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異世界転生なのです、お姉さん!  作者: 乃平 悠鼓
第3章
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第1部 理想郷のスタンピード《3》

「これが、ショベルカー、なのか」

「あい」


 お祖父様は、お姉さんのお家の前の駐車スペースに、ドーンと置かれた小型ショベルカーを見てビックリしています。私的にはちょっと小さいなぁ……と思うけど、そこはダンジョンマスターがチートで大きくしてくれるから大丈夫!、なはず……。

 お姉さんの知り合いの人、ここまで運んでくれてありがとうございました!!


「ありあと」


 そっと心の中で手を合わせ感謝の言葉をのべながら、見えないその人にペコリと頭を下げた。


 その後は、ミニログハウスの材料やテントなど、毎日来るわ来るわ。夕方お姉さんのお家の宅配ボックスに行って、荷物を取り出すのが日課なのよ。


「お嬢様、これどう言う意味ですか」

「お嬢様、ここわかりません」

「お嬢様、このボタンなんですか」


 3歳児、ショベルカーの取り扱い方やらログハウスの作り方、はたまた効率的な水堀の作り方などをダウンロードした辞典のような分厚さのファイルを抱え、あっちにヨロヨロこっちにヨロヨロ。

 そのうち、重たい本を持ちフラフラしている私を見て、トルキーソが抱っこしてあちらこちらに行ってくれるようになりました!

 マージェさんや、遊園地に一緒に行ったメティイストさんやチャルペンティストさんなど、若手メンバーがダンジョンマスターの部屋に行って色々勉強してきたらしいけど、見ると聞くとは大違いって所もあって大変なの。説明は全部、日本語だしね! 日本語にもこちらの言葉にも詳しく、前世の記憶がある私が大活躍していますよ、3歳児なのに!

 ショベルカーはダンジョンマスターのチートで大きくなり、同じくチートで三台に増え、すべてが魔石で動くようになりましたとも! 一ヶ月間、24時間ずっと動かし続けても大丈夫と太鼓判をもらい、三交代制で不休の工事が行われています。


「いいか、どんなに深いダンジョンでも、ダンジョンは崩壊する時必ず()()()魔物を吐き出す。それも、一番近くの水場の方向にだ。そして吐き出された魔物は、真っ直ぐに水場に向かって進む。直進しかできない、と言ってもいい。だから、魔物すべてを相手にする必要はないんだ。屋敷を守るだけなら、屋敷全体をお城のように、水堀で囲う必要はない。屋敷の前面だけに集中させろ。その代わり、屋敷はウォータースクリーンですべて取り囲め」


 ダンジョンマスターは、そう言った。どうしても直進できない物があるとき、左右にずれて進むことはあっても、基本はすべての物を壊しながら魔物の大群は進むらしい。屋敷の正面にくる魔物だけを、なんとかできればいいのだ、と。

 とは言え、日本のお城の水堀のような深さと幅を、一ヶ月で作ることはできないだろう。だって、大河から水を引かなければいけないし、お屋敷はむだに横長なのだ。一ヶ月で確実にできると思われる大きさを、マージェさん達が計算して作っている。

 その他、ダンジョンマスターがチートを最大限に使って出してくれた、材料を入れれば入力した大きさ厚さの物を作り出してくれる夢のような道具で、ミニログハウスの材料を大量に増産中。どうせ森の木は半分は倒れてなくなるだろうと言われたから、あらかじめ切り倒して使うのだ。


 昨日は、街でお祖父様のお話があった。この街は完全に魔物達に破壊される。自力で逃げられる者は一刻も早くこの地から移動するように、移動できない者は全員屋敷にくる準備をするようにと。街は今大騒ぎだ。









「美しいな」

「宝石のようだわ」

「春は桜、秋は紅葉、素敵ね」


 今、私とお祖父様、お祖母様とお母様は、お姉さんのお家の裏から、この山の御神木であるナラの木に向かっています。

 途中には真っ赤に色づいた紅葉の木がたくさんあって、上から差し込む太陽光で紅葉がキラキラ輝いてみえます。


「きえい」


 ぽてぽて歩きながら見る紅葉は、とっても綺麗なの。“もみちがり、しゅるの!” 三週間、寝る間も惜しんで働いた。

 水堀もログハウスも目処がたち、今はマットレスと段ボールベッド、テントなどを量産体制。ウォータースクリーンも、あと少しでなんとかなりそう。

 次にこの世界にこれるのは、いつになるかわからない。だから、今やれることをやっておくの。

 今日は、トルキーソやキャメリア、ぺルルや料理(クック)長やノワイエと、お世話になったお姉さんのお家のお掃除をしましたよ。朝早くからお家の中を綺麗にして、お庭の草むしりをして、冬をむかえるお家をお手入れして、皆で最後に紅葉狩り。

 皆は紅葉を見ながら3時のおやつ。私とお祖父様、お祖母様とお母様の4人は、御神木へ。


 初めてきた時のように両手を広げ、大きな幹に抱きついた。


 “ふみゅ、やまかみちゃま”


『しゅるしゅる』


 ナラの大木の、生命の息吹きの音。顔を上げて見れば、枝葉がカサカサと揺れている。


「あっ、とんくり!」

『持っていきなさい』

「う?」


 どこからか声が聞こえたような気がして、辺りを見回す。そう言えば、前きた時にも何か聞こえたような気がする。

 皆で山神様に挨拶をして、回りを綺麗に掃除して、どんぐりをポケットいっぱいに拾って、最後に深く一礼してお姉さんのお家に戻った。

 皆がお屋敷に帰る中、私とキャメリアとぺルルは、お姉さんのお家の中へ。台所のテーブルの上のパソコンで、お姉さん宛てにメールを書く。

 何度も “帰って手伝おうか” と、言ってくれたお姉さん。今後コーメンツ伯領がどうなるのか、納屋がどうなるのかも、誰もわからない。

 このメールも最後かも知れない。だから、心からの感謝を込めて “ありがとう” の言葉を。

 お姉さんに出会わなかったら、今も領地経営は苦しくて、夏祭りもできなかったし、こちらの世界の商品を買うこともできなかった。間違っても、魔物がこちらの世界にくることがないように、しっかりしておかないと。

 最後のメールを送信して、お家の戸締りをして


「ありあと」


 お姉さんのお家に向かって、深くお辞儀をした。


 物置に入って、中からしっかり鍵をかけて、お姉さんのお家の鍵と通帳とカードを封筒に入れて、メールに書いた通り物置の奥にある小さな棚の一番下の引き出しの中に入れる。

 真っ暗な物置に “バイバイ” と呟いて、向こう世界の納屋へ出ようとして


「ほ、ほぇー!」

「お、お嬢様〜!!」


 何かにつまずいて身体のバランスを崩し、納屋の床にダイブ〜。間一髪の所で、キャメリアの手が伸び服をつかんでくれたおかげで、床に顔がぶつかるのは避けられました! ありがとうキャメリア!!

 そのかわり、“コロコロコロ” 御神木で拾ったどんぐりを盛大にぶちまけて、ポケットの中には二つしか残ってなかった。


「とんくり!」


 辺りを見回すも、冬の夕方で物置は真っ暗だし、納屋の中も真っ暗。


「お嬢様、ここにどんぐりが」


 キャメリアとぺルルが何個か見つけてくれたけど、数個はどこに行ったかわからずに、納屋の奥のあちらの世界に続く扉の鍵をかけた。しっかりと、何度も何度も確認して、納屋からでる。

 古かった納屋は、上から頑丈な木が打ち付けられ、強固にされている。もとの古い納屋の鍵をかけ、その上から真新しい頑丈な木の扉の鍵をかけた。次にこの扉を開けるのは、魔物が消え去ったあと。


 お屋敷に帰ると、いつも以上にごった返していた。


「どーしたの?」


 と聞くと、


「隣国のクンルダント様が、SランクとAランクの冒険者の方を、こちらに送って下さったのです!」

「ふぉ! ぼーけんちゃ!」

「はい!」


 剣はあるけど魔法はないこの世界にも、冒険者と呼ばれる人達はたくさんいる。ダンジョンと魔石があるからね。

 隣国のクンルダントさんが送って下さった冒険者さんは、Sランクのメンバーが5人のチームとAランクのメンバーが6人のチームらしい。隣国では有名な冒険者さん達なんだって! そして


「旦那様!!」

「セゾーノ」


 セゾーノさんは、この国のAランクの冒険者さんで、街で暮らすもとこの屋敷で働いていた従者(ヴァレット)の息子さん。ファターロのダンジョン崩壊の話を聞いて、受けていた仕事を急いで終わらせて、チームの仲間を連れてやってきてくれたらしい。


 このコーメンツ辺境伯領の初代領主の曽祖父は、もと王室師団長。その曽祖父が(いくさ)で怪我をおい、軍にとどまることができなくなった人達をつれここにやってきた。

 代々その王室師団長や騎士達に訓練を受けてきた、この領地の騎士団と自警団の人達の腕前はそうとうなものらしい。そこに、SランクとAランクの冒険者の人達が力を貸してくれる。

 あらためて “頑張ろう!”、そう思った。

一口メモ


エスペラント語 → 日本語


セゾーノ → 季節



次回投稿は10月1日か2日が目標です。

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