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vtuber化してイキりたい




 私の名前は関沢寧々(セキザワネネ)。都内の大学に通う女子大生で、TS転生者で、世紀の大天才だ。


 前世は普通のサラリーマンだったが、ある日気がつくと前世とさほど変わらない現代社会に生まれ直していた。でもって胎児の頃から不釣り合いな量の記憶を持っていたためか脳が異常発達したらしく、物心がつく歳頃には常人を遥かにしのぐ思考速度と記憶力を獲得していた。


 そんな私がこの新しい人生を平穏無事かつ大人しく生きようと心に決めてから早二十年。


 今日も私は自己顕示欲を満たすために配信をしちゃっていた。



++++++++++++++++++++++++++++++++++



 モニターに向かい、SNSに配信の通知を行って、配信を開始する。


「はーい、今日もやっていきまーす」


 開始早々マイクに向かってそう話しかけたところ、既に数人の視聴者が私の配信を見ていた。


『え、誰?』

『なんか居て草』

『誰だお前⁉』


 コメント欄を見てみると想定通りの反応が並んでいる。


「ふふふ、どうです、これ、すごいでしょ」


 パソコンのデュアルモニターの一面。そこに配置している配信画面には、純白のドレスに身を包む金髪ロングの巨乳美女――の3Dキャラクターの上半身が表示されていた。そのキャラクターは私の動きをトレースして画面上にて手を振っている。動きはとてもなめらかで不自然さはどこにもない。大作3Dアニメ映画並みかそれ以上の動きをしていた。満足かつ自慢の出来だ。


『すっご』

『vtuberじゃん』

『すげぇ』

『かわいい』

『何だこれ』

『やべぇ』


 時間が経つにつれ徐々に視聴者が増えていき、それに伴いコメントも増加してきた。コメントの内容の殆どは私が自作した3Dモデルを賞賛するものだ。視聴者の反応に思わず笑みがこぼれる。


「ふふふふ、これ自作なんですよ」


 最近は前世同様にvtuberが注目されているので私も便乗してみたのだ。キャラクターデザイン、3Dモデル、システム周り、全て自分で一から作ってみた。今世の私はチートボディを持つ天才なので大学に通いつつ配信もしつつy○utube投稿用の動画を作成しつつ、裏でこそこそ内職をしていたのである。制作期間は一ヶ月弱といったところ。けっこう苦労したのでコメントの賞賛がめちゃくちゃ気持ちいい。


「えへへへへへ」


『まーた始まった』

『虚言癖』

『企業案件?』

『買ったのでは?』

『ゲームが上手いだけの虚言癖女』


 だが視聴者たちは私が自作したのだという話を全く信じていないようだった。コメント欄では私抜きで3Dモデルの出どころを推測し始めている始末である。


 けれど私としても信じてもらえるとは端から思っていないからこの反応は別にいい。反応されていること自体が嬉しいというか、私の天才さは私が知っているという事実だけでも悦に浸ることができるというか。


「まぁ、出どころの話はいったん横に置くとしまして、ほら、どうです? 凄いですよね、もっと賞賛してくれてもいいですよ」


 言いながらモーションキャプチャーの機器に向かってポーズをとっていく。


 配信画面では配信開始時のお馴染みとなっている壁紙画像の前で金髪ロングの超絶美人(巨乳)が手を上に上げて伸びをしたり、胸を強調する仕草をしたり、顔をゆっくり振ってモデリングの出来を見せつけたりしている。表情もしっかりと私をトレースしていて嬉しくなる。作成に苦労した点なのだ。


『マジで凄いな』

『やっば』

『いくらするんだこれ(絶句)』

『外見100点、内面3点』

『え、本当に企業と契約したん?』

『すっご』

『どんな技術だよ』


 賞賛や驚愕のコメントが怒涛の勢いで流れていく。私のチャンネルは登録者が三千人程で、ライブ配信の平均視聴者数が150人程の中小配信であるため、普段はポツポツとコメントされる程度であるが、今日はvtuber効果でROM勢もコメントしているようだった。


「えへへへへへ」


 いや、本当に気持ちいい。前世を含めてもここまで多くの肯定的な反応を得たことはない。胸が熱くなる。


『中の人が漏れてますよ』

『画面がバグった』

『ヤバい』

『技術の無駄遣い』


 散々な言われようだった。


「……ふぅ。ということで、今日はFPSでもしますか」


 とりあえず賞賛されるという当初の目的は達成したので、いつも通りにゲームをすることにする。


『あ、はい』

『昨日もやっただろ』

『やることは変わらないんだな』


 するとこんな感じのコメントがいくつか返ってきたので、


「ふふふ、美女の身体を得た私の魅力をたっぷりと思い知らせてあげますよ」


 と宣言してやった。



++++++++++++++++++++++++++++++++++



 翌日。


 午前中の講義を受けたのち、私は大学の学食で昼食をとっていた。


 昼前に空けてある一コマの時間帯なので周囲に人は少ない。これが後半刻もすれば学食内は人で溢れかえることだろう。


 今の学食内は少数の仲良しグループやお一人様がまばらにいるだけである。


 そして、私は悲しいことにお一人様だ。なぜなら友人がいないから。だがそれを表情に出すことはない。配信上では結構はしゃいでいる私ではあるが、リアルの私は寡黙系の美人秀才優等生として通っているのである。


 元々私はこの新しい人生を平穏無事に大人しく生きようと決めている。だから普段は努めて地味でいようとしているのだ。友人がいないのは二度目の人生でズルをしているという負い目から積極的に関係構築を行えなかったためなので、人生設計とは全く関係ないのだが。


 そんなわけで私は一人寂しく昼食をとった後、スマホで日課となっているエゴサを始めた。


 私は世間的な知名度は皆無の中小配信者兼動画投稿者ではあるが、SNS上で視聴者が話題に上げることは少なからずある。それを見て承認欲求や自己顕示欲を満たすのがここ数年の暇つぶしになっている。


「……ん?」


 エゴサを始めて直ぐに疑問を覚える。何やら今日は私のことをつぶやいている人が多いと。


 不思議に思って原因を探ってみれば、どうやら小さなまとめサイトが私のことを取り上げていたようだった。それが原因となることで、SNS上にてちょっと話題になっているようだった。プチバズりというやつだ。


 こんなこともあるのか、と感心する。


 そして、脳裏に邪な考えがよぎっていった。



++++++++++++++++++++++++++++++++++



 あれから数時間後。自室にて。


 私はパソコンに向かい、配信をしちゃっていた。


「えー、新人vtuberのレイナです。本当は一発ネタのつもりだったのですが、思いのほかバズッたので今日もvtuberやっていきます」


 味を占めてしまいました。




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