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第一話:異世界


 ここはもう一つの世界。世界の名は【ディノア】

地球―【ガイア】と対なる世界。

 この世界は三つの大陸に別れている。


 魔法王国シルフィニアが治める豊かな自然と海に恵まれたフェルド大陸。


 武装王国ラグガンドが治める年中雪が降り積り、様々な優れた製造技術を誇るスノウディア大陸。


 最後にエルフ族が治める王国フランソワ。森に囲まれた自然の要塞ウッドネル大陸。


 この世界に一人の少女が舞い降りる。



 シルフィニア魔法王国。 浜辺に一人の六歳位の少女の前には円形の魔方陣が形成され、その周りには四人の老公達と少女の側近である若い男がいた。


「――見つけました」


 少女がそう言うと周りの老公達はざわつく。


「反応がない、です……思念を送ってみます」


 少女は少し辛そうな表情だ。


 (――はやくきて)


 (――じかんがないの)


「――クッ!はぁ……はぁ……」


 少女は片膝をついた。


「大丈夫ですか!レイア様!」


 側近の男が少女レイアに駆け寄る。


「大、丈夫ですレイ。失敗は出来ませんから。少し強引ですが最終手段です」


 (――ごめんねゆるして)



「――来ます!」


 レイアの言葉に周りの五人も魔方陣に注目する。


「…………………」

「………………」

「……………」

「…………」

「………」

「……あれ?」


 レイアは焦った。

 その時――!


 ――ザッバァァン!!


 魔方陣に召喚されずに海の上に彼女は召喚された。


「ゴバデダジュガボブ!!ブハッ!誰がが!だずげでっ!」


 レイアを含め六名は突然の事で言葉も出ず動けなかった。


「だでがぁー!ブクブクブクブク……」


 その状況を理解出来た側近レイが素早く動く。


「救護隊員の要請と城に対応要請を!」


 そう言うとレイは海に飛び込んだ。


「――ブクブク(もう私ダメなのかな?ダメ?何がだめ……な)」


 彼女、――飛鳥は海の中で意識を失った。




 翌朝――飛鳥が目を覚ますと見知らぬ天井が目にはいった。


「……夢だね。うん夢だよこれは。二度寝しよう」


 飛鳥がそう呟くと――


「――!!女王様!お気付きになられたのですね!」


 飛鳥が顔だけ横に向けると。いかにも!私は侍女!って服に書いてそうな女性が瞳に涙を浮かべこちらを見ている。


「……(女王様?誰が?っていうか――)ここ何処よ!?」


 飛鳥は落ち着いて状況を考えてみて焦り出した。


「てかあんた誰!?受験は!?教室は何処よ!?ここは誰!?わたしはどこ!?んだぁー!!」


 パニックになり頭をワシャワシャ掻きながら飛鳥は唸った。


「お、落ち着いてくださいませ!私は女王様専属の侍女のマヤと申します。説明は後程女王様代理と大臣達が説明の場を設けます。ところで御身体の方は大丈夫ですか?どこか痛む所はございませんか?」


 マヤのお陰により少し落ち着き。耳を傾けることが出来た。


「……ふぅ。ありがとうマヤ。少し落ち着いた。身体は……うん。何ともない、大丈夫。って何この服?」


 飛鳥が自分の身体に目をやると、純白の程よく薔薇の刺繍の入ったドレスを着ていた。


「それは寝衣です。畏れながら私が服を着替えさせて頂きました。お気に召さなかったでしょうか?」


 これが寝間着なんだ……こんなので寝たらシワとか気になって寝れない。


「……いや。ありがとうございます。私の服は?」


 マヤが目を見開いた。


「――!!女王様!私のような者にその様なお言葉使いはおやめください!」


「……いやいや。女王様って、まぁいいや。で、服はどこ?」


「はい。ずいぶん汚れていましたので洗濯して、今はあちらのクローゼットの中にございます」


「そっか。ありがとう。じゃあ着替えるから」


「はい」


 飛鳥は起き上がり、クローゼットに向かう。そして開けた――。


「うわぁ……何これ?」


 そこには二十着ほどの色とりどりのドレスと一着のセーラー服。


「申し訳御座いません。何分急だったもので、このような品しかご用意することが出来ませんでした」


「……ははっ。そ、そうなんだ?これで十分じゃない?(てかドレスなんか着ないから)」


 飛鳥は迷わずセーラー服に手を伸ばし手にとる。


「ドレスにお着替えなさらないのですか?」


 マヤは少し寂しそうに聞いてきた。


「うん。着ない。何か分からないけどね。着たら何かを認めてしまう気がして嫌なんだ」


「そう仰られるなら仰せのままに。では、失礼します」


 マヤはそう言うと、いきなりしゃがみ寝衣の中に手を入れてきた。


「――ちょ!何してんの」


 飛鳥はマヤから離れた。


「はい?何とは?お着替えのお手伝いをさせて頂いているのですが」


「いやいやいやいや!そんな事一人でするから」


 本日二回目。マヤは目を見開いた。


「なりません。それが勤めですから」


 マヤはニコっと笑顔を向けてくる。


「……(眩しいっ!悪意0%の笑顔!けど――!)……いやいやいいから」


「なりません」


「いやいいから」


「なりません!」


「いいから」


「なりま――!」

「――怒るよ?」


 マヤは九十度に腰から頭にかけて曲げて謝る。


「も、申し訳御座いません!お許しくださいませ」


「うっ!いやごめんね?私もせっかくの好意を無下にして。でも恥ずかしいしほんとに大丈夫だから」


 飛鳥は悪い事はしていないはずなのに罪悪感に感じた。


「はい。失礼しました。おではその間にお目覚めになった旨をお伝えして参ります。着替えがお済みになりましたらお呼びください」


 マヤは一礼しドアの前でも一礼すると部屋を出た。



「はぁ。何か大変な所に来ちゃったなー。ここどこだろ?日本語通じるから外国じゃないよね?」


 飛鳥は制服に着替えながら呟く。誰かに言いたい訳じゃない。こうして自分に言い聞かせてないと、怖くて、泣きそうでたまらなかった。


「それにしてもこの部屋すごいよ。こんな大きい三面鏡見た事ないし。それに私が寝てたベッド。これヤバくない?どこのお姫様ベッド?ダブルだし。初めて見たよ。天井も高いし、外の風景も、ん?風景?」


 飛鳥はガラスの薄い扉を開けて、テラスに出た。

 飛鳥は言葉を失った。思考も停止し、呼吸することも忘れるぐらいの風景がそこにはあった。

 眼前に広がる、広大な城下町。ここは、飛鳥のいる場所は城の最上階だった。 城から真っ直ぐ長く続いている大通り。そのメインストリートの左右に広がる色んな色や大きさの建物。 メインストリートの先にある巨大な門。

 城が街を包むように門まで続く高い城壁。

 何もかもが予想外で想定外だった。


「……なによこれ?私結構ヤバめな状況?」


 飛鳥は頭を抱えた。泣きそうになるのを堪えた。叫びたくなるのを抑えた。 飛鳥は深呼吸して気持ちを落ち着かせる。


「……まずは情報。何も分からないんだから何も考えなくていい。分かった時に考える。よし。たしか説明してくれるって行ってたよね」


 よし。会って確かめる。なんか理由知ってるみたいだし。大臣?って人に、ここはどこなのか、何で私が喚ばれたのか。全部。

 飛鳥は覚悟を決めて、マヤを呼んだ。


「マヤー!いる?」


扉の向こうに向かって喋ってみる。


 ――コンコンッ!失礼します。


 そう言ってマヤが入ってきた。


「随分お時間が掛かったようで。やはり変わった服装ですねそれは。どこかの民族衣装のような特殊な服なのでしょうか?」


「んー。仕事着みたいな?決まった事をするときに着る服だから。それより、話してくれるんでしょ?その人たちの元へ連れてって」


 マヤは一瞬ドキッとした覚悟を決めたあの青色の瞳に。



「はい。準備が整いましたようなのでご案内します」


 マヤと飛鳥は部屋を出て会いに行く。


 残酷な運命を知りに。




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