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異世界転生なのです、お姉さん!  作者: 乃平 悠鼓
第3章
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第5部 理想郷の産業《2》

 初雪が舞う中、私はドレスの下にフワモコなズボンをはき上から裏ボアのコートをきて庭に来ています。手には毛糸の手袋、首にはネックウォーマー、毛糸の帽子をかぶり足にはあったか靴下と言う完全防備な出で立ちですよ。

 寒いこの時期、女性陣はドレスの下にフワモコズボンをはく人が急増しています。あったかいもんね。動きやすいようにあったかスパッツを作るのもいいかも知れないね!


「お嬢様、こちらです」


 スタンピードでぼろぼろになった庭園の奥の畑は、庭師のシィリンゴ、工場で孤児達と一緒に住んでいた王都から一緒にこちらにきたアルボ、そして農家だったグレーノのお父さんのホルデオが中心になって元の形を取り戻しつつある。

 一つ変わった所は、畑の隅っこから去年まではあっちの世界に行ける扉があった納屋の方の近くまで、私があっちの世界から持ち込んだ “黄緑色の種のない葡萄” と “四角い形の種のない柿” の苗木が植えられていること。

 貴族のお屋敷にはちょっと珍しい、葡萄畑と柿畑になっていますよ。まぁ、庭園の奥が普通に畑になってるのも珍しいけどね!

 で、今私はシィリンゴに見て欲しい物があると言われ、あっちの世界に行ける扉があった納屋が建っていた場所に来ています。


「これでございます」


 そう言って、何の建物もない大地を見つめれば


「ふぉ! はっぱ?」


 納屋があった所に、発芽したらしい小さな葉。ムムム、なの! 私はちょっと難しい顔をして考える。


「どんぐり!?」


 思いつくのは、去年納屋でぶちまけたあっちの世界の山神様の所で拾ったどんぐり。でも……、どんぐりは乾燥に弱く、単に落ちただけでは乾燥によって速やかに発芽機能を失うことが多いって聞いた気がする。

 何より、どんぐりの発芽って春なんじゃないの!? だけど、ここで発芽するのってどんぐりしかないよね! あっちの世界のどんぐりの若葉。


「どういたしましょう」


 シィリンゴは私を見た。


「このままにちておくの! どんぐりはねをはるから、ちかくにはなにもうえないでおくの!」


 私は座り込んでいた体勢からポンと立ち上がり、葡萄畑と柿畑を見た。葡萄も柿もどんぐりも、この近くにある物は全部あっちの世界の物。あっちの世界と繋がる扉があった証なのだから、大切にするんだ。舞い散る雪を見ながら、私はそう思ったの。




「グーちゃん、ちょうどいい所に。」

「ばーば」


 そう言って私を手招きしたのは、前クンルダント当主夫人のミールダさん。前クンルダント当主のアミケッソさんは、昨年コルポールティス商会前会頭のフィーディさんと一緒にこちらにきて以来、ずっとこのお屋敷にいるんだけど、時々奥様のミールダさんにお手紙を書いていたの。

 その内容が、コーメンツには初めて見る物や珍しい物が多く、○○な料理が美味しかったとか○○な物を初めて見たとか言う内容だったから、ミールダさんも “私だってそんな珍しい物は見てみたいわ” と、“我慢できずに来てしまいましたわ” って、船着き場でお祖父様に挨拶してた。

 アミケッソさんと同じく子供好きなミールダさん “ばーばと読んでね” とおっしゃるので、遠慮なく “ばーば” と呼ばせていただいているの。それでね! ミールダさんは小さい頃は身体が弱かったたらしく、レース編みが趣味で達人なみの腕前なの!

 私はもう喜び勇んで、毛糸とかぎ針と棒針を渡しましたとも!! ぶっちゃけ、レース編みも毛糸のかぎ針編みも一緒じゃないですか。ミールダさんも毛糸に興味津々で、そりゃ綺麗にかぎ針でマフラーを編んでくれましたよ! 素晴らしい!!

 今は、棒針を使って初の棒針編みに挑戦中なの。ミールダさんについてお部屋に行くと、出来上がったばかりと思われるピンク色の可愛いソレを、私の首元に巻いてくれました。


「けーぷ?」

「我ながら、よく出来たんじゃないかしら?」


 ミールダさんは少し離れた所から私をみて、うんと頷きました。私も近くにあった鏡を覗きこみます。このケープ、お花の透かし模様が入っていてとっても可愛いです〜♪


「ばーば、あみもののちぇんちぇいになってくだしゃい!」


 今皆にテントで教えている編み物は、100均で買った編み機を使ったもの。各家庭で、簡単に暖かい防寒具が作れたらいいなと思って。ただ、これから先お店で販売するのはかぎ針編みか棒針編みがいいかなって思っている。

 でもね、毛糸の編み物がないこの世界、棒針編みが出来るのは私一人しかいなかったの! 3歳児がどうやって皆に棒針編み教えるんだよ! って思ってたわけだけど、今日めでたく棒針編みの先生が誕生しました!

 来月からかぎ針編みと棒針編みの教室を開こう♪ アミケッソさんも子供達に剣術を教えてくれてて、ご夫婦で先生をしてもらうことになりそうです!




「うむ。」


 お祖父様が考え込んでいますよ。実は今日、このコーメンツの領地から一番近い村の村長さんがきたの。村長さんがきた理由、それはスタンピードによる村の崩壊で、用意できる資金だけでは村が再建ができないと言うこと。出来ることなら、村をコーメンツ辺境伯領の一部として欲しいと言うことだった。

 あの村は村長の三代前のご先祖様が、戦争で上げた功績で一代限りの名誉騎士の褒美として与えられた土地だそう。これと言った特産品もなくギリギリの経営のため、土地の貰い手がなく未だに名誉騎士の家族が引き継ぎなんとか村を存続させているらしい。

 まぁ、貰い手のない貧しい土地を、名誉騎士の褒美と言う名で押し付けた形だね。


「コーメンツりょうのむらにするの!」


 私は声を大にして言ったよ! だってあの村は、畜産でわずかな収入を得ているの。コーメンツの今までの主な産業は農業、野菜や葡萄畑から作られるワインだった。それに、これからは服飾や医薬品、ローズウィンドウなどの工芸品が入る。でも、お肉がないの!

 この領地でも牧場は作るけど、それは毛糸のための羊とホースショーや馬術のための馬用。普通はダンジョンのドロップ品でお肉が出るけど、我が領のダンジョンの中に出る魔物さん達は実体じゃないからお肉は出てこない。でも、お肉は必要なの! お肉大事!


「確かに、肉は大事ですよね」


 マージェさんも言った。そうだよね、マージェさんもそう思うよね!


「でも、これからこの領地はすごく発展することでしょう。すると、その富を狙って来る者もいるかも知れない。この領地は万全の危機対策が出来るでしょうが、離れた村はどうか。コーメンツを脅す材料に使われることもあるかも知れないし、コーメンツの一部であると言うことで村が襲われる確率が多くなるのでは。離れた場所では、助けに行くにも時間がかかりますし」


 なるほど、マージェさんのご意見はわかりました。確かにそうだね! と、言うことは


「わかっちゃの! ちかをつなげましゅ!」


 私は片手をピシッと上げ、宣言しましたとも! お祖父様はちょっとびっくりしたように “地下?” と、呟いた。そう、ダンジョンからお屋敷までも地下で繋がっているし、ダンジョンから新しく建つ冒険者ギルドなんかも地下をチーちゃんに繋げでもらってる。

 村からこの領地まで、チーちゃんに繋げてもらおう。で、トロッコ通せば荷物も運べるし、村に何かあった時地下に避難することもできる。村はあっちの世界の知識を使って何かで囲めばいいし、村で何かあった時ボタンを押してもらったらこっちの警報器がなるとか、なんとでもなるよねー。お肉欲しいもん、村を全力で守るよ♪


「村に視察に行ってみるか」


 お祖父様の言葉に、私も頷いたよ。コーメンツの領地になるなら、建物とか環境整備も考えないと行けないしね!

一口メモ


エスペラント語 → 日本語


ホルデオ → 大麦

ミールダ → 温厚


前回書き忘れていたぶん


コトノ → 木綿



次回投稿は14日か15日が目標です。投稿時間が遅れるかもしれません。

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