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死神A  作者: お塩
3/8

魂の価値

哲学は得意ではないけど好きです

神にも魂は存在する。

だが、死の概念はない。

特に自分自身が死神である為、死とは?

というお話である。


厳密に言えば神にとっての死とは、魂の消滅である。

魂が消滅するとこの世に留まることもできなければ、転生もできない。

消えて無くなるのだ。

水を温めると消えて無くなるわけではない。

あくまで蒸発なのだ。

これが生物にとっての死と言えるだろう。

肉体が無くなれば魂が解放され、そしてまたどこかに宿るのだ。


しかし、魂の消滅とは、文字通り消滅なのだ。

水そのものの蒸発ではなく、無くなる。


そのため、魂が消滅すれば、存在も消滅する為、他からの記憶も消えてしまう。

完全に自分自身が無かったことにされるのだ。

両親と子供、手を繋いで三人で歩いてる所に、ふと、子供一人の魂が消滅したとしよう。

そこには仲良くカップルで手を繋ぎ歩く構図ができてしまうのだ。

つまり存在ごと消滅される為である。

怖い話だ。


そのため、魂を消滅された者はいない。

いや、実際にいるのかもしれない。

いつも酒場でザリエルと二人で飲んでいるが、本当はもう一人いて、三人で話に花を咲かせていたのかもしれない。

おぞましい話である。

本当は元々100人いたのかもしれない。

それが日を、月を、年を追う度に一人ずつ消えているのかもしれない。

創造神様の怒りに触れて…

物語が一つ作れる勢いである。


自分自身、別に魂が消滅されることに恐怖を抱いてるわけではない。

俺にとっての恐怖は唯一、【無】である。

この世界そのものの消滅が俺にとっての恐怖。

それが地球からの転生者によって可能にするのではないか?

と思っているのだ。

なぜなら、この世界には魔法があるから。

地球で呼ばれる科学を学んだ転生者が、この世界で魔法を手にいれることができたとしたら、何が起きるのか。

哲学者が転生し、この世界の神を生きながらにして認識したとしたら、神を恨むのか。

結託した転生者が【真実】を知り、この世界の人々に伝えたとしたら、人々は我々を見限るのか。

転生そのものを技術にされてしまわないか。


考え出したら切りがないのだ。

何をするのかわからない。

神が存在しないことを科学的に証明したくらいだ。

なんだってできる。

なんだってする。

恐怖そのものでしかない。

それだけ、地球の人々は万能で、儚い生き物なのだ。


もしも、もしもだが、この世界の人々だけで神の存在を科学的に証明することができたとしたら。


そのときは俺が犠牲になろう。

俺だって元々は人だ。

元人間の神であることを肯定し、全身を以て謝罪しよう。

不平等な世界を作り出したことに。

怒りの矛先を俺に向けてくれ!

それが俺の存在の証明になるだろう。

喜んで【死】のうじゃないか。


…神だって矛盾する生き物なのだ。

魂が消滅することに対して怖くは無いが、存在しなかったことに対しては怖いのだ…


自分自身の証明の為にも、転生者を…猛獣を中に入れるわけにはいかない。


神とは、利己的な生き物である。




魂休所の列の中に、騒がしい魂がいる。

異常事態発生だ。


俺は今、相も変わらず魂の選別をしていた。

善人と罪人の選別だ。

最前列になった魂が意識を取り戻すのだ。

前世の記憶もある。

だが、基本的に何が起きたのか、ここがどこなのか、困惑している魂がほとんどだ。

死を認識した、してないに関わらず、ふと気付くと目の前に着物を着た骸骨が立っているのである。

当然、は?

となるわけである。

瞬時に恐怖心を抱いただけでも立派だ。


まあそれはいいのだが、今、最前列以外の魂が騒がしいのだ。

騒がしいと言うか怒鳴っている。

なんなんだこれは!!と。

お前がなんなんだと言いたい。

俺はすかさず地獄の釜を開く。

汚魂は消毒だ。

【精神誘導】の魔法を発動する。

対象は、あの汚物、いや、汚魂。

【精神誘導】とは、精神魔法の一つ。

指定した物体や生物に対して、極度の信仰心を持たせ、少しでもお近づきになりたいと思わせる魔法である。

強力な磁石で引き寄せるようなものである。


「誰だ!?わしに変な魔法をかけた者は!?」


…バレた。

よし。かくなるうえは、上司に報告である。

報告、連絡、相談。

基本中の基本である。

早速【念話】でザリエルにほうこ…「おいおいおい待て待て待て!」


汚物が念話を遮る。

かなりの実力者なのだろう。

魂の状態であるにも関わらず肉体を所持しており、その体も筋骨隆々である。

だが体つきに関わらず初老のような顔つきで、髪も髭も白髪である。


…俺に干渉してる時点で只者じゃない。

俺の上位にあたる神なのだろう。

だが、なぜそのような者が俺の目の前にいるのだろう?


疑問に思っていたところで汚物が口を開く。


「フッハッハ!!お主がワシの後釜か!これはこれは!、なんとも、言えぬ、な。…なんかこう、普通だな!特徴がないな!うむ!特徴がないぞお主!フハハハハハハハ!!」


特徴がないと連呼し、あげくに何がツボにハマったのか爆笑する特徴まみれの汚物。


しかし、後釜ってなんだ?


そう疑問に思ってると、汚物がまた口を開く


「お主がワシの代わりにここの担当になったのじゃろう?」


ここでザリエルの言葉を思い出した!

ここの前担当の神…竜神はそれはそれは面白い奴だったと。



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