12.召喚前(3)(R)
12.召喚前(3)
上級魔術師カナイルナイが振り返った。スカートのフリルが揺れる。
「リムリス。私は二刀流のリムリス」
「わたしは――」
「――カナイルナイでしょう?」
「レディです」
「ここではそんな敬称は使わないし、使えない。冒険者組合に登録したら、貴族の身分は凍結される」
「確かめます」
「どうぞ。――アダリリス」
「聞こえてるわ。リムリス」
受付嬢だ。
「レディ、事実です。正確には貴族だけでなく、あらゆる身分が凍結されます」
受付で見せられたのは羊皮紙ではなく、高級な紙だった。確かに規約に記載されていた。
「……元犯罪者も?」
「ここに。刑期満了を満了していれば問題ありません。執行猶予期間でも、組合が有益であると認めれば――って聞いていますか?」
カナイルナイが読み進め、最初からもう一度読んだ。
「分かりました」
「もう読んだんですか?」
「はい。王国法は履修していますので。登録は旧帝国法が採用されているようですね」
「カナイルナイって賢い?」
リムリスが感想を言った。
「ふつうよりは」
「なんか腹立つ」
リムリスが両手を腰にやった。
別に剣を抜くつもりはなかったが、反射的にカナイルナイが杖を前にかざした。
「強い……」
「実際、強いと思いますよ。上級魔術師ですから。Bクラスです」
アダリリスが事実を述べた。
「えっB? 私と同じ? 最初はF(下)から地道に――」
「――侯爵はBクラス相当で、その子女ですから登録は1ランク下のCクラスから始まります。元宮廷魔術師なので、プラス1ランクでBクラスとなります」
「納得できない」
「こればっかりは生まれの縁――運ですから」
「貴族は常に暗殺対象ですし、わたしのように一回のミスで役職を追われます。上であればあるほど落ちるのも早いです」
アダリリスの言葉に、カナイルナイが注釈を加えた。
「あのう、リムリス。お金を貸してくれませんか? 後で必ず返しますから」
「アダリリス。借用書を用意して」
銀貨を三十枚並べた。
「はいどうぞ」
先ほどのやり取りからすでに用意していたらしい。
魔術端末の中央に借用書を置き、左右の板にカナイルナイとリムリスが手を乗せると一瞬だけ発光した。
「えっ? 五十枚?」
金額を確かめたカナイルナイがもつ借用書を、リムリスが取り上げた。
「手数料。確かめないほうが悪い」
リムリスがバックパックに入れた。奥は闇になっているので収納魔法なのだろう。
「勉強料……」
「そういうこと。お腹が空いたわ。イイ店を知っているのよ。カナイルナイ、いっしょに行きましょう」
「あのう……」
「大丈夫、今日は奢ってあげるって。あと、スカートは短めで、フリルはダメ」
「かわいいのに……」
「ひっかけて転んだらどうするのよ」
「リムリス、あなた転んだのね?」
「そんなことあるわけないじゃあない」
「そうなんだ……」
「ちょっと決めつけないでよね!」
アダリリスが「お帰りまでに組合カードをご用意しておきます」と言ったが、二人は夢中で話していた。




