9.オリエンテーション 終編
後ろから俺らの前の走者たちが走ってくる、前川さんの合図で同時に駆け出し、丁度いいタイミングでタスキを貰うことが出来た。
まずはいいスタートをきることが出来た。
まず最初の障害物、ネットくぐりだ。
これは合わせる必要も無いので。
「慌てずに、絡まらないように進んで行こうね!」
「はい!」
と注意を一応しておいてくれた。
前川さんの言う通り、焦ってしまうと中々上手く進めなかったりするので、慎重に行くことにした。
少し絡まったりもしたが、無事俺は抜け出すことが出来た。
前川さんは?と思い後ろを振り返ってみると。
「あ、あやせく~ん、助けて、、、絡まっちゃった。」
とネットに絡まっていてなんて事を中々前に進めていない会長の姿があった。
「大丈夫ですか前川さん!?落ち着いて進んで下さい。」
と少しパニックになりかけていた前川さんを宥めると。
「そ、そうだよね!」
と言いながら落ち着いて前に進み始めた。
無事にこっちに抜け出すことが出来て、また走り始めると。
「ごめんね、綾瀬君、私に任せてって言っておいて初めからこんな感じになっちゃって…」
と落ち込んが感じで話しかけてきた。
「全然大丈夫ですよ!ミスは誰にだってありますし、それにまだトップで走れているので問題ないです!!」
と励ました、そう誰にだってミスはあるのだ、こんな事で責めていたら士気だって下がってしまったり、自分だってミスをするのでお互い様なのだ。
そんな感じで進んでいると2個目の障害物に辿り着いた。
2個目は風船を2人の背中で挟み30メートル先まで運ぶものだった。
案外簡単そうに見えるが意外と難しい。
「次は息を合わせる必要があるね。」
「じゃあいっせーのーで!で行くからね!」
と前川さんが言ってきた。
リレー前に話していたやつだ。
「分かりました。」
「いい?それじゃあ行くよ!」
「「いっせーのーで!」」
と2人で言いながら前に進んで行った、走るスピードが合わないかな?と懸念していたのだが、案外そんな事なく、ほぼ同じスピードで走れた事でミスなくクリアすることが出来た。
「やったね!」
と喜びながらそう言ってくれた。
「はい!上手く行きましたね!」
とそう返した。
上手くいったことで、後ろとの差を伸ばすことが出来た。
3個目の障害物は平均台だった。
これは2人とも順調にクリアする事が出来た。
強いて言うなら、俺が1回落ちてしまったことぐらいだ、凄く恥ずかしかった。けど
「ドンマイ!」
と前川さんが励ましてくれたこともあり、特に問題もなかった。
次がラストの障害物、二人三脚だった。
やっぱり最後はペアの息を合わせる事が大事な種目を用意してきた。
確かに、仲をより深めるという面ではおいては、これは結構ピッタリなのかもしれない。
「さぁ!綾瀬君二人三脚だよ!」
「た、大変そうですね…」
と少しオドオドしながらいってしまった。すると
「大丈夫だよ!さっきみたいにやれば上手くいくって!」
と言ってくれた。
それは嬉しいのだが、俺が気にしているのはそこではなくて、二人三脚てことは足首を紐かなんかで結んで進むのだが、体の密着が凄い、今結んでいる状態なのだが、もう色んなところがくっついているのだ…
あぁ、女の子の体ってこんなにも柔らかいんだなあ…。
なんて思ってしまう。
こんな状態で走ってたら、羞恥心でどうにかなってしまいそうだったので、さっきああやって返事をしてしまったのだ…。
「それじゃあ行くよ!」
「は、はい!」
えぇいこうなったらもうどうにでもなれとやけくそになりながら。
「「いっせーのーで!」」
合図によって走り出した。
そこからは
「「いちに、いちに」」
と声掛けをしながら進んでいき、2位との差を開いたままゴールができると思っていたその時。
足が絡まった。
「うわぁ!」
「きゃぁ!」
俺は何とか持ち堪える事ができたが、前川さんが転んでしまいそうだったので慌てて抱きかかえ、転ばずにすんだ。
けど、抱える時に抱える場所が悪かったのか、触っては行けない所を触ってしまい、前川さんの顔が凄く赤くなっていた。
直ぐに前川さんから手をどけた。
「い、今はリレー中だから何も言わない、けど後でちょっとお話しようね」
と断ることが出来ないような圧をかけながらそう言ってきた。
勿論その中でいくら悪気がないとしても、断れるわけもなく。
「は、はい…分かりました…。」
とだけ答えた。
その後は無事にゴールができ、一時は2位に落ちるかと思うぐらい最後で詰められていたが、何とか1位をとることが出来た。
「やった!やったよ、綾瀬君!1位とれたね!!」
と凄く喜んだ顔をしていて、そんな顔をみているだけで、あぁちゃんとやって良かったなと思えてしまうほどのものだった。
「そうですね!1位がとれてよかったです!」
と俺も喜びを口にした。
すると、前川さんが、クラスの人達に
「1位とったぞー!」
と言っており、それにクラスの人達も
「「「「いぇーい!!!」」」」
と前川さんを中心として喜びながらはしゃいでいた。
それをみて、やっぱり前川さんは人から慕われている存在なんだと改めて再確認出来たのと、それとやっぱり俺と真反対に位置する人なんだ…。
と少し悲しくもなった。
そんな事を思っていたら。
「良かったですよ、綾瀬君、頑張りましたね。」
とほんわかとした声が聞こえた、後ろを振り向くと、笹柳先生がいた。
「あ、笹柳先生」
と声をかけ続けて
「はい!1位がとれて良かったです!」
と言った。
すると
「どうでしたか?自分から行事に参加していくことは?」
と聞かれた。
「そうですね、前なら絶対にやらなかったでしょが、前川さんがいたからやることが出来ました。」
と返すと。
「今はそれでいいです、目的のために動く、なにか自分にメリットがあるからやる。そんな事は今のうちはいいですが、奏ちゃんを狙うにはまだまだですね。」
うふふと笑いながらそんな事を言っていた。
けど、普通はそうだろう、なにか自分にメリットがあるから人間は動くものなのだ、だが、普通じゃない人もいる。
自分のメリットにならなくても、他人が幸せになってくれるならと、本当に善の心の塊みたいな人が、それが当てはまるのが前川さんなのかもしれない、数時間しかみていないが、それでもそういう雰囲気が滲み出ているのだ。
そんな人と釣り合うなんてはなからおもっていない。
てか、なんでこの人俺が前川さんの事気になってるって知ってるんだ?
「気になります?」
とだけ言ってきた。
心読まれてる!?
「えぇ、だって顔にそう書いてありますもの。」
なんて言ってきたので。
「先生凄く凄く怖いのでやめて頂けませんか?」
と怯えながらにいってしまった。
そんなやり取りをしていると
「オリエンテーションお疲れ様でした、終了の言葉として校長先生から……」
と放送がかかった。
それからオリエンテーションは無事終了し。
教室に戻ろうとした時
「綾瀬君ちょっと良いかな?」
と前川さんが声をかけてきた。
「なんですか?」
と返すと。
「放課後少し時間が欲しいのいい?」
と聞いてきた。なにかあっただろうか?と疑問に思ったので?
「いいですけど、なにかありました?」
と言うと。
「リレー中に言ったでしよ後で話があるって」
「あ、あれですか…。」
とあの時のシーンと一緒に言葉を思い出した。
「分かりました。」
「うん、ありがとう!じゃあ放課後生徒会室に来てもらっていいかな?」
と言われたので
「了解です。」
と言うと
「じゃあ後でね!」
と言いながら去っていった。
まだ俺の一日は終われないみたいだ……。
9話目です。どうだったでしょうか?
やっとオリエンテーションの部分が終わることが出来ました、凄く長くなってしまいすいません。
ですが、これからもしっかりと続いていきますので、是非読んでいただけたらと思います。m(_ _)m