その2
「ところで、何でハイオークを倒そうとしてるのよ?」
「崖の下にね、洞窟があるみたいなのよ。」
「洞窟の中に何かあるの?」
「教えない。」
「私だって知る権利があるわ。命がけなのよ?」
「うーん、知ったところでどうなる訳じゃないけど。ガイアさんにもらった地図によるとね、ここにオリハルコンでできた剣があるらしいの。」
「その剣が狙いなのね。で、何で下にハイオークがたむろしてるの?」
「あれは、私たちに引き寄せられてるみたい。匂いなのかオーラなのか、よく分からないけど。」
「何だか凄く好戦的だったわ。」
「うん。普通と目が違うでしょ?」
「あ、そうだ。エルナかレイナか分からないけど、その匂いを出してるんだったら、どちらかが崖から離れると、ハイオークたちはそっちにおびき寄せられるんじゃない?そしたら、ガラガラの洞窟から剣を取れるよ。」
「それは考えなかったけど、もし私が匂いを出してるんだったら、レイナじゃ小さすぎて剣を取れないわ。」
「私が取ってきてあげるよ。」
「いや、リリムが剣を取ったら、そのまま逃げるでしょ?」
「あはは。信用無いのね。」
「何せ悪魔だからね。」
「まあ、匂いを出してるのはエルナに決定だよね。今でも臭いし。」
「えっ、臭い?」エルナは慌てた。
「うん、臭い臭い。チョー臭い。」リリムは笑った。
「嘘だよね?」レイナを見る。
「まあ、たまに匂うよね。」レイナも笑った。
「嘘嘘嘘!私臭くないもん!」
「嘘よ。エルナ清潔好きだし、臭くないよ。」
「だよね。驚いたー。バカリリム!」
「で、どうするの、下のハイオークたち。」リリムが話を戻した。
「要は、弓を持ったハイオークを何とかすればいいんでしょ?」
「そうよ。私がエルナを背負っちゃうと、何にもできないんだから。」
「攻撃手段がほしいわね。弓より遠くを攻撃できる遠距離魔法。」
「とりあえず、一人ずつ得意な遠距離魔法を出していってみようよ。」レイナが言った。
「じゃ、リリムからね。」
「私は赤い雹を降らす魔法ね。ブラッディレインって言ってるわ。」
「あの技かっこいいよね。範囲広いし。」
「ふふん。よく分かってるじゃない。」
「名前は自分で考えたの?」
「そうよ。赤い血の雨をイメージしてね。」
「でも雨じゃなくて雹だよね?」
「そんなことはいいの!細かいのよアンタ。」
「じゃあ、次私ね。私は遠距離って言っても、中距離の剣技くらいかな。」
「技の名前何だっけ?」
「ウォータースライサー。」
「ダサッ。」
「今何か言った?」エルナは剣を握りながらリリムに言った。
「次は私ね。直接魔法なら、ライトニングかファイアエクスプロージョン、召喚魔法なら、フェニックスが飛ぶから飛距離は稼げるわね。ちなみにフェニックスは矢では倒せないわ。」
「レイナはやっぱり頼りになるなあ。」エルナが言った。
「じゃあ、まあ遠距離攻撃は結構揃ってるわね。だけど、私はエルナを背負ってたら、出せる魔法も出せないわ。」
「じゃあ、私はここで見守ってるわ。」
「うぐぐ。エルナだけは何としても戦わせたいわ。」
「まあ、いいじゃない。まずは遠距離魔法で攻撃して敵の数を減らしてから、私が出て行くってことでどう?」
「仕方ないわね。じゃあ、そういう作戦で行くとしようか。」
リリムとレイナは崖の下に降りていった。
矢の届かないところまで行って、リリムとレイナは魔法を唱えた。
「ブラッディレイン!」
「ファイアエクスプロージョン!」
血のように赤い雹と真っ赤に燃える炎の柱がハイオークたちに降り注ぐ。
しかし、ハイオークに当たるかと思われた瞬間、どちらも上空に弾き返された。
どうやら、ハイオークの周りには魔法を防ぐバリアが張られているようだ。
リリムとレイナは顔を見合わせ、崖上の小屋にすごすごと戻って行った。
作戦会議は続く・・・