受け取った。


「一般の品ではないので、銀貨十枚になります」


「払うわ――えっ」


 財布を出そうとしたリムリスが受付を越えて、アダリリスにぶつかった。


 風の魔術だ。


「やめんか。れ者が」


 リムリスの身長の半分しかない老いた女が静かに言うと、空中から降りてきた。


「気になって来てみればやはりじゃて。――アダリリス」


「はい!」


 倒れていたアダリリスが直立不動になった。


「お前がいながら不甲斐ない」


「申し訳ありませんでした」


いにしえふみじゃぞ。『ほのおわざわい』が何を意味するか、考えられんのか愚か者めが」


「申し訳ありませんでした」


「『』とあるが『ほのお』と読ませておるじゃろ。その『わざわい』じゃぞ。この組合ギルドごと灰になるところじゃて。――二つ剣(ふたつけん)


「痛いなあ……飛ばさなくてもいいでしょう、お婆さん」


「ここでは組合長ギルドマスターと呼べとあれほど――」


「――はいはい組合長ギルドマスター。いつも言われているように、興味があったから金で買おうとしただけじゃあない」


「リムリス、貴族のものに迂闊うかつさわるものではないのじゃよ。――アダリリス」


「はい!」


「アリスナリスのつるぎは覚えておろうな? 話してみせよ」


「はい。三年前にアリスナリスのつるぎの鑑定依頼があったのですが、要人暗殺の記録が残されていました。依頼人は被疑者となり即逮捕されました。依頼人にはアリバイもあり、さいわい要人の遺族が民事で訴えなかったので釈放されましたがその夜に行方不明になりました。アリスナリスのつるぎとともに」


「それって……」


 遺族の誰かが要人暗殺を依頼し、その暗殺者をまた暗殺した人物が横流ししたのだろう。


「皆までうでないわ、バカ者が」


「バカバカ言うのやめてもらえます? 組合長ギルドマスター


 パワハラ(パワーハラスメント)である。


「まともに二剣ふたつるぎを使えるようになったら、認めてやるわい」


 組合長ギルドマスターが指摘しているのは、リムリスの要領の良さである。しょせんは小手先で、強敵に通用するものではないことをリムリスは自覚していた。身内だからこそ言われると反抗したくなるのだろう。


「見てはいけない……違う、知ってはいけないことを見た可能性があるのですね?」


 カナイルナイが組合長ギルドマスターに質問した。


「そうじゃ。それはお前さんの家のことじゃから、私らには関係ないことじゃて。――生きるうえには知る必要がある。じゃが、必要以上に知ると身を滅ぼす」


中庸ちゅうようですか?」


「知ってなおもできぬことを覚えることじゃな」


「精進いたします」


 組合長ギルドマスターがアダリリスに目配せした。


「はい、解散! 通常業務に戻ってください」


 アダリリスの宣言で、あれだけ集まっていた人たちが蜘蛛の子を散らすように消えてしまった。


 残っていては、アダリリスから八つ当たりをくらうに決まっている。


「ファーウ」


「はい」


 組合長ギルドマスターに呼ばれたカナイルナイが返事をした。



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