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異世界転生なのです、お姉さん!  作者: 乃平 悠鼓
第3章
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第1部 理想郷のスタンピード《1》

第3章の今回から、しばらくグルナの試練が続きますが、このお話はあくまでも『ほのぼの』です! キーワードには『ほのぼの』入ってないけど……。(^_^;)


第1部《1》は試練の説明、その後《2》《3》は試練への対策。第2部は試練の真っ最中のような内容になると思います。試練があまりお好きでない方は、第1部と第2部を読まなくても、第3部から読んでいただければわかるようにしておきますので、お好きなところからお読み下さいませ。m(__)m

 ザァーザァーと雨が降り続くお外を、ベッドの上から見ています!

 “今日は一日中雨かなぁー” お外には出られず、自分の部屋でスィリーやサフォに、レジン液と毛糸を作ってもらっているのですよ。

 こんな日には、虹色の毛糸が欲しい気分。


「ふわふわ♪」


 サフォが作り出した毛糸は、それはそれは手触りがよく、ふわふわなのです♪ これで、マフラーとかセーターとか編んだらしゅてき!!

 いや違った、()()()!!


「きゅ、きゅぴーー!」

「ヴェェーーー!」

「!!」


 いつもと違うスィリーとサフォの鳴き声に、びっくりしたよ!


「にゃ、にゃに! どーちたの!」

「きゅぴーー! きゅぴーー!」

「ヴェェーーー!」


 何か、起こっているようです。どうしていいのか分からずにおろおろしていると、スィリーがドアにアタッーク!


「しょと、おしょと、いく」


 とりあえず部屋のドアをあけると、スィリーとサフォが “こっちきて” って感じで鳴くのでついて行くと、そこはお祖父様の執務室。


「おちぃしゃま?」


 ???と思っていると


「きゅぴーー!きゅぴーー!」

「ヴェェーーー! ヴェェーーー!」


 スィリーとサフォが、執務室の前で鳴く鳴く。カチャリと、ドアの音がして


「やっぱりグルナとスィリーとサフォか。どうしたんだい」


 と、お祖父様が出てきてくれた!


「おちぃしゃま、ちゅぃりーとちゃふぉ、にゃきかた、へん!」

「うむ、確かにいつもと違う鳴き声だったな。」


 お祖父様が屈んで、スィリーとサフォを見る。見る、見る、じっーと見る。


「ダンジョン、か」

「たんじょん?」


 “きゅぴ、きゅぴ” “ヴェー、ヴェー” こんどは “そうそう” と言うように鳴くので、お祖父様と手を繋いでダンジョンマスターの部屋に行ってみることにしたの。




「ダンジョンマスター、アンブルです」

「遅い!!」


 扉を開けたとたんの大声に、驚いてお祖父様の足に跳びついたよ。

 お祖父様の足の後ろから、そっーとダンジョンマスターを見ると、いつもより怖い顔をしてイライラしながら言った


「アンブル、スタンピードだ!」


 と。


「ちゅたん、ぴーと?」


 ん、スタンピードって、アレかな? 前世でよく読んだラノベに出てくる、魔物の大発生とか暴走みたいな感じ?


「グルナ、全然違うと思うぞ」


 あらイヤだ、ダンジョンマスターに考えが筒抜けだったよ! コテンと、首を傾けてダンジョンマスターを見れば


「いいか、グルナ。この世界でのスタンピードは、()()()()()()()()を意味する」


 と、言った。

 だんじょんのほーかい、ダンジョンのほーかい、()()()()()()()()!!

 やっとのことで、その言葉の意味を理解し、思わずその場で跳び上がった。お祖父様を見上げると、口を開けたまま、固まっていた。


「ここから一番近いファターロのダンジョンが崩壊する、約一ヶ月後に。ファターロのダンジョンは、この国にある地下100階を超える大型三大ダンジョンの一つで、もっとも大きく地下154階。」

「ひゃく…こちゅう…よん……」


 ダンジョンマスターの154と言う言葉が、私の中で耳鳴りのように繰り返し響き渡ってくる。

 今いるこのダンジョンマスターのダンジョンは、とても小さい。それは、初心者でも無理なくダンジョンに入りドロップ品を手にできるようにと、ダンジョンマスターと曽祖父が話し合って決めたことだと聞いた。

 わずか地下8階の、小さなダンジョンでもたくさんの魔物がいるのに、地下154階。


「その154階に住むすべての魔物が、このコーメンツ領めがけてやってくる。その数、何万か何十万か」

「……!!」


 な、何でそんなことに……! 小さな小さな心が、ダンジョンマスターの話に悲鳴をあげた。


「ふぇ……、ふぇぇ……」


 私の声に、お祖父様がハッとして抱き上げてくれた。


「グルナ」


 お祖父様に抱き上げられて、私はお祖父様にしがみついて泣いた。わけのわからない不安と恐怖に、ただただ泣いた。




 しばらく “びぇーん” と泣き続けた私は、“ひっく、ひっく” としゃくりあげながら顔をあげる。

 お祖父様の肩ごしに、心配そうな顔をした天使達がパタパタと飛んでいた。


「グルナ」


 お祖父様が、大きな手で背中を撫でてくれる。


「にゃ…、にゃんで……、ここ…くゆ」


 私の涙声に、ダンジョンマスターは言った。


「ダンジョンはたくさんのドロップ品と魔石で、人間に恵みをもたらす。だが、それは無尽蔵(むじんぞう)でも半永久的(はんえいきゅうてき)でもない。ダンジョンは生き物だ。自らの力だけを追い求め、巨大化することにだけに生涯をかける生き物だ。そして寿命がつきるとダンジョンは崩壊し、中にいる魔物をすべて外に放出する。ダンジョンから放出されたすべての魔物は、水場を目指す。このコーメンツ領の大河であり、この国にある大きな泉五ヶ所のことだ。大河と泉には巨大な聖石が埋まっていて、魔物は無意識にそこを目指し、聖石によって浄化され消え去ることが決まっている。これは、この世界の自然の摂理(せつり)だ。魔物は、必ず一番近い水場に向かってくる。ファターロのダンジョンから一番近い水場は、ここの大河だ。大河に入ればすべての魔物は消え去るが、大河に入るまでの土地はすべて魔物達によって壊滅させられる。魔物達が通ったあとは、草木一つ残らない瓦礫(がれき)の山となる。それが、ダンジョンからたくさんの恩恵を受ける対価、と言ってもいい」

「かれきの…やま……。ちゃい…か……」


 再び “ふぇぇ……” と泣きそうになった私に


「グルナ、泣くのはあとだ。あと一ヶ月で、このコーメンツ領は壊滅する。これは何をしてもかわらない。だが、俺やグルナには、前世の日本人としての記憶がある。領民や屋敷を守るため、できることがあるはずた。壊滅する前にできること、壊滅した後にできること、それが数多くあるはずだ」

「ぐうなに、できゆ…こと……」


 出てきそうだった涙が引っ込んだ。自分にできること。そうだ、何かできることは絶対あるはずだ。

 前世の記憶があるから、防災については王都にいた時からやってたじゃないか。泣いてる暇なんてない、泣いてる暇があったら考えないと。


「みんな、にげゆ?」


 お祖父様を見上げれば、お祖父様は少し考えて


「この領地には老人が多い、全員が他の領地に行くのは難しい。少なくともファターロの先まで行かなくてはいけないが、ファターロに近い場所は避難民で溢れかえっているだろ。寝泊まりする場所を確保することも、難しいかもしれん。それに、この屋敷は元は王家の持ち物だ。この屋敷を捨てて、行くことはできない。」

「おちぃしゃま……」


 魔物達が大挙して押し寄せるのに、お祖父様はお屋敷を捨てることができない! 何とかしなきゃ!

 そうだよ、私やダンジョンマスターには前世日本人の記憶がある。それに、あっちの世界に行って調べものをしたり、買い物をすることもできる。

 私はその場ですっと立ち上がると、パッと右手を上げて


「ぐうな、おねえしゃんのおうち、いってくゆ!」


 と言った。




「ちょぺるかー……たかい……。ぷれはぷのこや……たかい……。たんぼーる、べっちょ……かう。てんちょ……かう」


 お姉さんのお家の台所のテーブルの上で、パソコンとにらめっこ中なのですよ!

 ショベルカーって、高いんだよね。仮設住宅として使いたいプレハブ小屋も、けっこういいお値段。とりあえず、段ボールベッドやテントは買っておく。

 ダンジョンを出て、ただならぬ雰囲気で帰ってきた私とお祖父様を見て、お祖母様もお母様も異変を感じとったようです。私は、料理(クック)長に急いでサンドイッチと飲み物をお願いして、キャメリアを連れてそうそうにお姉さんのお家にやってきましたとも!

 考えるべきは、お屋敷を捨てられないのなら、どうやってお屋敷を守るか。他の領地まで行けない領民は、お屋敷にきてもらうしかない。お屋敷の守りは最優先。

 いや、お屋敷だけ守れればいい。あとは災害後の領地の建て直し、領民の生活も考えなければならない。壊滅が決定事項なら、領地内の守りは考えない。

 領民の命を守ること、お祖父様や家族の命を守ること、ただそれだけだ。


「お嬢様、ぺルルが夕食を持ってきました。少し休んで、夕食をお召し上がり下さい」

「あい」


 今日はお姉さんのお家にお泊まりさせてもらって、必要な資料集めと買い物をするのです!



一口メモ


エスペラント語 → 日本語


ファターロ → 宿命



次回投稿は23日か24日が目標です。

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