格ゲー配信でイキりたい
自室のPCデスクにて、モニターに向かい、SNSに配信の通知を行う。
vtuberとなってそろそろ一週間。今日も私は自己顕示欲を満たすために配信を始めてしまった。
「はーい、今日もやっていきまーす」
そう宣言しながらデュアルディスプレイに表示した自分の配信画面を見る。そこにはこの一週間で徐々に増加してきたチャンネル登録者数を示す数字があった。前世同様、最近盛り上がりつつあるvtuber文化に少しではあるが、私のチャンネルも好影響を受けているようである。私のファンとも言える存在が徐々に増えていることに、思わず嬉しくなってしまう。
「えへへへへ」
『初手不穏な笑い』
『こんばんは』
『わこー』
『なんかいいことでもあった?』
『かわいい』
『わこつ』
「へへへ、みなさん、みてくださいよこの登録者数、一週間前の倍ですよ倍、凄くないですか?」
配信画面の少し下、登録者数を示す数字は六千を超えている。その数、一週間前の倍である。かれこれ四年間配信をしてきて――動画投稿を含めれば更に三年――、ずっと登録者数が三千人を前後してきた私のチャンネルであるが、ここにきて急激に伸びているのだ。嬉しくならないはずもない。
『vtuberになるだけでこんな変わるもんなんだな』
『前はうざいだけだったのに今は可愛く思える不思議』
『わこつー』
『vtuberが流行ってきてるしな』
『五千人越えおめでとうございます:500円』
「えへへへ、投げ銭ありがとうございます」
最近は投げ銭をしてくれる人も増えてきてホクホクだ。貢がれるって凄い気持ちいい。
『てかまた服変わってるじゃん』
『あ』
『言っちゃったか』
『あーあ』
『流石にこれまずくないです?』
「へへへ、やっと気づきましたね、そうです、今日はなんと、また新衣装を作ってきました!」
そう、前前前回の配信で新衣装が大好評だったので、これまた味を占めてしまったのだ。
今回作成した新衣装はズバリ童貞を殺す服。いっときSNSなどで話題となったあの縦セーターである。この新衣装は清楚をイメージさせる白一色かつ、首から下はある一点を除いて肌を見せない鉄壁の作りになっている。だがその除かれた一点。胸部に空いた横一線の切り込みからは、誰もを魅了する大きな南半球が覗ける構造になっていた。
今回拘ったのは縦セーターの柔らかな質感と、縦に押し開かれるスリットから覗く巨乳のチラリズムだ。どちらもかなり自慢の出来となっている。
また、これの他にも第三、第四の3Dモデルを続々と作成中である。天才パワーを存分に生かして、新衣装を簡単に作成できる制作環境の構築もしている所だ。
『相変わらずクオリティーがヤバい』
『エロ過ぎてBANされそう』
『どんだけ金かけてるんだよ』
『会社潰れそう』
『センシティブすぎない?』
『三日ぶり二度目の新衣装』
『元取れてんのかな?』
「それで、どうですか?」
ふふん、と私はモーションキャプチャー機器に向かってポーズをとる。この衣装が持つ武器の威力を最大限発揮できるよう、胸を強調した上目遣いポーズだ。そこに物欲し気な表情を添えれば、配信画面には童貞を絶滅させる金髪巨乳美人(白の縦セーター)が誕生するのである。
『エッッッッ』
『だめだめエッチすぎます』
『上目遣いはぶっ刺さるのでNG』
『エッチ』
『可愛すぎてヤバい』
『好き』
コメント欄には求めていたコメントが流れていく。中には純粋な好意を伝えるようなコメントもまぎれてもいた。
視聴者を手玉に取る快感と自作3Dモデルが評価される嬉しさが、現実で抑圧された承認欲求と自己顕示欲をめちゃくちゃに刺激してくる。それが凄まじく気持ちいい。これがもう癖になっちゃって、二日前から連日同じ流れをやってしまっていた。
「えへへへ、さぁ、今日は久々に格ゲーをやりたいと思います」
さて、と一通りちやほやされるのを堪能したのでゲームをしていくことにする。
『格ゲー久しぶりだな』
『FPS以外もやるんですね』
『最近ずっとFPSだったしな』
「私は格ゲーも世界最強なので興味がない方も見ていってくれたら嬉しいです」
『今日の大言壮語』
『ゲームだけは上手いから困る』
『レイナ、虚言癖さえなければ』
ということで、今日は格ゲーをやっていく。プレイするタイトルはe-sportsとして世界的に有名なあのタイトル。ストリートなファイターだ。やっていくのは普通にランクマッチ。ネット対戦で私の強さを視聴者に知らしめていくのだ。
「ではまず一戦目やっていきましょう」
そう言ってマッチングした相手と対戦を始める。
格ゲーというのは、無数に存在する状況で有効な選択肢を取り続けた者が勝利するゲームである。飛び込んできたから迎撃する。ダウンさせたから追撃する。隙があったから追いつめる。といったふうに、その場その場の選択肢から正しい行動を取っていけば勝てるゲームだ。
そして今世の私は世紀の大天才であり、このゲームのキャラクターが取れる選択肢はすべて記憶しているほか、技の性能から当たり判定まで暗記済みである。そこに天才の思考能力・判断力が組み合わされれば勝利など容易いものとなる。現に配信早々さっそく一勝を収めた。
「へへへ、どうです?」
『うーん強い』
『接待プレイ?』
『一方的だな』
『何やってるかわからないけど凄いのはわかる』
『だらしない表情だなぁ』
『右下が可愛かった』
視聴者の反応は良好だ。私を評価してくれるコメントが多くて気持ちよくなる。
「へへへ、さぁさぁ、もう一戦やっていきましょう」
続けてもう一戦、ランクマッチで対戦を開始する。今度は未プレイの視聴者のためにもプレイの解説を挟んでいくことにする。
「対戦相手の方はかなり上手い方ですね、反応が良く、キャラ対策もしっかりしている方です。ただ、こんな感じで次の動きを読んでいけば、有利に立ち回っていけますね」
そうして相手の狙いやそれに対する自分の動きなどを解説しながら対戦を行っていく。結果、少し危ない場面もあったが、天才の恵まれたスペックをいかんなく発揮し、二戦目も勝利することができた。
「えへへへ、勝ちました」
『すっご』
『おお』
『やるじゃん』
『見てて楽しい』
『解説わかりやすかったです』
コメント欄には賞賛するコメントが並ぶ。気持ちいい。
「まぁ、一時期ネット大会で優勝を繰り返していた私ですから、お茶の子さいさいですよ、へへへ」
『でたな』
『虚言』
『いつもの』
『隙あらば虚言』
『これ嘘なの?』
『てか今の人プロでは?』
「んん?」
気持ちよく自分語りをして悦に入っていたら、気になるコメントを見つける。今の対戦相手がプロであるという内容だ。興味が出たので対戦者の履歴を見てみたら、知らない名前が書いてある。けれどネットでその名前を検索してみると、確かに同名のプロが存在しているみたいであった。
『え』
『プロってマジ?』
『誰?』
『プロに勝ったの?』
『名前が同じだけでは?』
コメント欄は対戦相手がプロであったかの談議が始まっていた。だが私としては全然興味がなかったので、
「まぁまぁ、どちらでもいいじゃないですか、次に行きましょう次」
と言って配信を続けることにした。
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〈朗報〉vtuberさんプロに舐めプで勝ってしまう
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エッッッッッッッッッ
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いかんでしょ
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エロ過ぎでは?
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なにこれ
エッチじゃん
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胸でっか
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元の動画消えてるけどSNSのしかないの?
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誰も内容に触れてなくて草
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誰このHな子?
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活動記録。
センシティブに引っ掛かってアーカイブが残らなかった。




