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死神A  作者: お塩
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神それぞれ

一人称で完結を目指しますm(_ _)m

今私は、【魂休所】にいる。

それは魂に休息を与える場所。

魔物や動物、人間などの魂を癒し、そして浄化する。それが終わったら生物へと魂を宿すのだ。

魔物は魔物へ。

動物は動物へ。

人間は人間へ。


その魂休所は世界中の上空に散りばめられており、神それぞれの仕事として成り立っている。




俺は遥か東の名も無き孤島で担当をしている。

この島は面積が小さく、生物も少ない為、

一人で仕事だ。

気楽でいい!


神によって魂を転生させる方法が一人一人違うのも必然だ。

俺にも自分なりのやり方がある。

善意に満ちた魂は極楽へ送り、リフレッシュをさせる。

最後には生の本質を学び、個々によって結論を出してから転生させる。


この島でいつも楽しそうにしている人がいるとしたら、そういうことなのかもしれない。

たまに傲慢な奴もいるだろう。


悪意に満ちた魂は練度によって地獄へ送り、針の山を登らせたり、血池で溺れさせる等々、最終的には無の空間で悠久の時を過ごさせる。

いつ転生できるかは神のみぞ知ることになる。


この島でいつも不満を抱えてる奴はそういうことだ。

逆境を乗り越える人もいるかもしれない。




…俺が神になってから間もなくこの仕事をしていたときは、命、いや魂を弄ぶことに抵抗があった。平等を求めていたのだ。

人は分け隔てなく極楽へ送り、悪の心を持つものも善の心を持つ者も人としての本質を教えることにしていた。

人とはどういうものなのか。

しっかりと認識させ、転生させた。


しかし、しばらくすると人々の活力が無くなっていったのだ。

原因は俺にあった。

極楽で人としての定義を押し付けたことにより、自分の命への執着が薄くなっていったのだ。

勿論極楽での記憶は消し去っているが、魂に刷り込まれたものは残っている。

それが俺の狙いでもあったわけだが。


人に優しく。

貧しくなれば自分ではなく人に食べ物を与えよう。

困っている人がいたら率先して助けよう。


…こういったものは外敵や自然災害があって初めて成立するのだ。

だからといってその災害が好きなタイミングで発生するわけでもない。

その頃の俺はそんなこともわからなかったのだ。


だから俺は善人には過分な自由を与え、悪人には徹底的に理不尽に扱っていこうと考えた。


俺の友、ザリエルの考え方も参考にしている部分もある。時と場合によっては楽観的になることも必要だ。

…友と思ってるのは俺だけかもしれないが。




俺はいつもの通りに魂の選別をしていた。


「名前は?それと行った悪事の数々を教えてくれ。」


「トートです。………って、ここはどこなんですか?私が死んだのは覚えているんですが…なにがなんなのか…」


赤髪の男が自分の名前を答える。名前を知られたくなかったのか、一瞬、ハッとした表情になる。だがすぐに元に戻り、自分の心境を伝える。


目の前の男は悪党だ。時には詐欺師になり人を騙し、時には暴行や泥棒など。悪事は数知れない。


俺は今、一つ一つの悪事を包み隠さず白状させようとしている。

地獄行きは確定なのだが、素直に白状するなら制裁は軽くするつもりだ。

頭の回転も早いんだろう。



だがその望みも予想通りに打ち破られる。

悪事とは?

あなたは誰ですか?

等々。最終的には、初対面の相手に敬語も使えないのですか?


だ。


質問に質問で答える奴は大体性格が歪んでいる。

悪党に説教されるとは…

予測してたとはいえ、こうも反抗的な態度をとれるものなのか。

今の状況がわかってない様子。

いや、わかっていないフリなのか。


俺は苛立ちを隠しながら淡々と質問に答える。

俺は死神であること。

神である者が人間に敬語を使うことはありえないこと。

様々な悪事をしてきたことも一つ一つ目の前の男に丁寧に答えてやった。



「ええ、ええ。やりましたねそんなことも。ですが、ここは処刑所ではありませんよね?私は既に死んでいますし。強盗や詐欺。その報いは死によって帳消しにされたのではないんですかね?もしや、あなたの私情で私に何らかの罰を与えるとでも言うのですか?そもそも死神がすでに死んでいる私に何の用があるのでしょうか?ていうか死神って…プッ私にとって目の前のものはただの白骨化した死体だと思うんですけどね。」


「…」


男は長々と喋った後に少し鼻で笑う。


はっきり言って、マジで厄介な魂だこいつ。

生に執着しているわけでもなく、保身の為に媚びへつらうわけでもない。

強気の姿勢だ。

俺を手玉に取る気すら感じられる。


別に、いつでもこいつを地獄に突き落とすことはできるのだ。

だがこの場で恐怖心を与えられないことが残念でならない。

これでは地獄に堕ちても反省できず、ズルズルと地獄の深層へ引きずり下ろされる。

そしてどれだけの時間で解放されるのかがわからない。

恐怖とは、抑止力にもなるのだ。

色々な場面で。

だが、この男からは一切恐怖心が感じられない。

もしかしたら永遠に無の空間に取り残されることになる。


だが仕方がないものは仕方がない。

俺は決断する。

「残念だがお前は灼熱の獄だ。火炎の中で好きなだけのたうち回るといい。しっかり反省しろよ!」


「地獄は経験してきたつもりでしたけどね…死んだ後も地獄か!趣味が悪すぎる!!生きている間は手が出せなくて、死んでからイキがるところが見苦しいな!俺が悪党ならお前は子悪党だ!そこらへんにいっぱいいるぞ!お前みたいな奴はよ!」


…最後の最後まで挑発を繰り返した男の顔は真っ赤に染まっていた。

最大の怒りを感じた。

また地獄へ落とされることに恐怖ではなく

屈辱を感じたのだろう。


幼少期に両親から虐待を受けていたのだ。心が歪んだのも無理は無い。

だからと言って他人に迷惑をかけてはいけないのだ。


…俺が少しでもあの男に同情してしまったのは、俺にも人の心が残っているからなのだろうか。


トートとかいっただろうか。

平凡そうだからあえて覚えないようにしようと思っていたのだが、頭の中でその名前がこびりつく。


まあ頑張れよ悪人。

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