能力者と種付けおじさん
ライバルが助けに来る展開は熱い。
20xx年、人類は新たな力を手にすることに成功した。
それは一般に超能力と呼ばれる力、念動力やワープといった能力を科学の力で手に入れた人類は、ますます発展した。
だが、光があれば闇もある。力が全て正しい方向に使われる訳ではない。
そして今、東京は渋谷にて、二人の種付けおじさんがその力をぶつけ合う。
「フハハ、やるじゃないか。俺の能力を受けて、意識を保っていられるとはな」
跪く種付けおじさんを眺めながら、もう一人の種付けおじさんは邪悪な笑みを零した。
「冥土の土産に教えてやろう。俺の種付け力は催眠。男であれ、女であれ、俺の意のままに操れる。俺の種付け力を受けても無事なのは、貴様の種付け力のおかげ、というところか」
「お褒めいただき光栄だね」
苦しげに笑った種付けおじさんの種付け力は身体強化である。筋力、知力、精力、抵抗力を強化する単純な種付け力であるが、単純故に強力な能力である。
だが、その強力な種付け力も、催眠の前では
時間稼ぎにしかならない。
身体強化の種付けおじさんは、自分の中で催眠の種付けおじさんへの好意が増していくのを感じた。
せいぜい十分程度しか保たない。それを過ぎれば自分は敗北者になると、身体強化の種付けおじさんは本能で理解した。
「貴様が屈するまで待ってやってもいいが、あいにくと取り巻きは足りているのでな。このまま殺してやろう」
催眠の種付けおじさんが拳を構える。
身体強化の種付けおじさんは死を確信し、目を瞑った。
後悔は無い。自分は正義の為に戦った。ここで自分が死んでも、正義の為に戦う種付けおじさんがきっと現れる。
死を前にして、身体強化の種付けおじさんはどこか満足げな表情を浮かべた。
だが、いつまで待ってもその時は来なかった。
身体強化の種付けおじさんが、ゆっくりとその目を開けた。
「ぐわあああ!!なんだ、体が言うことを聞かん!」
そこには苦しむ催眠の種付けおじさんと。
「お前を倒すのは私だと言っただろ」
不敵に笑う、見知った種付けおじさんの姿があった。
「貴様、俺の体に何をした!」
「フッ、簡単なことだ。私の種付け力は感度上昇。いかに貴様が強力な種付け力を持っていようと、感度を上げられてはまともに使えまい」
身体強化の種付けおじさんは、最強の援軍に喜んだ。
「助かった、と言うべきかな」
「気にするな。お前が私以外の誰かに倒されるのが気に入らないだけだ」
「そうか、それでも礼を言うよ」
それは男同士の美学であった。
「立てるか?」
「何とか」
「フハハ、雑魚共の分際で、俺にダメージを負わせるとはな」
致命的な攻撃を受けつつも、催眠の種付けおじさんは、目の前の二人の敵を未だ見下していた。
「強がるな、今の貴様の感度は千倍。ろくに戦えんはずだ」
「たしかに、風が吹いただけでイキそうだが、貴様ら何か勘違いしていないか?」
「何?」
「俺の能力は催眠。男でも女でも、俺の意のままに操る。そう、男でもだ」
催眠の種付けおじさんは、もう一度催眠を発動した。そして、その力の矛先は。
「んほおおお!!」
絶頂の言葉は、催眠の種付けおじさんから発せられた。
「何!自分に種付け力を使うだと!」
「そうだ!俺はこの瞬間、自分に催眠を行った。感度千倍が普通の状態だとな。故に、貴様がいくら能力を使おうと、私が絶頂することはない。我が催眠が、貴様の能力を上書きする!」
感度上昇の種付けおじさんは恐怖した。目の前の敵が持つ勝利への執着心に。
感度千倍が普通の状態になれば、自分の種付け力が解けたときに不感症になることは間違いない。
その後の生活を捨ててまでただ一戦の勝利を追い求める、それは怪物の思考であった。
「なかなか楽しい余興だったよ」
身体強化の種付けおじさんは、覚悟を決めた。
「なあ、試したいことがあるんだ」
「何?まさか、貴様!やめておけ、廃人になるぞ」
何も言わなくとも、全てを察してくれる友人に、身体強化の種付けおじさんは感謝した。
「どのみち、負けたら死ぬんだ、最後に一つくらい博打をやろうじゃないか」
「…死ぬなよ」
感度上昇の種付けおじさんが種付け力を発動させる。
「無駄だ、俺にその力は効かん」
「誰が貴様に使うと言った」
身体強化の種付けおじさんの感度が、一億倍に上昇する。
「んほおおおおおお!!!」
「フハハ、味方に攻撃して何の意味がある」
「意味なら、ある!」
苦しげに、だが確かな意志を感じさせる力強い言葉で、身体強化の種付けおじさんは叫んだ。
「今の僕の感度は一億倍。友達への感謝で十倍。強気な奴を屈服させる喜びで百倍。さらに、人前で出す背徳感で一万倍。全部で1兆倍の種付け力だ、堕ちろ!!」
催眠の種付けおじさんは敗北した。
種付けバトルに負けると雌になるので、二人は仲良く種付けした。
種付けバトルに負けると雌になるっていうのは、比喩表現じゃなくて、本当に美少女に変わります。
ホモじゃないです。