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お姉さんと私  作者: ゆりかも
第1章 お姉さんと私
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第3話 お姉さんをお持ち帰りしちゃいました!

3、お姉さんをお持ち帰りしちゃいました!


「お酒…ですか?」と、不思議そうに小首を傾げる如月さん。


(なに!?その仕草!可愛すぎる!キュン死ぬ!)

あまりの可愛さに鼻血が垂れそうになるのを必死に我慢した。


「今から私の家で宅飲みしませんか?お酒とおつまみ沢山買いすぎちゃって…今の状態のお姉さん放っておけないし、愚痴でも何でも朝まで付き合いますよ!」

何かを考える様に少しの間が空いたあと「それじゃあお言葉に甘えますね。」如月さんは微笑み、コクンと頷いた。


彼女を自宅に招待する事に成功し、心の中で歓喜のガッツポーズをした。


如月さんと並び、沈みかける夕日を見つめながらゆっくりと歩を進める。互いに口数は少なかったが、不思議と気まずさはない。しかし、緊張で心臓は酷く脈打ち、隣にいる彼女に聞こえているのではないかと心配になった。


***

ようやく家に着き、ガチャっと扉を開け、如月さんを招き入れる。

部屋のソファに掛けてもらい、コップ等の準備をするためにキッチンへと向かう。


「あまり広くないですけど、自分の家だと思って寛いでてくださいね。」

「ありがとうございます。」


自分の家だと思ってという言葉自体に下心が無いと言ったら嘘になる。私の部屋に好きな人がいるのだ、既に頭のなかでは、2人で同棲するところまで妄想が膨らんでいた。

思わず鼻の下を伸ばしニヤニヤしそうになるのを押さえ、一旦冷静になる。今の段階で変態だと思われたら絶対に仲良くなれない。この機会を逃したら次は無いだろうと思い気合いを入れる。(少しでも良いところを見せてお近づきになりたい!)


先程まで妄想していたのが嘘かのように、キリッとした表情でコップを運ぶ。


「とりあえずビールで良いですか?」

「はい。ありがとうございます。」

如月さんと私のグラス両方にビールを注ぎ入れる。


「おつかれさまでーす!」

「お疲れさまです。」


互いのグラスを合わせカチンと鳴らし、ぐびぐびと飲む。緊張で乾いていた喉が少し潤った気がした。


「ぷっはー!生き返るー!」豪快に飲み干した私を見てクスッと彼女が笑ったことに気付いた。

「ふふっ。口の周りがお髭になってますよ?」と優しく微笑みティッシュを渡してくれた。


可憐な笑みを私だけに向けられている事実に一瞬思考が停止した。

(もしかしなくても、今如月さんの神聖な微笑みを一人占めしているのでは!?)ドクンッと胸が高鳴るのを感じた。

彼女の表情や仕草一つ一つに見惚れてしまう。毎分毎秒愛しさが募っていく。私の中の愛の器は既に表面張力で直ぐに溢れそうになっているというのに、この人はどれだけ私を惚れさせれば気が済むのだろうか。


今すぐに、好きという気持ちを貴女に伝えられればどれだけ楽になるだろう。例え今告白したとしても振られることは目に見えているので、気持ちに蓋をし、ティッシュを受け取り口を拭った。


「あ!そういえばお互い自己紹介してませんでしたね。」一旦、空になりかけたグラスを置き、ソファに座る如月さんの方に体を向けた。


「橘 美緒 24歳です。美緒って呼び捨てで呼んでください!」

「えっと…。美緒ちゃん…でも良いですか?」

如月さんに名前を呼ばれただけで昇天しそうになるのを堪え、名前を呼ばれた声を何度も頭のなかでリピート再生する。


「OKです!あとは、敬語もやめてもらえると嬉しいです。」

「あ、えっと…分かった。」少し気恥ずかしそうに顔を俯かせる。敬語からため口に変わるだけで、何だか距離がグッと近づいた気がした。


「次はお姉さんのこと、教えてほしいです。」

「えっと…。如月 恵美、歳は28です。名前は好きなように呼んでね。」

「え!じゃあ…メグさんって呼ばせてください!」思わず名前で呼んでしまい、自分の大胆さに驚く。こんなにも早く名前で呼び合えるなんて…。もしかしたら今年の運気を今日一日で使い果たしてしまうのではないかと不安になる。もし、メグさんと友達のような関係に成れるのだとしたら、それでも構わないと思える。


「ふふっ…。メグって呼ばれるの、何だか久しぶりで嬉しいな…。」そう言い、優しく微笑みかけられた。しかし、瞳は微かに憂いを帯び、悲しそうに揺れていた。

不思議に思い声をかけようと口を開きかけたとき「美緒ちゃんは、お休みの日何して過ごしてるの?」と遮るかのように聞かれ、ハッとした。まだ私とメグさんは、気の置けない友人ですら無いのにも関わらず、彼女の心の内に土足で入ろうとしていたのだ。

開きかけた口を閉じ、自分の不甲斐なさを恥じる。誰しも聞かれたく無いことがあるはずなのに、私はそれを汲み取ることが出来なかった。

もしメグさんが話を変えてくれていなかったら 、彼女を傷つけていたかもしれない。恐らく、彼女の理解者でない限り解決できない問題なのだろう。それを赤の他人が何となく話を聞いたところで何の解決にもならないことは容易に想像出来た。


近づきかけた距離がまた少し離れたような気がして、少し落胆する。


「休みの日ですか?うーん…特に用事がない時とかは、家で映画とか海外ドラマ観たりすることが多いですかね。あ!海外ドラマとか興味あったら観たいの貸しますよ!」


DVDの貸し借りをするということは、また会う口実になる事に気付き、少し前のめりに聞いてしまい、引かれていないか不安を感じたがそれも杞憂に終わる。


「実は私も映画とか観るの好きなの。特にアクションとかホラー系の映画が好きで、よく一人で仕事終わりに映画館にも行ったりするの。」と、目をキラキラと輝かせ話す所は、物凄く無邪気で愛らしかった。


「お!良いですね。私も好きですよ。王道ですけどアベ○ジャーズとかトラ○スフォーマーとか面白いですよね!日本系のホラーは駄目ですけど海外のホラーはよく観ますね。」


***


それからしばらく好きな映画の話題で大盛り上がりし、今度一緒に映画を観に行く約束まで取りつけた。勿論その流れで連絡先も交換した。


今日は、メグさんの愚痴や、泣いていた事について何かしらの相談会のような物を想像していたのだが、違う方向で盛り上がってしまい、最後の方は酒も回り二人して上機嫌になっていた。


少し前まで泣いていたのが嘘のように笑う彼女を見て安堵する。当初の目的だった"メグさんを笑顔にする"ということは達成することが出来た。


「メグさんと映画の趣味めっちゃくちゃ合うからすっっっっごく楽しいです!」

「うん、私も楽しい!美緒ちゃんだーい好き!」


………おわかり頂けただろうか。

そう、メグさんは…いわゆる絡み酒らしい。先程から私達は、メグさんによりゼロ距離で話している…。しかも悩ましいことに、私の左腕に両腕を絡ませてくるので、どうしても胸の柔らかい感触が伝わってくる。

私としては役得でしかないのだが私の限りなく少ない理性がそろそろ限界になっている。

(うわぁーー!!離れてほしいけど離れたくない!!誰か助けて!)



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