救出
戦闘が終わり膝をついて荒い息を吐いているとまた声が聞こえてくる。
「誰か……」
いけない! 女性が襲われてるんだった!
声は森の中から聞こえてくる。そんなに遠くない。
立ち上がりロングソードを急いで鞘に納めてから声のするほうへ近づく。
少し下草を分け入ると女性が一人倒れていた。
「大丈夫ですか!?」
急いで駆け寄るとその女性のけがのひどさに一瞬言葉が出なくなる。
かなり殴られたのか体のあちこちが大きな青あざになっているし頭からは血を流している。
大変だ!! 早く治療しないとこれは危ないぞ!!
とりあえず倒れている女性の体を抱き起す。
金色の髪を背中まで伸ばした女性は「うっ!」っと言って小さくうめく。
「すみません、傷に触りましたね。すぐに治療しますので安心してください」
ゆっくりと相手を怖がらせないように声をかけると女性は目を閉じたままちいさくうなずく。
左腕で女性を支えながら右手を女性の上に掲げる。
僕は口の中でぶつぶつと呪文を唱える。
【ヒール】
ぽうっと女性の体を淡い緑の光が包み込む。
みるみるうちに体の傷が癒えていく。
数分もたつ前に女性の体の傷は完全に完治した。
ぱちりと目を開いた女性は僕の腕の中からむくりと起き上がる。
「どうですか? 傷は完全に治療したはずですが。どこか痛むところはないですか?」
体のあちこちを触って確認していた女性は目を見開いて僕を見る。
「あ、ありがとうございます! あんなに痛かったのにもうどこも何ともありません! すごいですね! 戦士の方かと思ったらヒーラーか何かの方だったんですね!」
その言葉に僕は慌てて首を横に振る。
「あ、いやいや! 戦士で間違いないですよ! 回復魔法が使えますけどこれでも戦士なんです」
「そうなんですか、それにしてもすごいですね。こんなにもあっさりと治してしまうなんて」
「そうですね。僕は回復魔法が得意ですから大抵のけがはすぐに治せるんですよ。とにかくここにいるわけにはいきませんね。さっきのゴブリンがまた仲間を引き連れてきたら大変ですから移動しましょう」
僕が立ち上がり女性の手を取って立ち上がらせようとしたけど、どうやら腰が抜けているらしくうまく立てないようだ。
「す、すみません、足が動かなくて……」
「大丈夫ですよ、ちょっと失礼します」
そう言うと僕はまた口の中でぶつぶつと呪文を唱える。
【我汝に問う。かの者を解き放て】
すると女性の足がぴょんと跳ねるように立ち上がる。
「え!? い、いまなにをしたんですか!?」
驚く女性に僕はにっこりと笑う。
「今のは特定の縛りを解いたんですよ。腰が抜けるとか足が動かないというのには自分で自分に縛りを付けてしまうことがあるんですよ。例えば強盗に『動くな!』と言われた時などに体がすくむということがあると思いますが、そういった時も知らないうちに体に縛りを付けている場合があるんです。今のはそれと同じようなものですね」
女性は目を見開きため息をつく。
「そうなんですね。それにしてもこんなことまでできてしまうなんて戦士の方でもいろいろなことができるものなんですねえ」
「まあ戦士と言ってもいろんなタイプの人がいますからね。とりあえず移動しましょう。ほろ馬車がありますのでそれに乗ってください。ご自宅までお送りします」
「まあ、何から何までありがとうございます。私の名前はミーシャといいます。あなたのお名前はなんとおっしゃるんですか?」
「僕の名前はクリスといいます。クリス・チェスターです。短い間ですがよろしくお願いします」
ミーシャの手を取り街道まで出る。幸い先ほどのゴブリンは仲間を連れて追ってくる気配もなかったのでひとまず安心した。
まだまだ始まったばかりですが楽しんでいただければと思います。




