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異世界転生なのです、お姉さん!  作者: 乃平 悠鼓
第3章
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第2部 理想郷の崩壊《1》

ほのぼのな?スタンピードを目指せ! と言うことで、緊張感のカケラもなくあっさりと『理想郷の崩壊・1』まで来ました。『理想郷の崩壊・2と3』は、緊張感のカケラもなくあっさりと、とはいかないと思いますが次回から魔物との戦いが始まります。(>_<)

「グルナ、やっぱり一緒に行きましょう。いいえ、お母様も一緒に残るわ」

「コライユ」


 私は今、お祖父様に抱っこされて船着き場に来ていますよ。ダンジョンマスターが、四日以内にスタンピードが起きると伝えてきてくれたの。

 隣国のクンルダントさんは、冒険者さん達にお手紙を預けてくれていて、コーメンツ辺境伯領から出られない領民と領主家族を受け入れる準備がある。手厚く迎え入れるから、船でこちらに送ってもらってかまわないと。だから、その日のうちに皆で話し合ったの。


 あの日、お祖父様は私にこう言った。


「グルナ、あちらの世界に行っているかい」


 っと。私は、静かに首を左右に振った。


「とぴら、こわりぇたら、もとってこりぇない」


 お祖父様の言葉の意味は、よくわかっている。でももし、スタンピードの魔物達に納屋の扉が壊されたら、こちらの世界に戻ってこれなくなる。それは絶対にダメ!!

 だから、あちらの世界には行かない。それにね、お祖父様。あちらの世界は、戸籍のない異世界人が簡単に生きて行くことはできないんだよ。


「じゃ、皆でクンルダント領に行きなさい」

「アンブル!」

「御父様!」


 お祖父様の言葉に、お祖母様もお母様も叫んだよ。家族は、いつでも一緒だって。でも、お屋敷を捨てることはできないし、かといってこの家を継ぐことになるお母様を、一緒に危険にさらすこともできない。

 自分に何かあった時、先代が賜ったこの地にコーメンツの名をそのまま残すためにも、お祖父様とお母様が離ればなれになるのは仕方がないこと。それが、貴族のつとめでもあるからね!

 今後の領地経営のために最悪を考え、お母様とお祖母様とトルキーソにはクンルダントに行ってもらう、って。


「旦那様! 私はここに残り、旦那様と共に戦います! お側を離れるなど、執事(バトラー)の選択肢にはございません!」

「トルキーソ。お前にはどうあっても、コライユの補佐をしてもらわなくてはならん。トルキーソ、グリシーヌとコライユを頼んだぞ」

「旦那様!!」


 そして、お祖父様は私と視線を合わせ


「グルナ、クンルダントには行くね。コライユと一緒に」


 と、言った。私はまた、静かに左右に首を振りましたとも。


「グルナ!!」


 と、お母様の悲鳴が上がったけど、水堀もウォータースクリーンも、説明書片手に私と皆で作ってきたんだよ。

 何か不具合が出た時、故障した時、あの分厚いファイルを正確に読んで理解できる私がいなくてどうするの?


「さいこ、たんじょんいく。ぐうな、たいちょうぶ!」


 本当に危険になったら、私ダンジョンマスターの部屋に逃げ込むようにするよ。だから大丈夫、お屋敷に残るの。


 お母様は、私と残ると最後まで頑張ったけど、お祖父様に説得されお祖母様と船に乗った。


「ぺルル。こえ、おねかい」


 私は、お母様達と船に乗るぺルルに、一つのマジックバッグを手渡した。お祖父様からもらったそれには、この数日ぺルルとキャメリアにずっーと手伝ってもらって、やっと作り上げた品物が入っている。

 そして、様々な100均の商品も入っているのだ。もしすべてがなくなっても、これがあれば領地の再建ができるように。

 ぺルルは、レジン作りが上手。だから、レジンの作りてを残す意味でクンルダントに避難してもらう。

 同じくメイドのロリエも、私が教えた洋裁の技術を残すため行ってもらう。2人とも、最後までお屋敷に残ると言っていたけどね。

 孤児院の子供達に領民達できる限りを乗せて、船は大河を渡り隣国へと向かって行った。


 “バイバーイ!!”と、元気に船を見送って残ったのは


「屋敷に戻ろうか」

「あい!」


 お祖父様と私と


「さぁ、忙しくなりますわね。トルキーソに代わり、頑張らせていただきます」

「料理の方は任せてくれ」

「はい。私も久しぶりに、頑張らせていただきます」


 “トルキーソが隣国に行くなら、当然私はお屋敷に残って中を取り仕切ります” と言った女中頭(ハウスキーパー)のスリジエ、“料理作りは誰にも任せられん” “私も久しぶりに、お屋敷のお仕事に戻らせていただきます” と言ってくれた料理(クック)長のティヨルとノワイエ夫婦。

 “お嬢様がこちらにおいでなら、こちらが私の居場所です” と、ニッコリ笑顔で言ってくれたキャメリア。その他、数名のメイドと従者(ヴァレット)従僕(フットマン)

 もしこちらが全滅しても、すぐに立て直しができるように、お祖父様側とお母様側にわけられた。そして


「またね」


 孤児院の子供達に手を振って船を見送っていた9歳の男の子、リブロ。この子は孤児院にいた子供だけど、すごく絵が上手なの。

 100均で買ってきた塗り絵と色鉛筆を孤児院に持って行ってしばらくたったあと、孤児の食堂で大人しく絵を描いていたのがこの子。初めてその絵を見た時は、本当にびっくりした。天才だと思った。

 だから、それからはこの子にスケッチブックや色鉛筆や絵の具を渡して、自由に絵を描いてもらっている。

 もちろん今回、子供だし孤児院の皆と隣国に行くべきだと思ったけど、リブロはスタンピードを絵にして残すことを選んだ。

 魔物のスタンピードは、話として伝えられてはいるが、たいした資料はない。絵として何か残せれば、今後役に立つことがあるかも知れないと、今回例外的にお屋敷に残ることになった。


 お祖父様に抱っこされお屋敷に戻ると、こんな幼児一人と子供がいることで、クンルダントから来ていた冒険者の皆さんはびっくりしていた。


「本当に、大丈夫なんですか!」

「いざと言う時は、ダンジョンマスターの部屋に逃げ込むことになっている」

「あい!」


 お祖父様に声をかけた冒険者のリーダーであるアヴェントゥーロさんに、私は元気に手を上げて答えましたとも!

 できる3歳児を目指している私は、足手まといなんかにはなりません!


「こう見えて、お嬢様は賢く勇敢。心配はいらないでしょう」

「あっ! チェチェルビチュトしゃん!」


 やって来たのは街に住んでいるおじいちゃん、チェセルヴィストさんです。お屋敷で、トルキーソの前の執事さんだった人ですよ。


「トルキーソが留守の間は、執事の替わりとして頑張らせていただきます。まだまだ、若い者には負けません」

「ハッハハハ、頼んだぞチェセルヴィスト」


 年を召したとは言え、チェセルヴィストさんに対するお祖父様の信頼度は高いらしい。


「こちらでしたか。地下への移動終了しました」


 マージェさんが、廊下を歩いてやって来た。このコーメンツ伯領には、大切な物がたくさんある。ダンジョンマスターのチートで生み出された物とか、ダンジョンマスターのチートで生み出された物とか、もうそのほとんどがダンジョンマスターが生み出したチートな品物なんだけど。

 そこに、私があちらの世界で買った様々な商品が加わる。これを守るため錬金術の研究所から、ダンジョンマスターが作ってくれたお屋敷の地下室へ、すべてを移動させていたのだ。


 次の日、そしてまた次の日と過ぎた翌日の朝、ダンジョンマスターから “ファターロのダンジョンが今崩壊した” と、連絡がきた。明日の昼には、コーメンツの領地に入ってくると。


 そして次日のお昼頃、大地を揺るがす地鳴りのような音と地震のような揺れがして、高台のお屋敷の窓から見つめる領内は、瞬く間に視界を埋め尽くす黒い魔物の塊と、土煙に覆われた。


「来たぞー!! 冒険者、自警団、騎士団は全面に! ウォータースクリーン準備!!」

「領民と屋敷の人間は、奥の部屋に急げ!!」


 魔物達とコーメンツ辺境伯領との戦いの幕は、今きって落とされた。

一口メモ


エスペラント語 → 日本語


リブロ → 本

アヴェントゥーロ → 冒険

チェセルヴィスト → 執事



次回投稿は5日か6日が目標です。

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