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異世界転生なのです、お姉さん!  作者: 乃平 悠鼓
第3章
47/63

第2部 理想郷の崩壊《2》

試練の本番です(>_<)

今回は、説明文が多くなっています。頑張れ、グルナ達!!o(><;)(;><)o


 激しくなる地響きと、目前に迫りくる黒檀(こくたん)色の塊。まるで暗黒色の何かが、血を浴びて赤く染まったようにも見える。

 想像をはるかに越える数の、狂った魔物達。いくら前世の記憶がある中身アラサーな私でも、こんな光景見たことないよ!

 小さな身体の小さな足元で、何かが崩れ落ちる感じがした。


「ウォータースクリーン展開!」


 その声に、ハッとして自分を取り戻しましたとも! 地面に埋め込まれた器具から大河の水が噴水のように溢れ出て、目の前が水の幕に覆われて魔物達が見えなくなった。

 同時に、屋根からスプリンクラーの水が流れ出て、下と上から二重の大河の水がお屋敷を守る。地面の器具は、ダンジョンの魔石を大河の水に溶かした物でコーティングされ、どんな衝撃にも耐えられるようにしてもらった。器具じたいが壊れて使えなくることはないと思うけど、不具合は起こるかも知れない。

 お屋敷の全面だけは、5メーター先にもウォータースクリーンが設置され、二重構造になっている。冒険者や自警団、騎士団の一部の兵達は、最初のウォータースクリーンの後ろに立ち、後方のウォータースクリーンの後ろ、お屋敷の目の前に、お祖父様達この領地の主要メンバーと騎士団の上官達が控えている。

 ウォータースクリーンが展開されると前方の様子が見えなくなるため、ダンジョンマスターの力を借りて、お屋敷の屋根の上に数台のカメラを設置。4K液晶テレビを持ってくるわけにはいかないから、白い布の上に映像を投影。

 白い布はお屋敷の避難スペースとお祖父様達本陣、そして一番前のウォータースクリーンの両横に置かれいる。一番前の両横スクリーンは、すぐに壊されるのは承知の上。前方が見えない冒険者さん達に魔物が迫る間隔を確認してもらうだけの物。


 そしてーーー。魔物の塊の先頭部分が、勢いよく水堀に飛び込んだ。

 水堀には大河の水を張り巡らせ、尚且(なおか)つダンジョンマスターから聖石に近い力を持つ水晶(クリスタル)のさざれ石のような物をもらい、それを大量にばらまいている。

 その水堀の水に触れると、魔物達の体は水に溶けるように消えていく。だが、そう思えたのも最初だけ。

 圧倒的な数を誇る魔物達は、次々と水堀に飛び込み消えかかる魔物達を踏み台に、次の魔物がその上を、また次の魔物がその上をと、ジリジリと水堀の先へと近づきつつある。

 そして、少しの間をおいて、最初の一団が水堀を越えた。それからは、なだれ込むように魔物達が迫ってくる。


 最初のウォータースクリーンから、魔物の顔が飛び出す。下からの水により、触れた部分が溶けるように消えて行く。だが、その上からさらに別の魔物が顔を覗かせる。そうして積み上がっていく魔物を前に、下になる魔物達は消えて行くが、上に積み重なる魔物達の体が次第にウォータースクリーンの中に入ってくる。

 入ってきた魔物達には、数台のポンプ車から大河の水が放出され、直接水を浴びせる。このポンプ車は、お姉さんがお友達に頼んで、小型の消防車の中古を買い取ってきてくれたもの。それを、ダンジョンマスターに増やしてもらった。

 それでも中に入ってくる魔物は、冒険者さんや自警団や騎士団の皆が倒す。皆の剣には魔石がはめ込まれている。魔法のないこの世界で、唯一魔法の真似事ができるのがダンジョン。魔素が溢れかえるダンジョンでは、魔法のようなものが使えるのだ。

 魔石を剣にはめ込むことで、一時的に今この場で魔法の真似事が使えるようにしてもらっている。だがーーー。


「前方、一ヶ所のウォータースクリーンが止まった!!」


 たった一ヶ所でも水が止まれば、そこから数えきれないほどの魔物がなだれこんでくる。


「お嬢様!!」


 キャメリアの声が聞こえるような気がするけど、小さな足を前にだしファイルの入ったポシェットを持って走り出す。途中からマージェさんに抱っこされ、本陣横のウォータースクリーンの操作盤を確認。

 ファイルを開くとメティイストさんとチャルペンティストさんが来てくれて、私の指示を前方に伝えてくれる。何度も何度も練習した。幼児の言葉を聞き取ってもらうために。

 いつの間にかリブロも側にいて、スケッチを描いている。剣と何かがぶつかる音、皆の声、魔物達のうなり声。何もかもが生々しい。

 “うぉーーー!!”“ギャーーー!!” 誰か、怪我をしただろうか。皆にはダンジョンのドロップ品の【正常】と薬草で作ったグミのようなものと、【正常】とあちらの世界の栄養ドリンクを混ぜ合わせた飲み物も渡している。

 その時ーーー。目の前のウォータースクリーンから、獣の腕のような物が伸びてきた。本陣にいた騎士団の一組が、それに応戦する。


「グルナを中に!!」


 お祖父様の声がして、マージェさんに抱っこされ、リブロと一緒にお屋敷の中に駆け込む。このままでは、二つ目のウォータースクリーンも突破されてしまう。

 お屋敷の奥の部屋では、動くことのできないお年寄りや、身寄りがなく生まれ育ったこの地を離れたくないと隣国へ行くことを断ったお年寄り、また家族と離れるのは嫌だと残った自警団や騎士団の家族の一部がいる。

 前のスクリーンを食い入るように見つめる者と、後ろの窓から庭園を見つめ震える者もいる。マージェさんに下ろされた私は、真っ直ぐに窓に向かった。

 見つめた庭園は、庭園とメイド寮はまだある。だが、少し奥の従者(ヴァレット)従僕(フットマン)達の寮は、お屋敷の両脇から大河に向かって進む魔物達が徐々に横に()り出してきて、半分は破壊されていた。その先の畑は見る影も無い。

 “あぁ、畑の収穫を終わらせておいてよかった” そんなことをぼんやりと思った次の瞬間、何か大きな音がしてお屋敷が揺れた。私は急いで廊下に出ると、窓の外を見た。

 窓の外に見えたもの、それは黒檀色をした大きな熊のような魔物だった。近くにいたリブロは持っていたスケッチブックを落とし、私は力なくその場に座り込んだ。


「お嬢様!!」


 キャメリアの声に、最初に我を取り戻したのはリブロだった。


「お嬢様、こっち!!」


 落としていたスケッチブックを拾い上げ、私の手をとるリブロ。だけど、私は動けなかった。だって、熊のような魔物がじっとこちらを見ていたから。目を逸らしたら、その一撃が窓を突き破り廊下に入ってきそうだったから。


「お嬢様!!」


 リブロの叫び声と、熊のような魔物の振り上げられた腕が、窓に向かって振り下ろされるのは、ほぼ同時だったか。その時ーーー。


『グアァァァー!!』


 と言う唸り声のようなものが聞こえ、何か水色のものが熊のような魔物の腕に噛みついていた。

 それは、パステルブルーの色をした熊。ダンジョンマスターの部屋に行くとすぐにやってきて、私を “たかいたかい” して遊んでくれる、アメリカグマくらいの大きさの熊さん。

 いや、違う。今はそれよりももっと大きくて、ファターロのダンジョンから放出された巨大な熊のような魔物に劣らない大きさになっている。


「くましゃん!」


 パステルブルーの水熊(ウォーターベア)が熊のような魔物を押し返す。するとその後ろを、同じく巨大化した火狼(ファイアウルフ)(ゴールド)ユニコーン、氷鷲(アイスイーグル)などが走り抜けていく。この領地のダンジョンの魔物さん達が、皆巨大化して助けにきてくれた。


「グルナ、部屋の中に入れ!!」

「たんじょんまちゅたー!!」


 声がした方向を見渡すが、ダンジョンマスターの姿は見当たらない。


「あっ、危ない!」


 リブロの声に窓の外を見上げれば、黒檀色の熊のような魔物の鋭い爪を持つ腕が、パステルブルーの水熊の顔に振り下ろされた所だった。真っ赤な何かが、ぶわっと飛び散る。


「くましゃん! くましゃん、やだーーー!!」


 水熊の体が、ズルリと横に崩れ落た。“やだ、やだーー!!” 私はその場に立ち上がり、廊下を走り出そうとする。


「お嬢様、だめ!」


 リブロが私の手を掴む。だけど、だけど、クマさんの所に行かなくちゃ。私は “いくのーーー!” と、私の手を掴んでいるリブロの手を、反対側の手で上から持って引っ張った。その時、空間をつんざくようなすさまじい音がした。


 それはまるで、前世の日本で見た怪獣映画。核兵器によって現れた、高層ビルほどの大きさの怪獣王の咆哮(ほうこう)に、とてもよくにていた。

 見上げた空は真っ黒に覆われ、まるで稲光のような鋭い光が、すべてを包み込んだ。


次回投稿は9日か10日が目標です。

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