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第三話:絶望


 飛鳥が出ていった会議室ではレイアの鳴き声だけが響いていた。


「ひっぐ ひっくっ どうしようレイー。飛鳥様すんごい怒ってたよね」


 レイアはは泣きながらレイに聞いてきた。


「は、はい。すごかったですね。怖かったです」


 レイはあまりの女性との免疫がないため飛鳥の行動に戸惑っていた。


「私のせいでしょう。すいませんレイア様。それにレイも。私としたことがあんな事を言ってしまうとは。情けない限りです。飛鳥様がお怒りになるのも仕方がないというものです。さて、どうしますかね」


 するとレイアが――


「私!謝ってきます。許してもらえるか分からないけど謝らなくちゃいけないし。それにこの国の為にも飛鳥様は大切な人だから。飛鳥様はこんな国言って言ってたけど私にとってここは大事な国です」


「……レイア様。確かに今私が行って謝ったところで許してもらう事など無理でしょうし話すら聞いてもらえないかもしれません。伝えなければいけない事があるというのに……。心苦しいですがレイア様、その事もお伝えしてもらってもよろしいですかな?大変危険ですが、飛鳥様もあなたになら危害も加えないでしょうし。」


 ――怖い。けど伝えなくちゃいけない。


「――はい。大丈夫です。レイもここにいて。大丈夫だから」


 レイはレイアの事を心配するが、本来レイは国政とは無縁の者。レイアの側近というだけで、レイ自身が関与することはあまりない。


「はい。レイア様。お気をつけて」


「うん。行ってきます」


 レイアは努めて明るくそう返事をする。

 レイアが会議室を出て飛鳥の元に向かった。



「――上手くいけばいいのだが……」


 ベルオスは悔しげにそう呟いた。




 最上階女王陛下の間―


「何あいつベルオスって奴!最悪の返答してきたし!また腹がたってきた!」


 飛鳥はベッドに寝転びながらそう毒づくが本当は分かっていた。

異世界に連れて来られたのは飛鳥にとって迷惑な事実だ。けど自分を必要と思っていてくれてるのは感じた。ベルオスの言い方は売り言葉に買い言葉。ベルオス逹が本心であんな事を思ってるなんて飛鳥も思ってはいない。だけどやはり納得が出来なかった。言われた言葉が本心じゃないと分かっていてもあの時怒りのままに放った言葉は止まらなかった。


 飛鳥は少し罪悪感に悩まされながら呟いた。


「あのレイアって子……泣いてたよね。話だけでも聞いてあげればよかった」



 ――コンコンッ!


 その時ノックの音が聞こえた。


「ん?」


 あっ、返事しなくちゃいけないんだっけ?少し間が空いたが飛鳥は返事をする。


「はい。どうぞー?」


「――し、失礼し、ますっ!レイッア・フェルド、どですッ!」


 泣いてた子か。さっきはあんまり見えなかったけどまだ小さな女の子じゃない。怖がられたかな私?いくらなんでも緊張しすぎたよ。と飛鳥は思った。


「うんレイアちゃん。どうしたの?」


 飛鳥は先程とは違う柔らかい表情と穏やかな口調で尋ねた。


「…………………」


「――えっ!レイアちゃん!?」


 レイアはてっきり怒られると思っていて。飛鳥の優しい、そして懐かしく感じる笑顔を向けられて涙を流していた。


「――す、すいません!お話……いいですか?」


 レイアは涙を拭いて今度は目を逸らすことなく聞いてきた。


「うん。大丈夫だよ。どうしたの?」


「――ごめんなさい飛鳥様!飛鳥様を召喚したのは私なんです!」


 レイアは頭を下げ謝罪した。


「えっ?そうなの?なんだ!てっきりベルオス、さんかと思ったよ。理由があったんでしょ?たしかに召喚されたのは許せないよ?でももう怒ってないから」


「……ありがとうございます」


 レイアは再び頭を下げる。


「だからもう謝らなくていいよ。話はそれだけ?」


 レイアは少し言うのを戸惑いながらも口を開く。


「……あと飛鳥様を元の世界に返すことなんですが」


「あ!もう準備出来たの?レイアみたいな子供が召喚出来るなら大人ならすぐ出来るのかな?」


「……その事でお話があるんです」


 レイアは声のトーンを落として話し出した。


「実は、子の召喚魔法を使えるのはフェルド家の血を引く者だけなんです。ここまでよろしいですか?」


 飛鳥は頷く。


「その力は母が子を産んだ時に子へ引き継がれ、引き継がれた後はその母は力を失います。召喚魔法を使うと力は失われ、二度と召喚魔法を使う事が出来ないのです。そして今その力を持つのは、飛鳥様一人だけです」


「……ちょっと待って?私がその力を持つ?おかしいよそれ。私はここの世界の生まれじゃないし、私のお母さんも元の世界にいるんだよ?」


「飛鳥様はこちらの産まれではないですが、飛鳥様のお母様であるシルアスカ様は私の母である、シルフィリア魔法王国十九代女王シルレイア様の双子の妹で、こちらの世界の生まれです。十七年前にあちらの世界に旅立たれましたが」


 飛鳥は黙って聞いていた。


「……あ、飛鳥様?」


「うん?続きは?」


 レイアは飛鳥の態度や召喚魔法の力を知らない様子を見ると母親から何も聞かされてないのだと感じ、この話。つまり飛鳥の母がこちらの人間ということ話した。しかし飛鳥は驚いた様子もなく話を催促してくる。


「驚かないんですか?」


「今さら何も驚かないよ。別にお母さんがこっちの人間でも王族の人間でも関係ないから。お母さんはお母さん。今さら何も変わらないよ。さ、続けて」


「あ、はい。つまり飛鳥様にも力がある。ということなんですが……」


「……何?」


 飛鳥はレイアが放つ沈黙に“何か”嫌な感じがした。


「……この召喚魔法は自分で対しての使用は……不可能なんです……」


 飛鳥は声を少し振るわせて聞いた。


「……つまりどういう事?」


「つまり飛鳥様が元の世界に帰るのは……難しいと思います」


 飛鳥は絶望的な状況に考える事をやめようかと思っていた。でもまだ疑問は残っていた。


「……じゃあ、私のお母さんは何で向こうの世界に行けたの?」


「それは、代理召喚魔法と言って同じ力を持つ者が相手の力を使って召喚する方法で、使用者の魔力を失われずに済む方法です。その方法を使ったと聞いています」


 この力を持つのは私の一人。こんな力いらない。


「レイアのお母さんは?」


 飛鳥は今まで見てないと思い、聞いてみた。


「……二週間前に病気で亡くなりました」


「……ごめんね?嫌なこと聞いて」


 飛鳥は素直に謝る。


「いえ……大分落ち着きましたし大丈夫です」


 飛鳥は一番肝心な事を聞いてみた。


「……あと一つだけ聞いていい?何で私を召喚したの?召喚魔法を使わなかったら、レイアは力を失わなかったのに。何で私を?」


 レイアは話し出した。これからの私の運命を。

 決して逃れることの出来ない宿命を。





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