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集会的物語

あの無表情な魔王の独り言─上─

作者: 童想恋香

始まりは、なんだったかな。

そう。この世界の始まりは……いや、もっと言えばこの世界を作った魔王の始まりはなんだったかな。

思い出そうとすればするほど全てが無に還る。


そうだよ、こんなの無茶振りだ。

例えばほら、自分の前世を思い出してみようとしなよ。自分が生まれるよりもっと前のことを思い出してみなよ。……何か騒然とした感覚になるだろう?

それと同じなんだ。


私……この世界を統べる魔王『楼縁沙耶(ろうえんさや)』は、私の始まりなんて覚えてないんだ。気がついたら何もない無の世界にいて、気がついたら世界を作ってた。

出来上がった世界が『集会的物語』。

どこか遠い場所にある物語とは違って、この物語は無限に世界が増えるんだ。……誰かの、誰かの欲望が消えない限り。戦争みたいなものだね。もっとも、この世界では戦争が起こる代わりにその欲望を満たされる世界が創られる……。


見てみて。あそこに堕天使がいるよ。

あの子も一人の人間だったんだよ。一時(いっとき)の欲望で、自らを堕天使にした。それから……自分が思い描いた通りの、神々と堕天使の戦争しか起こらない世界を創った。どうだ、面白い世界だろう?私もそう思う。

人間には、人間それぞれの欲望があって、私はそれを満たしてあげて、それで……。

ね?どうだ、興味が湧いてきただろう?


私の創り上げた物語は、いつしか巨大になった。

私の創り上げた物語は、いつしか罪を正当化させた。

……これが私の創り上げた物語。私が、”絶対的支配者”なの。


時々失敗もした。欲望を満たせた子を守れなかった時があった。

でも、でも……私は信じている。欲望を満たせて人間が幸福になると。神々の欲望じゃなくて、個々人の幸せこそ私の生まれた意義だと思うんだ。……多分。


そんなことをぼんやり考えてたら、二つツノの生えた女の子二人がやって来た。


「沙耶様。人間がやって来ました」


この子は私の配下、『皐月星歌(さつきせいか)』。私の物語を文書にまとめてくれる。通称「星歌お姉ちゃん」、私も便乗してそう呼んでる。


「……ん」

「沙耶様、もう住人たちは集会所に集めてますので」


この子も私の配下、『如月欸(きさらぎあい)』。私の物語の中で伝達係をしてくれてる。

住人っていうのは、欲望を満たしている子のこと。集会っていうのは、欲望を満たそうとしてる人間の欲望が満たすに値し新たな住人になる価値があるか住人に見極めてもらうこと。……集会所はそれをする場所。

私は集会の司会を担当しているから、急がなきゃいけない。


今回はどんな人間が来たのかな。

結局、私の始まりは思い出せないままだったけど、いつの日か思い出せるだろう。

……それでいいでしょ?蓬ちゃん。

下はそのうち。

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