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第二話:激怒


 飛鳥はマヤに連れられ部屋を出る。ここは城。頭で理解していてもやはり実際目の当たりにすると驚いた。

 廊下を出ると横の幅が広い。十人位は並べそうな幅で壁にはどこかの著名な画家が描いたのであろう肖像画や風景画があり、廊下の所々には高そうな陶芸品や鎧兜が置かれている。

 飛鳥はその非日常な光景を見ている現実に戸惑いキョロキョロと落ち着かない様子だ。

 飛鳥の居た部屋は最上階であの部屋だけしか部屋はなく、階段を降りるとそこには階段を守るかの様に立つ二人の衛兵がいた。


 ――ザザッ!


 衛兵は飛鳥の姿を見ると階段を離れて端に移動し膝をついて頭を下げる。


「……な、何してるの?この人たち」


 いきなり衛兵が動いたので飛鳥はビクッとしながらマヤにに聞く。


「それは女王陛下のお通りですから。当然の礼儀です」


「……ねぇマヤ。その女王陛下って本気?間違いじゃないの?」


 飛鳥は未だに信じられなかった。少し前まで中学三年生のヲタクが一国の主という事実が。

出世どころの話じゃない。質の悪い冗談ならやめてほしい。飛鳥はそう思っていた。

 マヤはピタりと立ち止まりこちらに振り向くき。その表情はさっきまでの穏やかな表情ではなく、真剣そのものだ。


「はい。間違いではありませんし、見間違うはずもありません。その碧色の瞳は……」


 マヤはそう言うとすぐに穏やかな表情に戻り再び進む。


「……そっか」


 飛鳥は考えていた。


 (はぁ……テレビ企画やドッキリの類いじゃなくて本当なんだこれ。マヤも嘘を付いてるようにも見えなかったし。これあれかな?よく小説とかでやくあるあのーそう、異世界に召喚?洒落になんないよそれ?私あんなストーリーに憧れないもん!だって携帯は?テレビは?アニメは?ゲームは?ニコ動画は?漫画は?ないじゃん!それは私の生き方を否定されたと同義!そんな所で生活なんてムリだから!)


「――様?女王様?着きましたよ?」


「ん、あぁ。ごめん。ここは?」


 マヤに呼ばれ現実逃避の旅から帰還した飛鳥


「ここは第一会議室です。行ってらっしゃいませ」


「会議室かー。ってマヤは来ないの?」


「はい。ここは限られた人間しか立ち入る事が出来ませんから。お待ちしております」


「そうなの?まぁいいけど。それじゃあ行ってくるね」


 飛鳥はそう言うと扉を開けた。




 少し前の会議室――



「ねぇレイ。ほんとに大丈夫かな?女王様は怒ってないかな?私の事怒らないかな?」


 心配そうに少女―レイアが側近の男―レイに尋ねる。


「……レイア様もう八回目ですよそのお言葉。大丈夫ですよ。シルアスカ様のご息女様なんですから心配いりませんよ。正直に話して許してもらいましょう?」


「う、うん。がんばって許してもらう」


 この部屋には三人がいる。一人はレイア、もう一人がレイ、もう一人は――


「最初にこの世界の説明、召喚した理由など細かい所は私がしましょう。レイア様もその方がいいでしょう。その後に謝罪すればいいですよ。レイア様だけが責任を感じる必要はありません。私たち大臣も責任を感じております。それに暗い顔をしていては女王様に嫌われてしまいますよ?」


 優しい口調でレイアに諭すねは。大臣の束ねる総大臣のベルオス。


「うん。そうだね」


 レイアの表情も少し柔らかくなる。


 ――その時。


 ――ガチャ!


 セーラー服を来た飛鳥が会議室に入ってきた。

 飛鳥は三人をそれぞれ見たあとにぺこっと頭を下げる。つられて三人も頭を下げた。

 三人は飛鳥の出方を伺っているのか喋らない。堪らず飛鳥は喋った。


「……あのさぁ。私なにも分からないんだよね。だからどこに座ればいいか教えてくれない?」


 少し不機嫌そうに喋った飛鳥。勝手に連れて来られたのだから不機嫌にもなる。ベルオスが対応する。


「そうですな。申し訳ありません。奥の椅子に座って頂いてよろしいですかな」


 ベルオスが指したのは会議室の一番奥にある豪華な椅子だった。飛鳥はなんかスッキリしないがその椅子に座った。

 飛鳥から見て左にレイアとレイ。右にベルオスが座っている。

 飛鳥が座るのを確認するとベルオスが席を立ち説明を始めた。


「まず最初にこの世界の――」

「ちょっと待って」


 飛鳥がベルオスを止める。ベルオスは何か?という顔をしていた。それがまた飛鳥は気に入らなかった。


「まず最初に説明の前にすることがあるでしょ?私あなた逹の名前知らないし」


「ふむ。それもそうでしたな。挨拶が送れて申し訳ございません。私はこの国の総大臣のベルオス。」


 茶色のローブを纏った少し痩せた老人だ。瞳は鋭く白い髭を胸元まで生やしている。

 ベルオスがそう言うと続けて二人も立ち上がり自己紹介をした。


「わ、私はシルフィニア魔法王国第一王女レイアフェルドです」


 少し不機嫌な飛鳥が怖かったのか、目があったらすぐ逸らされた。

 チラッと見えた瞳はは綺麗な青空のような瞳でクルンクルンの金色の髪の毛が特徴の可愛らしい子供だ。


「私はレイア様の側近のレイと申します。お会いできて光栄です」


 そういったレイは真っ黒な瞳に真っ黒な髪、左目が髪に隠れていて、殴ったら折れるんじゃ?って思う程細い体をしている。


 三人の自己紹介が終わると飛鳥は喋りだす。主導権を渡す気はないらしい。

 飛鳥も馬鹿ではない、召喚されたという事はわかっていた。それに召喚されたという事は私が必要だという事を理解していた。


「まず最初に私の名前は島村飛鳥。今はかなり不機嫌です。質問は私から。異論がある方は挙手してね?ここまでおk?」


 三人は戸惑いながらも頷ずき返事をした。まさか飛鳥がとった行動が予想外だったのだろう。

 飛鳥は三人が頷いたのを確認すると話しだす。


「まずここは何処でどんな世界か教えて」


 それを聞いたベルオスは答えた。ここはもう1つの世界という事、三つの大陸に分かれ、それぞれの大陸を納める王国が三つあること。その内の一つがここシルフィニア魔法王国という事。

 それを聞いた飛鳥は想像していたとはいえ軽く目眩がした。それでも飛鳥は落ち着いて質問を続ける。一番聞きたかった事を。


「この世界の事は何となくわかったわ。次にこれは重要、嘘なんかつかずに本当の事を話してね?私をこの世界に“拉致”した理由について」


 飛鳥は少しトゲのある言い方をした。私を召喚したことをどんな風に捉えているのか知りたかったからだ。もしベタに悪気もなくこの国を救ってほしいとか言ったら――


「拉致なんてとんでもない!飛鳥様にはこの国をお救いして頂く為に召喚させていただい――」

「もういいわ。黙って。何が拉致じゃない?私の都合も意見も関係なしに連れてきといて拉致じゃない?ふざけないでよ!それを拉致っていうんでしょ!勝手に連れてきて何勝手な事言ってんのよ!その上国を救えって?馬鹿じゃないの?そんなこと言われてはい頑張りますっていう程あたしは馬鹿じゃない!もうたくさんよ!私を召喚したのは誰!本当ならぶっ殺してやりかいけどもうどうでもいいわ!早く元の世界に帰して!こんな世界イヤッ!」


 今まで溜まっていたストレスや抑え込んでいた気持ちが爆発した。

 飛鳥は涙を両目一杯に溜め、息を切らし激怒していた。

 レイはあまりの飛鳥の剣幕に驚いたのか唖然としており、レイアは責任を感じていたのでまさかあそこまで飛鳥が怒ると思っていなかった為泣きじゃくる。

 ベルオスは眉間に手を当て目を瞑り自分が言ってしまった事を後悔していた。拉致という言葉に反応して一番言ってはいけない言い方をしたのだ。飛鳥があえて拉致という言葉を出した理由も分かっていながらストレートに言ってしまった事を悔やんでいる。どうにか飛鳥に弁解をしようとした時――


「準備が出来たら報告して!こっちは受験すっぽらかして浪人生活決定で大変なんだから!この国がどうなろうが知ったことじゃないわよ!」


 相違って飛鳥は会議室を出ていき部屋に戻った。





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