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異世界転生なのです、お姉さん!  作者: 乃平 悠鼓
第3章
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第4部 理想郷の復興《3》

「おかちぃ……」


 幼児の短い手を組んで、呟きましたとも!

 スタンピードから十日。毎日毎日仮設住宅(ミニログハウス)を造り続けているというのに、それでも仮設住宅(ミニログハウス)が足りないってどういうこと?って、思うよね!


「お嬢様ー!!」

「グレーノ?」


 向こうから駆け寄ってくるのは、二ヶ月前お屋敷を辞め西の方にある小さな村に帰ったグレーノじゃないか。


「お嬢様! ご無事ですか、お怪我はありませか!!」


 私の前にきて(ひざまず)くグレーノは、ちょっと痩せたかな。綺麗だった両手は荒れていて、働き者の手になってるよ。


「だいじょーぶだよ。グレーノは、どうちたの」

「この領地がスタンピードに巻き込まれると聞いて、いても立ってもいられず戻ってきました。領主様に払うお金をかき集めるのに時間がかかり今日になってしまいましたが、なんでもします。私を使って下さい」


 “グレーノよ、お前もか!” 造っても造っても仮設住宅(ミニログハウス)が足りない原因は、これなの!


 冒険者のアヴェントゥーロさん達が隣国に戻ったその日、私は少しずつ色の確認のために作りためておいた様々な色のレジンのビーズを使って、お祖母様とお母様のアクセサリーを作った。このアクセサリーをつけて、皆に投資を呼びかけてもらうのだ!

 お祖父様にも、丸いレジンのモールドでブローチを作った。ネイル用のジュエリーシールを貼ったりして華やかな出来上がりになったよ。

 翌日、お祖父様とお祖母様は隣国へ、お母様は王都へと旅立って行ったの。この領地からファターロまでは瓦礫(がれき)の山だし、お屋敷のフリージアンからヴェータとフラーバを馬車馬要員として連れて行った。

 お祖父様やお母様が旅立った翌日くらいから、領地から避難していた領民達が戻ってきはじめて、その中に混じって元お屋敷に勤めていた使用人達や、この領地を出て行っていた元領民達が戻ってきはじめたの。

 トルキーソの前の執事だったチェセルヴィストさんの話によると、辞めて行った使用人や出て行った領民の中にはこの領地の財政難を知って、自分に支払うお給料分がなければ、自分達に分け与えられる食料分が減れば、領主様が助かるのではないかと考えて出て行った人達がいるんだって。

 そうやって出て行った人達がこの領地の危機を知って、取るものも取り敢えず戻ってきてくれているそう。皆、家や田畑は住んでる土地を所有する領主からの借り物だから、お金をかき集め足りない分は色々な物を売って領主にお金を払い、この領地に駆けつけて来てくれているんだ。

 皆、外で寝泊まりしてもいいからこの領地のために働かせてくれって。この寒い12月に外で寝泊まりなんてとんでもない!

 この領地のために無理をしてまで戻って来てくれた人達を、外でなんて寝かせられません! ということで、造っても造っても仮設住宅(ミニログハウス)が足りない状態が続いているのだ!


 グレーノも、他の土地から来てくれた元使用人の人達と一緒で、服は汚れてしまってる。ファターロからここまでは瓦礫(がれき)の山で、道もなくなり歩くことすら大変らしい。

 しかも、宿屋もお店も民家も何にもないんだもの。その中を住み慣れた土地を捨てて、この領地のために家族を連れて来てくれるんだ。ありがたい、ありがたいよね!


「お嬢様、父と母です」


 グレーノは、後ろにいるご夫婦を紹介してくれたよ。お祖父様やお祖母より、少し若いくらいだけど


「う?」


 私は、コテンと首を傾けたよ。確か、グレーノのお父さんって、身体を壊して働けなくなったって言ってたよね。今見る限りは、すごく元気そうだけども。


「お嬢様、薬をありがとうございました。お嬢様からいただいた薬のおかげで、すっかり身体もよくなりました」


 “マジかぁー!!” 日本の薬、そんなに効いたの。びっくりしてグレーノを見ると


「領主様にお金を払えたのも、親父がすっかり良くなって二人で働けたおかげです。それに、いただいたドロップ品の “正常” を商業ギルドで売ってお金にしました。残ったお金はこれだけですが、領地のために使って下さい。」


 と言って差し出された手の上に、まだ小さな自分の手をおいて私は首を振ったよ。


「グレーノ。あれは、おじぃしゃまがグレーノにあげたの。これは、グレーノのものだよ。」

「お嬢様」

「さぁ、なかはいろー」


 私はグレーノの手を引っ張ってお屋敷に戻ると、チェセルヴィストさんの所に連れて行った。グレーノは元々お屋敷の使用人だから、これからは他の使用人達と同じ部屋に寝泊まりしてもらうことになる。


「グレーノ、またあとでねー」


 お屋敷を出ると、黒竜さんが翼をはためかせ降りてきた。


「クロちゃん、ありがとー!」

「うむ。材料はすべて運んでおいた」


 黒竜さんは呼びにくいので、クロちゃんと呼ばせてもらってるんだよ! クロちゃんには、スタンピードの時からお世話になりっぱなしなの。

 スタンピードの翌日、ダンジョンマスターの部屋に料理を持って行った時、黒竜さんに地下を掘る手伝いをしてもらえないか聞いたんだ。すると、黒竜さんには地下を掘ることはできないけど、地竜の知り合いがいるから連れて来てやろうって言って、連れて来てくれたんだよね。

 その後、2×4(ツーバイフォー)の木材の運搬をしてくれていたフリージアン2頭が王都に行って、ちょっと時間がかかってるってダンジョンマスターの部屋で呟いたら、黒竜さんが手伝おうって言ってくれたの。

 クロちゃん、すごくイイ竜!! ハンバーグ追加しちゃう!!









 その日の夕方、ダンジョンマスターの部屋に夕食を持って行く。もちろんハンバーグとコロッケなの!


「おぉー幼子、地下道りの半分は完成したぞ」

「ほんと、チーちゃん!!」

「毎日、コロッケ分は働いているからな」

「ありがとー! きょうはね、むらさきいものコロッケと、カボチャのコロッケと、コーンたっぷりコロッケなの!」

「そうか!!」


 どれも美味しいのよ! 私はコロッケをテーブルの上に置くと胸を張った。目の前にいるのは、見た目アルマジロの地竜さん。黒竜さんよりは小さいけど、地下道造りを担当してくれているの。

 地竜さんことチーちゃんが造ってくれた地下道は、大きくて崩れないようにコーティングされてて素晴らしい空間なのよ! クロちゃんは肉食だけど、チーちゃんは土の下で育つ野菜が好物らしく、コロッケがお気に入りなの。

 クロちゃんチーちゃん共によく働いてくれるので、毎日料理(クック)長にはハンバーグとコロッケ作りをお願いしているのだ。ちなみにクロちゃんは和牛のハンバーグが一番のお気に入りなんだけど、和牛がもう手に入らないと知ると、よそのダンジョンに和牛に似た感じの肉質を持つ魔物がいると言って狩ってきてくれたりするの。

 しかもそれが超巨大で、領民にも分けてくれるのだ。ほんとにイイ竜! チーちゃんもコロッケと魔物をダメにするクッションが気に入ったらしく、しばらくはこの領地にいてくれるらしい。

 今も小さくなってクッションの上にいるよ! いい働きするなー、人をダメにするクッション!









「お嬢様ー、どこ行ってたんですか? 捜しましたよ!」

「ダンジョンいってまちた」


 ダンジョンマスターの部屋に夕食を持って行き、“うん、今日もいい仕事したなー私♪” とルンルンで帰ってきたら、私を捜していたらしいフィーロさんとあった。なにかな?


「船で、父から手紙が届きました」


 おや、お祖父様と一緒に隣国の王家に行ってくれたフィーディからお手紙がきたみたい。


「こちらに帰って来る時に、大工と料理人の見習いを一緒に連れてくるらしいです。お嬢様に報告しておくようにと」

「ふぉ! にゃんで、ぐうな?」


 びっくりして、思わず目を見開いたよ!


「今この領地で一番決定権があるのは、お嬢様ですよね?」


 そうか、そうなのか! 私、まだ3歳児だよ。いいのか? まぁ、いいか?


「わかったの!」


 フィーロさんを連れてマージェさんを捜す。あっ、いた!


「マージェさん、プレハブつくるー」

「お嬢様、またいきなり何ですか」


 フィーロさんが、お手紙の内容をマージェさんに伝えてくれる。


「なるほど。で、お嬢様は隣国から来る見習いの皆さんをプレハブにと?」

「あい! テント、ゆきふるとあぶない」


 来年になれば、雪も降るだろう。多少の雪なら大丈夫かも知れないけど、少しでもしっかりした場所が欲しい。


「そう言うことなら、ちょっとお嬢様に見てもらいたい物があります」

「なにー」


 マージェさんにくっついて、フィーロさんと一緒に歩いて行くの。お屋敷の地下の一角には、錬金術の研究所から避難させるために持ち込まれた物がたくさんある。その地下の奥に、それはあった。


「ふぉぉぉ!! かぷちぇるほてゆ!!」


 そう、それは二段になったカプセル状のお部屋。箱形の簡易ベッドで、外部とはブラインドで仕切れるようになっている。


「な、何ですか。これ」


 フィーロさんは目の前にある物が何かわからず、首を傾けているよ。


「お嬢様、前ダンジョンマスターの部屋で、若い成り立ての冒険者の中には宿泊代が払えず森で野宿している者もいるって話をした時に、カプセルホテルみたいな安い値段で泊まれる所があればいいのにって言ってましたよね。あの後、ダンジョンマスターにカプセルホテルを教えてもらって、瑠璃さんに参考になりそうな本を頼んでおいたんです。」

「おねえ…しゃん」


 マージェさんの言葉に優しかったお姉さんを思い出して、胸がチクリと痛んだ。マージェさんは私の目線に合わせるようにすると


「資料集めを手伝ってくれた瑠璃さんに見せることはできないですけど、瑠璃さんにすごいねって言ってもらえる物を造ろうと思って。確認してもらえますか、お嬢様」


 私は “うん” と頷いて、カプセルの中に入った。横の壁に背中をつけて、ペタンと座って辺りを見回す。カプセルホテルに泊まったことはないけど、なんだか懐かしい気がするの。いいカプセルだと思う。


「プレハブを造って、中にこのカプセルを置きましょう」


 マージェさんの言葉を聞きながら、私もお姉さんが見てくれたら “頑張ったね! グーちゃん” そう言ってもらえる街を造ろう、そう思ったの。

次回投稿は6日か7日が目標です。投稿時間が少し遅れるかもしれません。

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