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異世界転生なのです、お姉さん!  作者: 乃平 悠鼓
第3章
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第4部 理想郷の復興《2》

「あの仮設住宅(ミニログハウス)は素晴らしいな」

「はい。あれなら仮設ではなく、普通の住宅としても十分に通用します」

「私は、段ボールベッドとマットレスが気になりました。ぜひあれに寝てみたい」


 アミケッソさんやフィーディさんやフィーロさんは、視察で見た仮設住宅(ミニログハウス)と、中に設置されていた段ボールベッドやマットレスがお気に召したようです。

 仮設住宅は、段ボールベッドにマットレスやあったか毛布、小さなシンクがついただけの流し台に冷暖房とトイレが完備されている。段ボールは中に収納ができるから、収納も完備だね!


「テントも凄かったですよ。あのテントがあれば旅が楽になります!」


 フィーロさんが気に入ったのは領民が寝泊まりしている大きなテントじゃなくて、冒険者さん達にプレゼントした二人用のあっちの世界テント。登山に使う本格的なテントで軽量でUVカット、設営も簡単で耐水性と防風性に優れたやつ。しかも、魔石で冷暖房完備なの。


 スタンピードの当日は領民用の大きなテントを設営するのが精一杯で、騎士団はお屋敷に泊まってもらい隣国の冒険者アヴェントゥーロさんをはじめとする冒険者の皆さんには、あっちの世界のテントを渡して休んでもらったらしい。すると翌日


「あのテント、居心地が良すぎるわ。あれを使ったら、今までのテントは使えないわよね」


 と、冒険者のお姉さん達が話をしているのを聞いたから、テントとテントシート、エアマット、寝袋をセットにして、冒険者の皆さんに1セットずつプレゼントしたの。

 だって、この領地を守るために命懸けで戦ってくれたんだよ! いくら隣国から雇われてきていると言っても、お祖父様もいくらかお礼を渡そうとしたんだけど、依頼料はクンルダント様から頂いているからと受け取ってもらえなかった。

 だからね、テントセットを作って渡したの。それはもうすごく喜んでもらえて、


「これ、もらってもいいの? 本当に?」


 って、皆目をキラキラさせながら呟いてた。私の手を握りしめ “ありがとう! ありがとう!” って何度も言ってたもんね! 見てる私の方が嬉しくなったよ。いい仕事したね、私!


 で、冒険者さん達と知り合いだったフィーロさんはテントを見せてもらったらしく、興奮ぎみにテントの素晴らしいさを語ってたよ。

 その横で、大工の皆さんはチャルペンティストさんから2×4(ツーバイフォー)の説明を受けています。あっ、フィーディさんが2×4の説明に興味を持ったようですよ。

 うちの騎士団とお祖父様にお祖母様、そしてお母様もやってきたので、さっそく皆さんに私の隠し財産を見ていただきましょうか。


「おじぃしゃま! ぐうな、かくちじゃいさんもってきたの!」


 テテテテとお祖父様に駆け寄って行くと、私を抱き上げて皆が集まるテーブルの真ん中まで連れて行ってくれました。


「いったい、何を持ってきたんだいグルナ」

「いいものでしゅ!」


 “えへん” と胸を張る幼児に、周りにいる人達が “幼児の隠し財産ってなんだ?” って目で見てるけど、そこは気にしないー。できる3歳児は、黙ってポシェットから二つの木箱を取り出し、それをテーブルの上に置くのよー♪

 それは、ホームセンターで買った普通の木箱。その木箱に色を塗りニスを塗り、ラインストーンを飾り付けてみたの!


「まぁ、綺麗な箱」


 お母様は、ラインストーンで美しく飾り付けられた木箱を見て声を上げた。そうでしょう、そうでしょう、でもこれだけじゃないんだよ! 私はニッコリ笑って、飾り付けられた二つの木箱の蓋を持ち上げましたとも!


「こ、これ……は……!」


 そこにあったのは、二つのアクセサリーのセット。箱の中央に指輪がありその上にブローチ。指輪の両横にイヤリング。そして箱の下から両横、上にかけてネックレスが配置されている。

 三種類の大きさの球体モールドを使って、レジンを色づけして作られたビーズ。そのビーズがさまざまな形を作り出し、見たこもないアクセサリーが並んでいる。

 一つがブルー、パールマリンブルー、シルバーの色合いのセット。もう一つはホワイト、パールホワイト、ゴールドの色合いのセットだ。

 いずれもグロスでコーティングされ、キラキラと輝いている。その中でもネックレスや指輪の中央、垂れ下がるタイプのイヤリングの一番下につけられた球体のドームの中には、小さなドライフラワーが収められていた。

 そして、ビーズの一部にゴールドやシルバーでつけられた小さなペガサスとドラゴンのエンブレム。美しく繊細で華やかなそれは、この世界ではあり得ない品物。


「こちらは、宝石……なのですか?」


 思わず、と言った感じでフィーディさんが呟いた。


「ちがいましゅ。これは、だんじょんでどろっぷちた、レジンをつかってつくりまちた」


 そう、ぺルルとキャメリアに手伝ってもらって、私が手作りした王家への献上品。“よいちょ、うんしょ” と、この小さな手で一生懸命作ったんだよ!

 ホワイトにゴールドはこの国の王族の正装の色合い。ドラゴンはこの国のエンブレム。そして、ブルーとシルバーは隣国の王族の正装の色合い、エンブレムはペガサスなの。


「おじぃしゃまとおばぁしゃまは、これをもってりんごくのおーけにいっちぇ、とーしをよびかけてきてくだしゃい。おかぁしゃまは、これをもっちぇおーひさまにあって、ぜーのめんじょかげんがくをおねがいしてくだしゃい」


 そう、そうだよ! 領地の復興には “先立つもの” つまり、()()がたくさんいるのだ。焼け野原になった何もないこの領地を復興させるためには、まず出て行くお金 “税” を何とかしたい。そして、入ってくるお金を増やしたい。

 そこで出番なのがレジンである。この世界に存在していないレジンは、その美しさもさることながら、宝石と違って軽く、ドームにすれば中に色々なパーツを入れることもできる。なのに、安い! ここ重要なのでもう一度、安い!

 このレジンのアクセサリーが発表されれば、貴族から平民まで皆が分け隔てなく、宝石のように美しいアクセサリーを持つことができるようになる。しかも、貴族には技法を凝らして作った物をお高く、平民には簡単に作くれるタイプの物をお安く販売でき、同じレジンでも全く違うタイプの物を売り出せるのだ。


「お嬢様、朝の投資のお話はこれですか」


 フィーディさんが、私に目線を合わせて言う。


「あい!」


 他にもあるけどねー。元気よく手を上げてお返事すれば


「このレジンといい、仮設住宅(ミニログハウス)といい、サンドイッチといい、コーメンツ様の領地には見たこともない珍しいものがたくさんある。そう言えば、ドレスや服のデザインも、コーメンツ様から教えていただいたもの。私の方からお願いいたします、ぜひ投資をさせて下さい。」


 フィーディさんが頭を下げたの。“いいよー” 投資の見返りは、見たこともない商品ね。

 お祖父様とお母様も、王家の方との謁見のついでに、貴族や商人の人達に投資を呼びかけてきてね。見返りは、それなりの利子と商品で。

 そこの所は……と辺りを見回すと、騎士団の財務総監プロプヤードさんが “お任せ下さい” と言ってくれました。そして、商業ギルドのサジューロさんも交え、話し合いが始まったよ。


 隣国の王家にはコルポールティス商会の()()を使って謁見することができるんだって。だから、フィーディさんがお祖父様とお祖母様と一緒に行ってくれることになった。早い方がいいだろうと言うことで、明後日の船で隣国に向かうらしい。

 お母様の方は王妃様とは親しい関係で、実はファターロのダンジョン崩壊がわかってすぐにお手紙が届いていたそうなの。だから、王都に行けばすぐに謁見は可能らしい。

 お祖父様達には騎士団から外務総監の部下の人と、財務総監の部下の人が一緒について行く。そして護衛は、ちょうど隣国のSランクの冒険者アヴェントゥーロさん達がいるから、彼らに頼むそうだ。

 お母様にはトルキーソと、騎士団の財務総監の部下の人と事務総監の部下の人が一緒に行く。そして護衛は、このお屋敷のもと従者(ヴァレット)の息子さん、Aランクの冒険者セゾーノさん達が行ってくれることになった。


「今日中に私が息子に手紙を書こう。アヴェントゥーロ達には、明日クンルダントの屋敷に手紙を届けてもらい、王都に行く準備を整えてもらう。息子達が、ほとんどのことはしてくれるだろうが」


 ありがたいアミケッソさんのお言葉だけど、それだとアヴェントゥーロさん達は明日隣国に帰っちゃうの。大変だー!! 私はその場を途中退場して


「キャメリアー! ぺルルー! ロリエー!」


 と、三人のメイド達を探して回ったよ。


 この領地を守ってくれた冒険者さん達に、本物の勲章ではないけどロゼットを作って渡そうと思っていたの。でも、まさかこんなに早く隣国に戻るとは思ってなかったから、何の用意もしてないのよ! 慌ててキャメリア達を探し、手伝ってもらう。


「いまから、ろじぇっとをつくりましゅ!」


 ピシッと片手を上げて宣言し、ロゼットを作ります。用意するのはプリーツの部分になる生成(きな)り色をしたトリコロールのリボンと、真ん中のモチーフをつくる丸いレジンのモールドとクリアのレジンと着色剤のゴールド、そしてレジン用コート剤のグロス、テール部分のゴールドのリボン、裏面になるフェルトシールとボンドなどなど。

 まず、ロリエに手伝ってもらってプリーツの部分を作っていく。丁寧に上を広く下を狭く、幅を揃えて綺麗な円形を作っていくの。

 そして、そのプリーツの上につけるモチーフはぺルルに手伝ってもらい、クリアのレジンにゴールドの着色剤を混ぜた物をモールドに入れて硬化。出来上がった丸いレジンの表面に、アタッチメントのパフを使ってゴールドの着色剤をポンポンと乗せていく。

 綺麗なゴールドになったら、その上に天使の羽のシールをペタリ。シールが剥がれないようにクリアのレジンでコーティング。

 そしてその上に、まんべんなくグロスをコーティングすればキラキラゴールドのモチーフが出来上がるの。そのモチーフを、プリーツの上にボンドで接着。裏返してテールになるリボンをつける。

 キャメリアに手伝ってもらっていた、丸く切られたフェルトにブローチピンをつけた物をもらい、テールの上にペタ。

 これで、天使の羽を勝手にエンブレムにした、我が領地の勲章のようなロゼットが出来上がったの!









 翌日、船着き場にアヴェントゥーロさん達を見送りに行く。そして、船に乗る前の5人の前に立ち


「いのちをきけんをかえりみじゅ、コーメンツをまもってくれたえーゆーに、かんちゃのきもちをこめてこえを」


 色々残念な所はあったけど “命の危険をかえりみずこの領地を守ってくれた英雄にこれを” と、言えた! たぶん。

 私は、1人1人に “ありがとー” と言いながら、その小さな箱を差し出した。皆は顔を見合せながら、それをそっと受け取ってくれたよ。そして箱を開け、5人が目を見開いた。


「これは、勲章?」

「私達、冒険者に?」

「裏を見てみろ。名前が入ってる」


 ロゼットの裏にはスタンピードの日にちと、コーメンツを守った英雄○○○○と、それぞれ小さいけど名前が入っている。しばらく皆ロゼットを持って固まっていたけど、アヴェントゥーロさんは私の前でひざまずくと


「ご用がある時はいつでもお呼びください。どこにいても、必ず駆けつけます」


 そう言って船に乗り、隣国に戻って行った。


「お嬢様、まだ隠し財産をお持ちですか。勲章なんて、国を守った騎士くらいしかもらえませんよ」


 そう言ったフィーロさんに


「ここでは、がんばったひと、ひとをたすけたひと、みんなロゼットがもらえましゅ!」


 もちろん、今回みたいな本格的なやつじゃなく、簡単なのになるけどね。 “ここは、そんな領地になるんだから” と言ったら、 “想像もつきません” って言ってた。

次回投稿は11月2日か3日が目標です。

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